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文句の付け所のない笑顔を向けられた時
お久しぶりすぎるお題小話。『敵わないと思い知らされる時で10のお題』の3から。短いです。
マスター視点でMEIKOと。マスメイ。名前出さないようにするのに苦労した~。
配布元:原生地
「マースーター」
ふと、声がする。
マスターと呼ぶのは彼らだけで。
落ち着いた女性の声からMEIKOであると、判別できる。
「何だ」
後ろに立っているだろう彼女に顔も向けずに、答える。
たぶん、何度か呼ばれていたのだろうと思う。
間延びした声には、明らかな苛立ちが込められていたから。
「休んだ方がいいんじゃない?」
ため息をつく気配。
カタカタカタ。一定の音はやむことはない。
「あと少しだけなんだ」
別にすぐに完成させなければいけないわけではない。
けれど、できる内にやっておけば、後が楽だ。
余った時間で彼らにまた曲を作ってやることができる。
たまっていた未読の本を一気に読んでしまってもいいだろう。
「明日でもできることでしょ」
MEIKOの声は硬い。
睡眠時間を削ってまでやっているのだから、当然といえば当然か。
「今、やっておきたい」
正論を聞く気には、なれない。
こういうときの彼は頑なだ。
間違っていると分かっていても、やめようと思えない。
「マスター」
カタッ。キーボードを打つ音がやむ。
MEIKOに両頬を挟まれて、顔を横に向けられたのだ。
椅子が回り、MEIKOと対面する。
「休みなさい」
綺麗な、けれど寒気がするほど冷たい笑み。
怒っているのだと、声から、笑顔から、伝わってくる。
心配から来る怒りだというのも、すぐに分かる。
普段は従順な彼女を命令口調にさせてしまうくらい、自分は心配をかけてしまったのか。
叱られた子どものような後ろめたさが、彼の視線を泳がせる。
「……MEIKO」
何か言おうと、口を開く。
実際には何も言葉は出てこなかったが。
「言い訳も言い逃れも聞きません」
ぴしゃりと、反論は許さないとばかりに冷たい声が発せられる。
敬語になっているのはやはり腹が立っているからだろうか。
完璧なまでの笑顔が、むしろ怖かった。
「MEIKOには敵わないな」
ふっと、苦笑をこぼす。頬に添えられた手に手を重ねる。
これ以上は意地を張ってもいられない。
今日はもう休むしかないだろう。
姉のような、母のような彼女に怒られるのは、決まりは悪いが嫌いではない。
甘え、とでも言うのだろうか。
素顔をさらすことができる、希少な存在だ。
「アナタのVOCALOIDなんてこれくらいじゃないとやっていけないわ」
冷たい笑みではない、嬉しそうな笑顔。
その表情は、少し子どもっぽくも見える。
和んだ空気を楽しむように、彼は瞳を細めた。
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