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Smile of flower
UTAU日々(UTAUのSNS)でのきり番の作品。
ツバメさんのお話が少ないので、こっちにも転載許可もらいました!
ということで、ツバメ&リーズ。×にも変換可能(笑)
「ツバメさん」
自分を呼ぶ微かな声がして、ツバメは顔を上げる。
そこには、リーズがちょこんと所在なげに立っていた。
「どうしたんだい? リーズ」
ツバメは表情を和ませて、尋ねる。
設定年齢のわりに小さく幼い少女を、子ども好きな彼は特に可愛がっていた。
「今日は皆と一緒に、春の区へ遊びに行ったと記憶しているのだけれど」
現実世界の四季と関わりなく、一年中花が咲き乱れている春の区。
花見をしようと昨日いきなり栄二が言い出し、子どもたちだけで行くことになっていた。
ツバメも付き添いたかったが、大人は駄目と言われたのであきらめたのだ。
「うん! お花、キレイだった」
リーズは彼女自身がほころんだ花のような笑みを見せる。
楽しかったのだと一目で分かる表情に、男も笑みをこぼす。
「その様子だと、途中で抜けてきたようだね。
私に用でもあったのかい?」
ラベンダー色の髪についた、桜の花びらを取ってあげる。
似た色の双眸が椅子に座っているツバメを見下ろす。
共有スペースの方に戻ってきていたのは把握していた。
けれど、大抵誰かしらがいるリビングにでもいるものだと思っていた。
「ちょっとだけ、目をつぶっていてほしいの」
リーズは問いには答えず、後ろに回した腕をもじもじさせてそう言う。
その様子があまりに可愛らしくて、頬がゆるむのを抑えられない。
「お安いご用だよ」
悪戯でもするつもりなのだろうか。
それでもいい。遊ばれることには慣れているし、何より相手がリーズだから。
どんなことをされても、結局は許してしまうだろう。
悪気があってもなくても、関係なく。
「これでいいかい?」
素直に目を閉じ、気配を読む。
わずかな距離をうめる、小さな足音。
さらっと、柔らかいもの同士がこすれるような音がした。
「もういいよ」
かくれんぼの合図のような声に、瞼を上げる。
と、上から降ってくる、色とりどりの花、花、花。
「ふふっ、驚いた?」
ツバメの頭の上でリーズが手を広げていた。
なるほど、後ろ手に隠していたのはこの花々だったのか。
「これはまた……粋なことをするね」
くつくつと笑みがもれる。
可愛らしい少女の、微笑ましい行為だ。
「いき?」
検索するという考えが出てこないのか、少女は小首をかしげる。
「素敵な発想だということだよ。
とても、綺麗だ」
ツバメは思ったままを伝えた。
ピンクに黄色に白に紫と、鮮やかな色が目を楽しませてくれる。
桜にミモザにマーガレットに菫。名前の分かる花だけでもたくさんある。
これだけ集めてくるのはきっと大変だったはずだ。
「良かった!」
リーズは安堵したような表情を見せる。
そう言ってもらえるのを待っていたかのように。
「あのね、お花は人の心を安らげてくれるんだって」
両手を合わせ、リーズは得意げに話す。
「リラックス効果? ちんせいさよーだったかな」
意味をきちんと理解していないと分かる、たどたどしい発音。
きっと頭のいいユズあたりが、花見の最中に知識を披露したのだろう。
「リーズはお利口さんだね」
「てへへ」
褒めてあげれば、嬉しそうに少女ははにかむ。
「だからツバメさんにおくろうって思ったの。
ありがとう、って気持ちもこめて」
眩しいくらいの笑顔で、リーズは言った。
その表情にどれほど癒されているか、知らずに。
その純真さにどれほど悩まされているか、知らずに。
「ちゃんと、届いた?」
こてん、と首をかしげる。
不安なのか、アメジストのような瞳は揺らいでいる。
「ああ、嬉しいよ」
幸せをかみしめるように、ツバメはゆっくりとそう告げた。
この愛おしさは、言葉にはできない。
いまだ幼い少女に向けるにしては、大きすぎるから。
きっと困らせてしまうだろうから。
「ありがとう、リーズ」
だからツバメは礼と共に、リーズの頭を優しくなでるだけにとどめるのだった。
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