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Trick and Treat
トリックオアトリート! いたずらしないのでお菓子ください。プリンください。
ということでハロウィン小話です。ユズコト。たぶん甘め?
「……ハロウィンは今日の夜だって、ウタが言ってたよ」
ただ今の時刻、午前七時十二分。つまり朝。つまり起きたばっかり。
無駄だって知っていても、負けず嫌いのコトは反論してしまう。
「それじゃ意味がありませんから」
優しげにも見えなくはない、含みのある笑み。
何の意味がないのか、なんて聞かなくても分かる。とてつもなく不本意だけれど。
『トリック』は仕掛けるタイミングが重要だ。
身構える時間を与えてはくれない。
この日は彼のためにあるんだと思えそうなくらい、いたずら好きなユズなら、なおさら。
でも、今回は。
「はい、トリート」
飾り気のない透明パックを、ユズに向けて放り投げる。
中身はジンジャークッキーだ。
「……え?」
ぱちくりと、烏羽色の瞳が瞬かれる。
「トリック、オア、トリートでしょ?
お菓子があったらいたずらできないね」
強気に胸を張ってコトは言った。
こうなることを予想していたのは、自分じゃなくてトリだったけれど。
いつも負かされている分、今はとても晴れ晴れとした気持ちだ。
「くれるんですか?」
ユズは呆けたような顔をしている。
もっと悔しそうにしたっていいのに。
反応が薄いと、勝ち誇ったってむなしいだけだ。
「ハロウィンだからね」
「そう、ですけど……。
用意してくれてるとは、思わなかったので」
コトから目をそらし、頬を染めたユズは。
照れている、ように見えた。
いきなり、ぶわぁっと、何かがコトにも伝染した。
違う。自分はただ、いたずらされたくなかっただけで。
ユズにあげるためなんかじゃ……。
「べ、別に、自分で食べるつもりのやつだったし」
「コト、刺激物はあまり得意じゃなかったですよね?」
とっさに思いついた言い訳は、苦しすぎてばればれだった。
「う……トリが食べたがってたから!」
「トリさんはコトよりも苦手だったと記憶していますが」
ふさがれた退路に、コトは口をぱくぱくさせる。
違う。本当に、違うはずだ。
ユズの好みが反映されているお菓子も、偶然のはず。
特に何も考えないで、それにしたはず……なのに。
「ありがとうございます。
ジンジャークッキー、おいしくいただきますね」
やわらかくて、あたたかい笑み。
声と言葉と顔の全部で、嬉しいんだと表すユズが。
かわいい。なんて思えてしまって。
「トリックアンドトリートじゃんか……」
いつものいたずらより何倍も、たちが悪い。
甘い『トリック』に、コトははまってしまったのだった。
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