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しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

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like flower

 糖度それなりの栄一ユフ。弟と並びたかったようです(作品数的に)
 ユフは気を抜くとフユって打ってます。危ない危ない。ついでに栄一は栄二とよく打ち間違える。






 ちょっとした変化だった。
 退屈な日々の繰り返しを彩るには足りない、ほんの少しの違い。
 それを見て、彼女は確かに笑ったのだ。



like flower




「……あ、お花」
 リビングのテーブルにあったそれを、ユフは目ざとく見つける。
 薄桃の可愛らしい花だった。
「サラが花の区から持ってきたんだ。
 自動修復で消されないように、マスターにわざわざ頼んで」
 リラクゼーション区域の花や草は、踏んだり抜いたりしても、定時で修復されてしまう。
 つまり抜いた花はそのままだとすぐに消えてしまうわけで。
 それが嫌だったサラは、マスターに修正プログラムから外してもらったのだ。
 データが壊れてしまうまで、この花は消えることはない。
「花瓶まで用意してもらったんですか?」
 花はきちんとした容器に入っている。
 コップなどではなく、緑のガラス製らしき花瓶だ。
「ソラと一緒にフリーの品を探してきたらしい」
 VOCALOIDやUTAU用のフリーデータは山のようにある。
 その中から好みのものを見つけてくるのは結構な労力が必要だろう。
 彼も大変だな、と思わず自分と重ねてしまう。
 栄二やテトの面倒を見るのに慣れてしまったことに、軽く敗北感を覚える。

「とっても……綺麗です」
 ユフは呟いて、ふわりと、優しげな笑みをこぼした。
 一瞬、言葉を忘れた。
 ただの花に、どうしてそんなふうに笑うのか。
 何の変哲もない花だ。花の区に行けば、いくらでも見られる。
 特別なことなど何もないのに、宝物を見るように灰青色の瞳は細められていて。
 栄一はどうしてか落ち着かなくなる。
「まあ、確かにな」
 挙動不審になりながらも、なんとかそう返す。
「何と言うお花なんでしょう」
 ユフは可愛らしく小首をかしげる。
「よくある形をしてるから、特定できるか怪しいな。
 ただの野の花なんじゃないか?」
 VOCALOIDと比べるとUTAUの検索機能は簡易的な辞書と同じだ。
 ネットワーク上を調べるとしても、画像から検索なんてできはしない。
 少なくとも何科なのか、などの情報が分からなければ調べようがなかった。
「そう、ですね……」
 栄一が答えると、ユフは残念そうに肩を落とす。
 しまった。もう少し違う言い方をしてやればよかった。

「ユフは何の花が好きだ?」
 落ち込んだままにさせたくなかったので、栄一は話を変える。
 あくまで自然に会話をつなげられるように。
 そう、意識している時点で不自然ではあるのだけれど。
「わたし、ですか?」
 自分の好みを尋ねられたのが意外だったのか、ユフは目を丸くしている。
 それから、考えるようにうつむいて。
「水仙とか、山茶花とか……冬のお花が、好きです。
 寒い中で一生懸命咲いている姿は、強くて、綺麗だなって……」
 か細い声で、彼女らしい意見を言った。
「ユフらしいな」
 あまりにもあまりで、栄一は笑った。
 白にグレイに水色。冬の色彩を身にまとうユフは、冬が好きだという。
 分かりやすい。そのままだ。
 そこが、彼女の良さなのかもしれない。
「あ、えっと……すみません」
 栄一が笑ったのを馬鹿にされたのそ勘違いしたのか、ユフは謝る。
 話すことが得意ではなく、悲観的になってしまいがちな彼女は、よくこうやって誤解する。
 周りはそんなに冷たいものではないのに。

「謝る必要なんてないだろ。
 好きなものを好きと言えるのは良いことだと俺は思う」
 安心させるような柔らかな笑みを浮かべ、栄一は告げる。
 するとユフは驚いたようにぱっと顔を上げた。
 それから、またうつむいていく。
 今度は頬を赤く染めて。
「ありがとう、ございます……」
 嬉しかったのだろう。声の調子から分かる。
 ユフが、もっと周りと関わることを恐れないようになればいい。
 積極的にとは行かないまでも、少しずつでいいから。
 彼女を見ている内に、栄一はそう思うようになっていった。

「栄一さんは好きなお花、ありますか?」
 だからこの問いは、その一歩のように思えた。
 ユフの方から尋ねかけてきたのだ。
 控えめな、小さな声ではあったけれど。
「あまり考えたことがなかったな」
 訊いてくれて嬉しかったからこそ、答えを持っていないことが残念だった。
 花はどれも同じに見える。
 色や形の違いがあるのは分かるけれど、それだけだ。
 栄一にとって特別な意味を持たない。
「そう、ですか……」
 ユフは気落ちしたようにまたうつむく。
 しまった。またやってしまった。
「でも、そうだな。
 派手なものよりは控えめな方が好きかもしれない」
 言葉を選んで、自分なりに考えてみる。
 薔薇よりは百合。赤や橙よりは白や桃色。
 たぶん、そんな感じだ。
「なら、カスミソウとかはどうでしょうか?」
 男性型の栄一よりは花の名前を知っているのだろう。ユフが候補を挙げる。
 名前さえ分かれば検索をかけられる。
「あの花か。確かに、綺麗だな」
 花の咲く時期は春から夏にかけて。かすみをかけたような無数の白い小花を咲かせる。
 切花によく使われ、別名ベビーズブレス。花言葉は清い心。
 まるでユフのようだ、と思った。
 真っ白で、周りの花に埋もれてしまうような控えめさ。
 けれどとても可愛らしく、優しい綺麗な心。
 目の前の少女を具現したような花だ。

 と。

「……どうか、しましたか?」
 急に顔をしかめた栄一を、心配そうにユフが覗き込んでくる。
「いや、何でもない」
 赤い頬を見られたくなくて、顔を背けた。
 冷静になると、ずいぶんと恥ずかしいことを考えたものだ。
 嘘ではない。が、恥ずかしい。
 花が綺麗だと笑った彼女の方こそ、可憐な花のようだったと。
 思ってしまったのも事実で。
 こういうのは本当、ガラではないのに。


 けれど、とりあえず。
 『カスミソウ』という花の名前は、絶対忘れないだろうと思った。





 栄一とユフは中学生みたいな初々しさが売りなのかもしれない、と書いてて思った。
 お前ら恥ずかしすぎるよ!! 余所でやっててよ!! と言いたくなるんです。不思議なくらいに。
 大好きですよ。二人とも(言語の不一致が)
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