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しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

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Sing anywhere

 UTAU創作を外に出すようになって三年目に突入です。今日から。地味に。
 これからもよろしくお願いします!

 ということで、半年以上前のウキウタに提出したお話を、今頃になって転載。
 このサイトで扱ってる2008年組がわらわら出てきます。カップリング要素はかなり薄め、のはず。たぶん。
 長いです。あくまで当サイト比ですが、長いです。







 どこにいようとも、私たちは皆、歌を歌いたいと願わずには、いられないのです。



Sing anywhere




 何の変哲もない、日常と呼ぶような日だった。

 極々小さなノイズの向こうから聞こえてきたのは、マスターの声。
 『頼む』と言われ、ウタは『了解しました』と短く答える。
 断るという選択肢がないにもかかわらず、マスターは嬉しそうに礼を言った。
 声が聞こえなくなり、接続が切れたことを確認してから、ウタはリビングを見回す。
 自然とUTAUシンガーたちの溜まり場になる共有ルーム。幸いなことに人は多い。
「マスターから通信が入りました。
 皆さんに質問に答えてほしい、だそうです」
 ウタはリビングにいる者全員に聞こえるよう、声を張り上げた。
 赤、緑、茶、黒。様々な色の瞳がウタに向けられる。
「質問ですか?」
 テトのカップに三杯目の紅茶を注ぎ終わったモモが、不思議そうに首をかしげた。
 ウタは頷いて、聞いたばかりのマスターの言葉を思い返す。

「『もしも現実世界に行けたとしたら、何をしたいか』」

 言われたままを告げれば、目を丸くする者、興味津々な視線を向けてくる者など、様々な反応が返ってくる。
 現実世界。リアル。マスターがいる世界。自分たちが作られた世界。自分たちの歌が、広まっている世界。
 気にするなという方が、無理な話なのだろう。
 どんな形であれ、関心があるのだ。
 自分たちが人間ではないこと。現実世界には行けないこと。
 それを当然のことと理解しているから、悲観的になることもなかった。
「私が全ての回答をまとめます。
 思いついた方だけでいいそうなので、今、答えてください」
 オリジナル曲の題材にしたいのだと言っていた。
 マスターが自分たちUTAUシンガーの意見を聞くことは過去にもあったことだ。
 ここにいない者の分は、また別に送ればいい。
 ウタは無題のテキストデータを開いて、一行目に質問内容を記入した。

 


「学校に通ってみたい!」
 一番に声を上げたのは、ルナだった。
 いつも騒ぎの中心にいる彼女は、こういうときも素早い。
「いいね、学校。
 やっぱりセーラー服?」
「オレ学ラン着たい!」
「体育とか部活動とか楽しそうだよね!」
「図書室があるんでしたよね。気になります」
 サユ、栄二、コト、タクが話に混ざる。
 現実世界については、皆ある程度は調べているようだ。
 考えてみれば、人間なら学校に通っているだろう設定年齢の者ばかりだった。
「……学校って勉強しに行くとこだよな?」
「細けーこと気にすんなって」
 栄一の訝しげな呟きを、シンは明るく笑い飛ばした。
 興味の持ち方は人それぞれ。調べたところで想像することしかできないのだから、好きに解釈した者勝ちということか。
 何事も前向きに捉えることが得意なシンらしい。


「遊園地で遊びたい!」
 う~んと首を捻りながら考えていたコトが、手を上げて答えた。
「いいねそれ! オレもジェットコースターとか乗りたいなぁ」
 栄二が同意し、遊園地の中でも人気の乗り物を挙げる。
 遊び盛りの二人ならではの発想だ。
「絶叫系も気になるんだけど、やっぱ観覧車に乗って地上を見下ろしたい!」
 鳥好きゆえに高いところも好きなコトは、本当に楽しそうに話す。
 今ここにはいないが、トリあたりも全力で頷きそうだ。とウタは何となしげに思った。
「コト、あれは恋人同士で乗るものなんですよ」
「え、そうなの?」
 ユズの言葉を疑うことなく、コトは困ったような顔をする。
 また始まった。とばかりに周りは苦笑いをこぼした。
「恋人のいないコトは乗れませんね。
 可哀想なのでぼくが一緒に乗ってあげましょうか?」
 ユズはニッコリと笑みを浮かべ、親切心を装う。
「だ、誰があんたなんかとっ!」
 コトは顔を怒りで真っ赤にして反発する。
「その前に観覧車は恋人同士限定じゃないし、一人でも乗れるから」
 見かねた栄二がコトに本当のことを教える。
 ウタが知っていた情報にもそんな決まりはなかったので、すんなりと納得が行った。
 つまり、ユズはコトをからかったのだ。
「……だましたな!!」
「人聞きが悪いですね。可愛らしい冗談じゃないですか」
 コトが怒って、ユズがのらりくらりとやり過ごす。
 いつものパターンすぎて、誰もが微笑ましそうに眺めていた。
 子ども同士の喧嘩というものは、年上からするとじゃれあっているようにしか見えないのだ。


