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Now the unknown future
『When a partner is made』の続き。それ読んでないと意味分かんないと思います。時間的に十分後くらい?
ヒビルナで……たぶんほのぼの。色々混じってるけど、きっとほのぼの。
社の縁側に腰掛け、空を見上げる。
どこまでも澄み渡った青が、目にしみて、ヒビキは瞳を伏せた。
風を感じる。葉擦れの音が聞こえる。
そういえばヒビキのg換えキャラの名前は、“イブキ”が有力候補なのだとマスターが言っていた。
生命の息吹。生きようとする、力。良い名前だ。
思い出してしまったら、考えないようにしていたことまで引っ張り出されてしまう。
どんな子なのだろうか。
楽しみでないわけではないのだ。
ただ、展開についていけていなくて。
置いてけぼりにされたような気になってしまう。
いつ来るかは分からないけれど、“いつか”は絶対やってくる。
自分は、彼女に普通に接してあげられるだろうか?
優しくできるだろうか?
仲良く、なれるのだろうか?
こんな微妙な気持ちを抱えたままで?
相手に失礼ではないだろうか?
浮かんではヒビキの心に波紋を残していく疑問。
答えなんて出るはずもない。
彼女が来るまで、ずっと抱え続けなくてはならないのだろうか。
こんな、ぐしゃぐしゃな思いを。
「……びき、ヒビキ!」
声が、すごく遠くから聞こえる気がする。
ありえないと分かっていても、幻聴だろうかと思ってしまった。
今、一番聞きたくて、一番聞きたくない声だったから。
「ヒビキったら~!」
再度呼ばれて、これが現実だと認識する。
瞼を開けば、黄金の光。
太陽より眩しく月より鮮やかな金糸が、目に映った。
視線を上げると、整った顔立ち、晴天色の瞳と出会う。
「ああ、ルナか」
声だけで誰だかは分かる。
ヒビキは条件反射で微笑みかける。
「返事すらしてくれないなんてヒドイよ~!」
知らない間に何度も呼ばれていたらしい。
聞き逃すということはありえないから、処理能力が追いついていなかったのだろう。
考え事に、夢中で。
「ごめん、ぼーっとしてた」
髪をかき上げ、素直に謝る。
考えすぎるのは、何も考えていないのと同じだ。
「それは見れば分かる」
ルナはヒビキの隣に当たり前のように座った。
「で、何? 話でもあった?」
「う~んと、アタシは特になかったんだけどね」
「……皆、か?」
ルナの様子に、思い当たる節があって問いかける。
「うん。行ってきなって勧められた」
予想通りの答え。
きっと、聡いタクやシン、人の良い栄一やソラあたりだろう。
ヒビキの気分が下降しているのに気づいて、こういう時はルナと話すと気が紛れるのを知っていて。
何も分かっていない彼女を、来させたのだろう。
「お人好しだなぁ、まったく」
結局その気遣いに救われているのだから、もう笑うしかなかった。
一人にしてほしい。と釘を刺さなかったのは、こうなることを望んでいたからかもしれない。
心配をかけたくないと思っておきながら、勝手すぎる。
「なんかアタシだけのけ者な気分~。
みんなが何心配してるのか分っかんないし」
ルナは苦そうな顔をして、口をとがらせた。
うさぎの耳が垂れ下がっている。
教えてくれないのが悲しくて、自分で気づけないのが悔しくて、どちらにも腹を立てているのだろう。
「ルナは、分からなくていいんだよ」
ヒビキは少女の頭を優しくなでてやる。
鈍いところが、ルナの短所で長所だ。
自分の弱さをヒビキは見られたくなかった。
だから、ルナは何も知らないままでいい。
「ヒビキが大変なら、助けたいし、それが無理でも心配くらいはしたいよ」
どこまでもまっすぐな澄んだ瞳。
まっすぐ、向けられる好意。
いっそ気持ちが良いほどはっきりした“友愛”の情。
「その気持ちだけで嬉しいから、充分」
ヒビキは熱情を覆い隠して、穏やかに笑った。
一線を引く。彼女のためにも、自分のためにも。
これ以上近づいたら、もっと、と望んでしまいそうになるから。
恋を知らない無垢な瞳に、熱を灯したくなるから。
「う~、納得いかない!」
ヒビキのために癇癪を起こす少女に、
「ルナらしいなぁ」
青年は心から笑うことができた。
彼女と話すだけで、彼女がいるだけで、心が軽く、明るくなる。
ふわり、ふわりと、羽のように。
自分が自分でないような、熱と共に。
「――じゃあ、一つだけお願い」
これくらいは、許されるだろうか?
少しは甘えても、ルナの負担にはならないだろうか?
分からない。けれどたぶん大丈夫。
「何々? 何でも言って!」
ルナは自分にできることがあるのが嬉しいらしい。
手をつき腰を浮かせて、ヒビキの顔を覗き込んでくる。
「g換えの子が来たら、仲良くしてあげてよ」
声は、震えていたかもしれない。瞳は、揺らいでいたかもしれない。
けれど努めて陽気にヒビキは告げた。
自分の分身も、受け入れてほしい。と。
ルナはきっと気づかない本心。
それでいい。どれだけ大きな約束をしたか、一生知らないままで。
いつものように朗らかに笑っていてくれれば。
そうすれば、ヒビキは救われるのだから。
「もちろん♪」
ルナは、不安も懸念も吹き飛ばしてくれそうな笑顔で、そう言ってくれた。
先のことなんて、その時になってみないと分からないものだから。
自分が、もう一人の自分を認められるだろうかという不安は胸にしまい込んで。
今はただ、彼女と笑っていたいと思った。
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