VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ みくちゃんとごほん | | HOME | | 文句の付け所のない笑顔を向けられた時 ≫ |
Princess holding
UTAUカップル第二段(?)テッド×テト。
テトのキャラクターをどうしようか迷い、偉そうなボクっ子になりました。
「疲れた。動けない。運べ」
テトは地面にぺたりと座り込んだかと思うと、そうのたまった。
「意味が分からん」
VOCALOIDと同じでUTAUには“疲労”という観念がない。
精神的なものはあるだろうが、テトがそんなやわな神経を持っているとは思えなかった。
「部屋まで運べ」
確かに戻る部屋は同じだけれど、命令されるいわれはない。
偉そうな口調に聞く気も失せるというものだろう。
テッドはかまわずに、自分だけ先に戻ろうと歩を進める。
「無視するな!!」
背中に怒声が浴びせられる。
キンキンと、耳障りと言ってもいいような声。
彼女の特徴でもあるのだし、自分も高い声を出せばああなるとは分かっている。
せめて叫ばなければ、それほど悪くはないのに。
「無視はしていない。聞く耳を持たないだけだ」
このまま放っておいてもよかったが、少しの良心はあったので振り返る。
「そういうのを屁理屈って言うんだぞ」
「知っている」
「だったら、運べ」
どうしてもテッドに運んでほしいらしい。
頼むのではなく命じるのが、彼女らしさなのだろう。
「断る」
栄一やソラなら仕方がなさそうに言うことを聞くのだろうが、テッドにその気はなかった。
運ぶ、ということは、担ぐか抱き上げるかしなくてはならない。
重さは感覚を遮断すればあまり感じなくはなる。
ただ、気持ちの問題だ。
つまるところ、面倒くさい。
「君は実に馬鹿だな。
ボクの命令は聞かないといけないんだぞ!」
握りこぶしを作って力説する。
根拠のない、ただの独りよがりな愚論でしかない。
「どこにそんな決まりが?」
「今、ボクが決めた」
えっへん、と腰に手を当て、まるで自分が法律だとでも言いたげだ。
元は同じ存在だったはずのテトの思考回路が理解できないのは、今に始まったことではない。
もう一つの人格として別けられたときから、テトとテッドは別の固体なのだから。
「なら聞く必要はないな」
「なんでなんでなんでっ!?」
納得できない、とテトは両腕を振り回す。
自分の言う通りにならないことなどどこにも存在しないのだと、そう信じているような態度だ。
実際に、疑っていないのかもしれない。
他人の好意の上に自由が利いているのだと、分かっていないのかもしれない。
「わがままもその辺にしておいたらどうだ。
マスターに呆れられるぞ」
とっくに通信は切れているから、今の状況が分かるはずもない。
けれど今回に限らず、テトのわがままにはよく苦笑いを浮かべていた。
手に負える子ほど可愛い。とも思っているようだったが。
「そんなことあるはずがないだろう」
きっぱりとテトは言い切る。
「その自信はどこから来るのやら」
「一々ムカつくヤツだな!」
ふっと馬鹿にするような笑みで言ってやれば、頬をふくらませて怒る。
沸点の低いテトは、簡単に声を荒げる。
それはやはり耳に響いて、テッドの神経を逆なでする。
一つ、ため息をつく。
時には思い通りにならないものもあるのだと、教えるつもりだったが、気がそがれた。
これ以上言い合いを続けていたら、一体いつ部屋に戻れるか分からない。
「……部屋まででいいんだな?」
座り込んでいるテトの隣に膝をつき、確認する。
リラクゼーション区域だとか、さらに遠くまで運ぶつもりは、さすがにない。
「初めからそうしておけばよかったんだ」
そう言いながら青年の首に腕を回してきた。
つまり抱き上げろということか。
膝の裏と腰に手をやり、立ち上がる。そこまで重くはない。
「文句を言うなら運ばないぞ」
テッドが告げると、テトは黙り込む。
やはり自分で部屋に戻る気はないらしい。
歩き出してから、付け足すようにテッドは口を開く。
「押し問答が面倒くさくなっただけだ。
時間の無駄だからな」
「むっ……!? それはひどいぞ!」
「お互い様だ」
こうしてわがままを聞いてやっているのだから。
多少の文句は聞き流すのが大人というものだ。
まあ、設定年齢はともかく、精神的にテトが大人だとはとても思えないけれど。
「ボクは寛大だからな。許してやろう」
抱き上げられているというのに、わざわざ背を反らしてポーズを取る。
「偉そうな口を利く」
テッドはわざとらしく息をつく。
彼女の言動に呆れさせられるのは毎度のことだ。
「事実、偉いのだから当然だ」
「分かった分かった」
ぽんぽんと、縦ロールを崩さないように頭を軽く叩く。
「分かっていないだろう!」
むにーっと後ろで結んでいる髪を思いきり引っ張られる。
正直痛い。放してほしい。
ふいにわいた悪戯心。
「なんだ、わがままお姫さま?」
くっと笑みをこぼし、わざと声のトーンを甘くして言う。
思い通りに、テトは顔を真っ赤にして声を上げた。
「……っ! ば、バカッ!!」
口癖がうまく言えなくなるくらいには、動揺させることができたらしかった。
≪ みくちゃんとごほん | | HOME | | 文句の付け所のない笑顔を向けられた時 ≫ |