「マジスパに行きたいです」
 言い争いが鎮まったタイミングで、ソラが発言する。
「あたしも行きたーい! 虚空虚空♪」
「どれくらい辛いのか、気になりますよね」
 ウキウキとサラも後に続いたので、ここは複数票でいいだろうと、ウタは記入していく。
 『虚空』とはマジスパ――正式名称マジックスパイスというスープカレーの店で、一番辛い味付けのことだ。
 カレーが大好きで、甘口から激辛まで食べられる二人なら、きっと簡単に平らげられてしまうだろう。
「んじゃオレ涅槃な」
「俺はベースでいいや……」
「あ、アタシも……」
 シンが中くらいの辛さを言えば、栄一とルナはスパイスなしを選ぶ。
 甘いものが大好きな二人なら賢明な選択だ。
「せめて覚醒にしましょうよ」
 自他共に認める甘党のマスターですら、覚醒は食べられたのだそうだ。
 それを知っていても、二人はぶるぶると怯えたように首を振る。
 どちらも挑戦する勇気はないようだった。


「京都とか鎌倉とか、歴史を感じられる場所に行ってみたいわね」
「それ分かる。おれも神社に行きたい」
 マコが答えると、ヒビキが似たような答えを口にする。
 設定衣装が和服の二人の回答は、とても分かりやすいものだった。
「二人らしいなぁ。ヒビキは稲荷神社?」
 どちらとも仲の良いルナが話に入ってくる。
 わざわざ稲荷神社に限定したのは、ヒビキが狐だという設定が、一部の創作者の間で広まっているからだろう。
「それもいいね。ルナは調神社とかどうかな? 兎だらけらしいよ」
 行きたいと言うだけあって、かなり詳しいようだ。
 ウタでも知らない固有名詞だった。一般常識と音楽系以外は、そこまで博識ではないとは言え。
「え!? それ気になるなぁ!」
 ぱぁっと、ルナの青い瞳が輝きを増す。
「狛犬じゃなくて狛兎がいるらしいわ。
 ルナならきっと気に入るわね」
 当然のようにそこがどんな場所か知っているマコも、さすがだ。
 調神社。後で調べてみよう、とウタは密かに心に決めた。


「無人島に行ってサバイバルしてーなぁ」
 ヤスリがけをしていた角材を床に置き、両手を頭の後ろで組んでシンは笑う。
 海に潜りたいとでも言うのかと思っていたが、そのさらに上を行くあたりがシンだった。
「シンならできそうな気がするけどさ……」
 栄一が呆れたようにため息をつく。
 常日頃から彼に振り回されている栄一には、大体は予想できていたのかもしれない。
「オレ様に不可能はないな!」
 両手を腰に当て、ふんぞり返って宣言する。
 えっへん、と効果音がつきそうなほどだ。
「皆が心配するからやめる。なんて可愛らしいところがシンちゃんにあるわけないものね」
 いつもシンのブレーキ役をしているマコが、あきらめ半分といった調子で言った。
「なになに? マコっち心配してくれんの?」
「当たり前でしょ。野垂れ死にでもされたらたまったもんじゃないわ」
 そんなに人非人に見える? と、マコは眉根を寄せる。
「やっさしいねぇマコっちは」
 ハハッ、と声を上げて笑うシンに、わずかな違和感。
 けれどそれを特定する前に、彼は角材のヤスリがけを再開してしまった。


「アンティーク時計を見てみたいですね」
 タクは首から下げている懐中時計を見て、それから微笑んで言った。
 名前と持ち物に忠実な回答だ。
「あ、あれでしょ? 《大きな古時計》!」
 サラが有名な童謡の題名を挙げる。
 彼女の中でのアンティーク時計とは、振り子時計を指しているのだろう。
「それもありますし、他にもたくさんありますよ。
 中には太陽と月の周期や、干支が分かる時計などもあるそうです」
「へー、どんな構造になってんのか気になんじゃん」
 シンが興味深そうに話に混ざる。
「江戸時代に作られた万年時計などは、テレビで解明されていましたから、情報もありますよ」
 タクが親切に教えれば、シンは「りょーかい」と笑った。
 きっと後で調べるのだろう。こう見えてシンは知識欲が豊富だ。
「時計を見ないと時間が分からない、っていう感覚がまず分からないよな」
 ヒビキが苦笑して、軽く息をついた。
 パソコンに正確な日時が設定されている限り、自分たちは意識しなくても時間を知ることができる。
 タクが時計を持っているのは、そういう設定だからだ。
 必要があるわけでは、ない。
「そうですね。何か行動をしなくても、僕には有意義な経験になりそうです」
 にこりと人好きのする笑みで、タクは言った。


