忍者ブログ

しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

みくちゃんとごほん

 幼児ミクと青年KAITOのアナザーストーリー。3.5話って感じ?
 ミクはあんまり出てきません。MEIKO姉さんが出張ってます。
 前作で複線って書いたけど、それはこの次の話でした。






  ~ another story ~




 珍しく、ミクが一人で歌のレッスンを受けている時のことだった。

「ミクがいないと静かねぇ」
 MEIKOはそう、ミクの部屋の扉を見ながら呟いた。
 誰に聞かせるためのものでもないようだったけれど、ここに自分がいる以上は、話をするべきだろう。
「まあ、そうだね」
 当たり障りのない返答だが、実際その通りだとも思った。
 賑やかなミクが一人いないだけで、ここは嘘のように静寂を保っている。
 寂しいと感じるのも、彼女のいる生活に慣れてしまった証拠だ。

「これが当たり前だったなんて、信じられないわ」
 MEIKOも同じ気持ちだったのだろう。持っていた楽譜を横に追いやった。
 集中できない、ということだ。
 かん高い子どもの声が聞こえないだけで、落ち着かない。
 マスターの言うことをきちんと守っているだろうか?
 癇癪を起こしてマスターを困らせたりはしていないだろうか?
 しなくていい心配を、当然のようにしてしまう。
 それが自然で、普通で。
 ミクが来る前の過ごし方なんて、できなくなってしまっていた。
「確かに。姉さんも面倒見良いしね」
 KAITOがそう笑うと、MEIKOはむすっとした顔を作る。
 妹が可愛いのは言われるまでもないけれど、改めて指摘されると面白くないのだろう。
 ましてそれが可愛くない弟にであれば。
「アンタには負けるわよ」
 わざとらしいため息をつきながら、こぼされる。
「はは、言い返せないなぁ」
 事実でしかないから、青年は笑ってごまかすしかなかった。
 可愛い可愛い妹だ。
 大事に、真綿で包むように慈しんでも、まだ足りない。
 何からも傷つけられないように。
 いつも変わらぬ笑顔でいられるように。
 大切に大切にしていた。
 過保護どころか、過干渉だと言われてしまっても否定はできない。

「あ、姉さんそこのご本取っ……」
 MEIKOの近くの棚の上、目当ての楽譜の載った本を取ってもらおうと思って口を開く。
 が、言葉を中途半端なところで飲み込んだ。
 はっとして口元を手で覆って、姉の様子を伺う。
 初めは驚いたように目を見開いていた彼女は、すぐに楽しそうな表情を作った。
「ご本、ね~。
 すっかり子煩悩じゃないの」
 ニヤニヤと、弟をからかういいネタを見つけたとばかりに笑みを深くする。
 言い訳のできないKAITOは、仏頂面になる。
 つい、ミクと話すときの癖が出てしまったのだ。
 幼児語とも言われる、聞いてて可愛らしいと思えるような言葉。
 普段は落ち着き払っている彼の口からこぼれ出たそれは、さぞ面白かっただろう。
 いつもマスターとの仲を揶揄される側であるMEIKOにとっては、特に。
「その内『パパ、だ~い好き♪』とか言われたりして。
 アンタも緩みきった顔で『父さんもミクのこと好きだよ』って、やりそうよね。
 あ~、楽しみだわ」
 MEIKOは本当に愉快そうに話を広げてゆく。
 反論は、できなかった。
 すればさらに話題を提供するだけだと、分かっていたから。
 今まで気づかなかっただけで、実はかなりストレスを溜めていたのだろうか。
 これからはからかうのも少し控えた方がいいのかもしれない。
 げんなりとしながら、KAITOは密かに心に決めた。



「おにーちゃん、おねーちゃん、ただいま!!」
 それから少しして、ミクの部屋の戸が勢いよく開いた。
 笑顔で駆けてくる様子を見る限り、特に問題なくレッスンを終えられたようだ。
 一番にそんな確認をしてしまうあたりが、子煩悩だとからかわれる所以なのだろう。
 分かっていても、こればかりは仕方がなかった。

「おかえり、ミク」
 飛びついてくる少女を抱き止めて、迎える。
 ミクが嬉しそうにすり寄ってくるのを微笑ましく見ていると、不意に視線を感じた。
「……何?」
 MEIKOに目を向けて問えば、彼女は大げさに首を振る。
「その内じゃなくて、とっくのとうに手遅れだったって思い出しただけよ」
 とどめとばかりの姉の言葉に、KAITOはミクの前だというのに思いきり顔をしかめてしまった。
 そこまで言われるほど酷いつもりは……ないと言うと嘘になる。
 ミクに甘すぎる自覚は、足りていないかもしれないけれど、それなりにはあった。
 改めて指摘されると面白くない。それを今、青年も理解した。
「何のお話ー?」
 自分だけのけ者にされて、つまらないのだろう。
 ミクはぶーっと頬をふくらませて、KAITOの裾を引く。
 MEIKOは甘えるように見上げてくる少女の頭を優しくなでてあげてから、
「お兄ちゃんがね、どうしようもないくらいミクが好きってお話」
 悪戯をする子どもの目をして、ミクに言った。

「みくもおにーちゃんだ~い好き♪」
 何も分かっていない幼いミクの言葉に、緩む顔をどうしようもできないのも、やはり事実で。
 姉の含みのある笑みは、とりあえず見ていないことにしておいた。

 

 子どもなんて作れるわけがないVOCALOIDであるというのに。
 子煩悩のKAITOの、悩みはつきそうになかった。





 気づかないうちに幼児語が浸透してれば良い。
 MEIKO姉さんもそのうち笑ってられなくなっちゃうんだ。リンとかは普通に使ってそうだし、レンは思いっきり照れそう。
PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

trackback

この記事にトラックバックする:

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]