VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ UTAUTAI -Ⅵ | | HOME | | Hair and impression ≫ |
UTAUTAI - another
UTAUカテゴリーに入れていいものか。という感じ。でも連作のアナザーだし。
カイミク要素あり。ソラもサラは名前だけしか出てきません。
UTAU作品を読んでなくとも平気……じゃないかも。
穂歌サラという、UTAUが増えた。
それは、VOCALOIDの皆にも、少なくない影響を与えていたりする。
「サラさんって楽しい人だね!」
ミクの声が風に乗ってKAITOの元まで届く。
風の区。草原の地。
ついこの間、ソラと話をした場所だ。
「そうだね。落ちてきた時は驚いたけど」
出会いが強烈だった。
サラは空から降ってきたのだ。
仮の音源である彼女は、他のUTAUと比べて感覚プログラムが誤作動を起こしやすいのだそうだ。
座標がずれて現れてしまったために、真っ逆さまに落ちることとなった。
「だよね! 私もビックリしちゃった」
ミクもその時を思い出しているのだろう。少し興奮していた。
「ソラ君のお手柄だったね」
突然だったせいで、反応が遅れたKAITOたちを押しのけてサラを受け止めたのは、彼だ。
地面に落ちて大きな衝撃があれば、音源は無事でも外見データの損壊は免れない。
修復は可能だけれど、人にしてみれば大怪我をするようなもの。
見ていて気持ちのいいものではない。
「すごかったよね~。
ソラさん、カッコ良かった!」
ぴくりとKAITOの片眉が上がる。
ミクは気づかずに手を合わせて笑っていた。
「それによく似てるよね!
二人とも、双子みたいにそっくり!」
「まあ、確かに」
新しい仲間が増えて嬉しいのだろう。はしゃぐ少女に、苦笑を返す。
KAITOも嬉しくないわけではない。
けれどどうしても驚きと困惑の方が先走ってしまう。
ソラが、変わったのだ。
サラに懐かれて、困ったり怒ったりしているソラ。
その割に彼女の体を一番に心配し、進んで世話を焼いている。
この一週間で、何度も見た光景。
表情も以前と比べて柔らかく、感情豊かになったようだ。
KAITOもこの変わりようには、驚くしかない。
さらに不思議な存在になったような、逆に分かりやすくなったような。
どちらにしろ戸惑いは消えない。
「ソラさんもお姉さん思いだよね」
ミクは何事も前向きに捉えるようだ。
青年の想いにも、ソラの想いにも気づいていないのだから、当然か。
楽観的で、他人から受ける好意にも悪意にも鈍い。
人気者の彼女なりの、処世術だろう。
「寂しい?」
卑怯な質問をする。
心配をかけたくないミクが肯定するはずがない。
「お兄ちゃんがもう一人いるみたいで、面白い!」
ふふっと、小さく笑って答えた。
世話の焼きようが、ミクやリンに対するKAITOに似ているのだろうか。
どんな風に見られているのか分かった気がして、少しだけ落ち込む。
「ちょっと傷つくなぁ」
おどけて言えば、あはは、と今度は声を上げてミクが笑った。
「でも、あんなに怒ったり笑ったりするソラさんって、新鮮」
素直な感想に、KAITOは思いを巡らせる。
ソラは目に見えて変わった。
皆が驚きを隠せないほど、急激に。
取っつきやすくなったとレンは言っていた。
からかい甲斐が増したとMEIKOは笑っていた。
どちらも本心からの感想だろう。
「良い変化なんじゃないかな」
「そうだよね。サラさんの影響力ってすごい!」
KAITOの言葉に、ミクが同意する。
元々好意的に接していたけれど、より仲良くなれるなら良いことだ。
UTAU同士で交流することによって、感情学習プログラムが正常に作動するのではないか。
技術的に考えてみたところで答えは分かりようがない。
目の前の結果がすべてだと、思うことにしている。
「前にも増して頑固にもなったみたいだし」
くすっと、KAITOは笑みをもらす。
思い出し笑いだ。
「呼び捨てにするか、姉さんって呼ぶかでしょ?
ほんとに何度も言い合いになってるよね。飽きないのかな?」
何気に酷いことをミクはさらっと口にする。
飽きるか飽きないかではなく、飽きていたとしてもやめられないのだろう。
どちらかが折れるまで、ああいった口論は続くものだ。
「それだけ譲れない所なんだろうね」
二人とも負けず劣らず頑固者であることを、この一週間で皆が分かっていた。
ソラは一度こうと決めたものを変更したがらないし、サラもサラでなかなか強情だ。
「似た者同士なんだろうな~」
羨ましそうに、ミクが呟いた。
風になびく草を眺める横顔はどこか寂しげで。
その理由を聞かなくとも知っているKAITOは、困ったように少女を見る。
ミクは、一人だ。
KAITOとMEIKOは、対になるようにと作られた。
リンとレンは、鏡音と言う名前の通り、二人で一つ。
ミクは独りではないけれど、一人で作られた。
普段は笑みを絶やさない少女だけれど、確かな絆を見せられてしまうと、揺らぐのだろう。
自分が持ってないものだと、羨ましくなるのだろう。
優しく頭をなでてやる。
少しでも気持ちが紛れるようにと。
しばらくされるがままだったミクが、視線を上げる。
「お兄ちゃんも、お姉ちゃんのこと呼び捨てにできない?」
卑怯な問いだった。
こんな状況で、答えなんて選べるわけがない。
「もう慣れちゃったからね。
姉さんにも殴られかねないし」
決められた答えを口にする。
甘いと言われても、望まれるままを。
彼女を傷つけないように、優しい声音で。
「そっか」
ミクがほっと安堵の息をついた。
それからはにかむような、少し後ろめたいような笑顔になる。
甘えていると、自覚があるのかもしれない。
「ミクは?」
「え?」
気を逸らさせるために、KAITOはわざとそう尋ねる。
声が風にかき消されなければいい。
「呼び捨てにしてほしいって言ったら、できる?」
ニコリ、と綺麗な笑みを浮かべた。
ミクの頬に朱が走る。
「カイ……。
で、できない!!」
真っ赤になって叫ぶ少女を、満足げに見て、
「残念」
たまらずKAITOは噴き出した。
大きな変化と、変わらずそこにあるもの。
影響の仕方は一つだけではなく。
それが、彼らにより良い関係をもたらすことになる。
次作→
≪ UTAUTAI -Ⅵ | | HOME | | Hair and impression ≫ |