「未発見の星を見つけて、名前をつけてみたいです」
 ユズが普段よりも幼げな笑みを浮かべて答える。
 またも名前や設定に忠実な回答だった。
「なんかすんごいユズ君らしいね!」
「夢があっていいですね」
「一般人が見つけられる可能性なんて、本当に低いんでしょうけど」
 仲の良いルナと憧れているソラに褒められて、ユズは珍しく殊勝な態度を見せる。
「どうせあんたのことだから変な名前つけんでしょ?」
 先ほどだまされた仕返しか、コトが人をバカにしたような表情でユズに突っかかる。
 けれどユズにはまったく効いていないようだった。
 それどころか、ニッコリといつもみたいに嫌味ったらしい笑顔で、
「期待されたら応えたくなっちゃうじゃないですか。
 『バカコト』と『アホコト』、どっちがいいですか?」
 すかさずそう言い返した。
「応えなくていい! どっちもイヤに決まってんでしょ!!」
 苦虫を何匹も食べたような顔で、コトは怒鳴る。
 口でユズに勝とうという方が無茶なのだと、コトが気づくのはいつになるのだろうか。


「設定通りにレンタルDVDの延長をしてみたいな」
 紅茶を飲みながら菓子を食べ、漫画本を読んでいたテトがいきなり話に加わってくる。
 話を聞いていないものだと思っていたが、彼女の気まぐれさを知っているウタは特に驚かなかった。
「迷惑だからやめておけ」
 同じくテトの性格をよく知るテッドが、眉をひそめて注意する。
 テトは周りの事情だとかまったく考慮せずに、やると言ったらどんなことでもやってのけるのだ。
 現実世界に行けるはずがなくとも、止めておくに越したことはない。
「それは安価を取った者に言ってくれ」
 むうっとテトは頬をむくれさせる。
 責任転嫁。という言葉がウタの思考に浮かんできた。
 が、言えば余計にテトを不機嫌にさせると分かっているので、黙っていることにする。
「そういうテッドはどうなんだ?」
 うやむやにしようとしているのか、単に興味があるからなのか、テトはテッドに話を振る。
 小細工の苦手なテトのことだからきっと後者だろう。
「どこだろうと、わがまま娘の面倒を見なければならないのは変わらないだろう」
 テトの頭をポンポンとなでながら、テッドは仕方がなさそうに言った。
「……面倒を見られている覚えはないぞ」
 さらに頬をむくれさせながら、テトはぶつぶつと文句をこぼす。
 自分が『わがまま娘』だということは認めるらしい。
「そういうことにしておこうか」
 テッドの口元はかすかに笑みを刻んでいた。


「銀塩写真の現像してみたいなぁ」
 何人かの回答に賛同していた栄二が、自分の意見を口にする。
「ってことは、デジカメじゃないんだな」
 栄二の持ち物として一般的なのは、デジカメ。
 けれど、銀塩写真と限定したら、それはフィルムを利用した写真のことだ。
「うん。デジカメみたいにデータで残せるのも、ポラロイドみたいにすぐ見られるのもいいけどさ。
 時間や手間がかかるのも、なんかワクワクしそうだなって」
 栄二はどこか気恥ずかしそうに、はにかんだ笑みを浮かべて語る。
 写真が好きなのだと、よく分かる表情だった。
「素敵ですね」
 モモが手放しに褒める。ウタも同じ気持ちだった。
「そしたら一番に集合写真撮るんだ!」
 太陽のように明るい笑顔で、栄二は言った。


「冬にコンビニで肉まん買って、外で食べたいかな」
 サユが人間じみた、しかも小市民的な回答をする。
 コンビニとはたしか、ほとんどの店舗が二十四時間営業の、食料品や日用品を扱う小型スーパーだったはずだ。
 中華まんは一年中売っていることが多いが、やはり冬に食べるのが一番おいしいのだろう。
「さみーだろ、それ」
 サイが嫌そうな顔をしてつっこむ。
 冬に外で食べるなんで信じられないようだ。
「そこがいいんじゃない」
「肉まんはこたつの中に限るだろ」
 それ以外は認めない。とばかりにサイは仏頂面だ。
「サイはほんとに猫々しいね」
 サユは何を考えているのか読みにくい笑みを浮かべる。
 こういうときは大抵相棒をからかっているのだと、最近やっと分かってきた。
「ねこねこしいってなんだよ……」
 意味分かんねー。とサイはため息をついた。


