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UTAUTAI -Ⅶ
約十日ぶりの穂歌姉弟連作。
久しぶりに思えるのは、更新速度の問題ですね、そうですね。
この連作が終わったら穂歌熱はとりあえずは治まる……と思います。書くのはやめないけど。
珍しくサラが来ていない時に、珍しい人物が訪ねてきた。
「アンタさ、サラさんのこと、避けてるだろ」
レンは、顔を合わせてすぐにそう言った。
どう答えればいいのか、分からない。
「……そんなつもりはないんですが」
とりあえず思うままを口にする。
「気づいてないの? 最近どこかぎこちないよ」
「そう、なんでしょうか」
返答に困って、口ごもってしまう。
面と向かって言われるまで、確かに気づかなかった。
けれど思い当たる節はいくらでもあって。
理由も、分かっている。
「別にオレには関係ないけど。
空気悪くなるから、どうにかしてほしいね。
話してすっきりするようなことなら、聞いてもいいよ」
レンなりの親切心だろう。
ぶっきらぼうな優しさが、彼らしかった。
「――レンは」
一つ息をついてから、口を開く。
呼び捨てにするようにと言われていたが、いまだに慣れない。
「レンは、リンのことをとても大切に思ってますよね」
「当たり前じゃん」
「それは初めから持っていた思いですよね?」
確認と、問い。
レンはわずかに眉をひそめる。
気を害してしまったらしい。
「他に何があるのさ」
少年にとっては至極当然なことなのだろう。
なぜそんなことを訊くのか分からない、といった様子だ。
「……作られた感情だと、考えたことはありませんか?」
それこそソラが現在悩んでいることだった。
どこまで、植えつけられた感情なのか。どこからが、自分の感情なのか。
境界線がはっきりしない。
0と1のように、一目で分かればよかったのに。
曖昧なものを否定するわけではないけれど、自身の気持ちくらいは信じていたかった。
思考の渦に呑み込まれてしまいそうだ。
「ソラさんって結構バカだったんだ」
意外なものを見るようなレンの視線に、だんだんいたたまれなくなってくる。
いっそのこと顔を背けたかったが、話を聞いてもらっているのだからと耐える。
まっすぐと射抜くような強いまなざしが、痛い。
「リンは大切で、リンは特別だよ。
疑うことなんてありえない」
声に、言葉に、表情に、迷いが一切なかった。
「貴方が羨ましいです」
ソラは苦笑して、呟く。
情けない、と自分でも思う。
こんなことで、と誰しも言うだろう。
それでもソラにとっては大きな問題で、簡単には片付けられなくて。
今も心のどこかに、引っかかっている。
「サラさんへの思いが偽りだとか、そんなことで悩んでるんだったら、やめた方がいいよ。
考えたらキリないだろうし、相手にも失礼だから」
レンはいっそ冷たいとも取れる声音で、正論を告げる。
「分かっては、いるんです」
わがままで自分勝手でどうしようもない人。何をするか分からず放っておけない。
そんな感情しかないのなら、ここまで悩まなかった。
守ろうと。守りたいではなく、守ろうと、強い意志を持った。
それだけは嘘ではない。
ただ、“穂歌サラ”の初期情報として、姉としての親しみの情があった。
その影響を受けていないかは、分からない。
「でもそう割り切れないって?」
「はい」
ソラが返事をすると、レンはため息をつく。
「やっぱ、アンタバカだ。
音源主が一緒なんだからオレらと似たようなもんだろ?
もう一人の自分で、半身。
違う?」
同じソフトに入っている二人のような確かなつながりはないけれど、似たようなものだとは思う。
……ああ、だからか。
KAITOにもMEIKOにも心配され、それでも相談しようとはしなかったのに。
レンには素直に話すことができたのは。
彼なら、答えを知っているような気がしたからだ。
「レンにとっては、そうなんでしょうね。
だから、羨ましいんです」
はっきりと、言うことができない。
サラが己の何よりもかけがえのない存在だと。
どうしてもそこに、疑いをはさんでしまう。
「好きなだけ悩めばいいと思うけど、サラさんを傷つけるようなことはするなよ」
もう何を言っても無駄だと悟ったのかもしれない。
レンの声も表情も、だいぶ柔らかいものになっていた。
「それはもちろん。
当たり前のことです」
考えるまでもなく、するっとそう口にしていた。
何であれ、守ろうと思った気持ちに嘘はない。
傷つけていいわけがない。
できることなら、不安も不満も感じないように、真綿でくるむように大切にしたい。
「……答え、出てるじゃんか」
なんだ、と。嬉しそうに言う。
答え?
これが、答えなのだろうか。
ただ、サラが悲しんだりつらい思いをするのは嫌だと。
ソラにできることがあれば、何でもすると。
半ば無意識のうちに考えていただけだ。
「こんなもので、いいんでしょうか?」
分からない。自分にはどうしても分からない。
サラに対しての感情が、すべて本当のものだと……断言できない。
「充分だろ」
レンは、そう言って晴れやかに笑った。
今のソラには眩しい、笑顔だった。
答えが出たような、まだ分かっていないような。
それでも、彼女が大切だということだけは確かで、変わりがなかった。
次作→
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