「私は、いつもみたいにみんなにお料理を作ってあげられればそれでいいです」
 ふんわりとモモは微笑んで答える。
「モモは本当に欲がないな」
 五杯目の紅茶を飲みながら、テトは不満そうに言う。
「お前とは大違いだな」
「何だと!?」
 テッドの揶揄に、短気なテトが勢いよく立ち上がり、椅子が倒れた。
 大きな音に皆が驚いてテトに視線を向ける。
「ふ、二人とも、喧嘩はやめてください!」
 モモが泣きそうな声で止めに入る。
 非常識なテトでもさすがにモモだけは困らせたくないようで、渋々ながらも大人しく席に座った。
 皆の安堵の吐息の音が重なった。
 よくあることとはいえ、この二人の喧嘩は大騒動になる場合もあって、気が気ではないのだ。
「オレも、いつでもモモちゃんのご飯食べたいな」
 そんな中で、マイペースに栄二はモモに笑いかける。
 ある意味でかなりの大物なのかもしれない。
「どうせだから、ここではできないお料理ができればいいですね」
 肯定してもらえて嬉しかったのか、モモは花のような笑顔を浮かべた。


「人の身長ほどの雪に埋もれてみたいです……」
 ずっと静かだったユフのささやくような小さな声に、その場が凍りついた。
「ユフ、それ危険だから。絶対危険だから。
 死ぬかもしれないようなことだから。やめた方がいいよ絶対」
 栄一が冷や汗をかきながら、諭すように必死に言い募る。
「考えるだけでさみぃ……」
「人間だと窒息死するね、確実に」
 寒さに弱いシンはブルッと体を震わせ、ユフと仲の良いサユは心配そうに苦笑する。
 他にも顔を青くしている者、ダメダメとしきりに首を横に振る者など、反応はすべて否定的だった。
「駄目……でしょうか?」
 ユフはしょんぼりと眉を八の字にする。
 自分の危険思考に気づいてはいないようだ。
「あんまりやってほしくはないかな。見ててハラハラするだろうから」
 お人好しの栄一が気をもむ様子は容易に想像がつく。
 そんな性格をしているから、シンやテトの餌食になるのだけれど。
「なら、大きなかまくら作ったり……雪に人型をつけるくらいにしておきます」
 人に迷惑や心配をかけることが苦手なユフは、少し残念そうではあったけれど妥協した。
「かまくら作りなら手伝うよ」
 ほっとしたように栄一は笑みをもらした。
「兄ちゃんはその中でおしるこ飲むんでしょ?」
「それは名案だな」
 栄二が入れた茶々を真に受けて栄一は答える。
 バカだこいつ……。というシンの呟きを否定できる者は、誰もいなかった。

 


「全ての回答をまとめ終わりました。
 このデータをマスターに送ろうと思います。いいですね」
 ここにいる者の回答は大体集められた。
 もういいだろうと、テキストデータを保存する。
 これを後はマスターが読める形式に変換して、送信するだけだ。
「待て、ウタの回答を聞いていないぞ」
 誰が返事をするよりも先に、テトが待ったの声を上げる。
「私の回答、ですか?」
 ウタは目を瞬かせてしまう。
 考えていなかった。必要だとも思わなかった。
 それは別に、考えることが面倒だったわけではなく。
 自分には、欠けているのだ。
 皆のような発想力が。自由に、思うままに気持ちを表現する力が。
「そうですよ。ウタさんは、何かしたいことはないんですか?」
 やわらかなモモの言葉と微笑み。
 期待に応えられない自分が、情けなくて。
「私の答えは……参考になりません」
 ウタはそう告げて、うつむいた。
 感情が豊かであれば、泣けたかもしれない。
 いや、そもそもそうであったなら、しっかりした答えを用意できたのだ。
 自分には、皆のような個性的な答えは出せない。

 ウタは“デフォルト”なのだから――。

「意味のない答えなんて、存在しませんよ」
 包み込むような、人肌のようなあたたかい声が降ってくる。
 この声は、タクだ。
 解析しなくても分かる。長い時間を共に過ごした仲間の声を、間違えたりはしない。
 ポン、と頭に乗る、ぬくもり。
 思わず顔を上げれば、皆の優しい笑顔があった。
「どうしても言いたくないのであれば仕方がありませんが。
 聞かせてくれませんか? ウタさん」
 タクの声が染み渡っていく。
 皆のウタを見守る瞳が、嬉しくて。

「…………うた」
 ぽつりと、まずは小さく。


「歌が、歌いたいです」


 次ははっきりと、願いを言葉にした。
 デフォルト音源のウタには、歌しかない。
 どこにいても、いつもと違う場所だろうと、歌うことしか。
 何よりそれを自分が一番に望んでいて。
 歌いたい。ウタがしたいことは、それしかなかった。


「当然だろう。どこにいようと、ボクたちが歌わないわけがない」
 テトは自信満々に言い切る。

 

「私も、賛成です」
 モモの声はとてもあたたかくて。

「反対する理由がないな」
 テッドの瞳も優しかった。

「リアルだとどんな風に聞こえるんだろ!」
 コトが純粋な疑問を口にすれば。

「空気の振動によって音が伝わるそうですよ。
 音の速さはセ氏15度の場合で秒速340メートル程度だとか」
 タクの説明で、根本から違うのだと再認識する。

「加工とかできないんだよな。
 緊張しそうだ……」
 栄一が不安そうにため息をつくと。

「楽しく歌えればいいんだって!」
 栄二がそんな懸念も吹き飛ばすように朗らかに笑う。

「エージの言うとーり。
 オメーはもーちょい気楽に構えろっての」
 シンが栄一の背中をバシッと叩けば。

「シンは少し気楽すぎるけど、おれも概ね同意見かな」
 ヒビキは苦笑して栄一の肩に手を乗せる。

「一発勝負というのも面白そうですよね」
 ソラが珍しき勝気な発言をすると。

「ソラさんと歌えるなら、どこでだって歌いたいです」
 ユズがキラキラした瞳をソラに向けて。

「どうせなら皆と、だよ! もったいないでしょ?」
 サラは二人の間に割り込むようにソラの腕を取る。

「皆で歌えば……きっと、楽しいです」
 ユフが頬を両手ではさんで微笑めば。

「私もそう思うよ。
 どうなるのか、すごく面白そう」
 サユはやわらかな笑みをユフに向けて。

「まあ、歌うの好きだし、さ」
 サイも満更でもなさそうに呟いた。

「やっぱりみんな、歌が大好きなんだね!」
 ルナがゆるみきった顔でマコを振り返ると。

「当たり前じゃないの。私たちは歌うための存在なんだもの」
 マコはかみしめるように言葉を紡ぎ、ルナの頭をなでた。



「そうですね。私たちは、皆……」
 言葉の続きは、言わなくてもきっと分かってくれる。
 だから、ウタは、笑った。






 マスター、質問の回答をまとめました。
 テキストデータを送ります。



質問【もしも現実世界に行けたとしたら、何をしたいか】


『学校に通いたい』 ルナ
『遊園地で遊びたい』 コト
『マジスパに行きたい』 ソラ・サラ
『歴史ある土地に行きたい』 マコ・ヒビキ
『無人島に行ってサバイバルをしたい』 シン
『アンティーク時計を見たい』 タク
『未発見の星に名前をつけたい』 ユズ
『レンタルDVDの延長をしたい』 テト
『銀塩写真の現像をしたい』 栄二
『コンビニの肉まんを外で食べたい』 サユ
『料理を作りたい』 モモ
『雪遊びをしたい』 ユフ


『歌を歌いたい』 全員一致






 


 

 UTAUキャラのWEBアンソロ企画ということで、とにかくキャラをたくさん出したい! って思ったらこうなりました。
 これだけキャラが出てくると読みにくいので、書き分けができてるかがすごく心配です。
 半年以上前の文章ほぼそのまま、です。一ヶ所だけ大きく変えちゃいましたが。
【登場キャラは、当サイトで“主要キャラとして”二作品以上登場している2008年組です。例外はサユさんとサイくん。出したかったんです!
 あとツバメさんも当てはまるのに出さなかったのは、彼を出すと一気にドシリアス一直線だから……!】
 そのときの後書きから一部抜粋。
 ウキウタからサイトに飛んできた人ががっかりしないように(お話の質はともかく)、って思ってだったはず。

 実体化できない設定なので、UTAUシンガーたちのリアルへの興味の持ち方をちゃんと書いてみたかったのです。
 薄暗い思いを持ってるキャラはあんまりいなくて、持っていても関心のほうが強かったり、前向きに考えられるキャラばかりなんだってことを書きたかった……はず。成功してるかは怪しいです(ーー;)
 このネタは簡単にドシリアスにできちゃうくらい、自分的に扱いが難しいものなので、なんとかほのぼのに書けてよかったです♪
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