忍者ブログ

しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

In the dark  -turn- Miku side

 カイミク連載五作目。転。ヤマ場に向かって一直線です。






 声が、近くなった気がする。



In the dark  - turn - Miku side




 時々一緒に歌えるようになってから、少女は意識がはっきりしていることが多くなった。
 人で言うところの眠気のようなものが、声が聞こえてくると、スッと消え失せるのだ。
 心地の良いひととき。
 ひどく不安定なつながりではあったけれど、少女は声が合わさる瞬間が好きだった。
 だから、声がどう聞こえてくるか、自然と敏感になる。
 ここ十数日――時間すらも明確には分からないから、あくまで推定だけれど――声が近くなったり遠くなったりを、くり返していた。
 今は、だんだんと近づいてきている。
 合わせて歌うのが楽だと感じるくらいまで。

 一体何があったのだろうか?
 通信はつながらなくても闇を切り裂くように、わずかに届いていた音。
 大きさはその時によって違ったけれど、距離は変わらず遠かったはずだ。
 正確に計れるわけではない。聞こえ方で判断しているだけ。
 近づいたり遠ざかったり、というのももしかしたら気のせいなのかもしれない。
 しかし、それだけでは自分を納得させることはできなかった。
 一度、隣にいるのではと思ってしまうくらい、声がすぐ傍でしたことがあった。
 その時は緊張で全身が震え、歌うことを忘れてしまったほどで。
 これがただの思い違いなどとは、どうしても信じられない。
 だとするならば。

 彼が、移動している?

 考えられる可能性に、少女はぶるりと体を震わせた。
 この……暗闇の中を?
 灯りも道しるべも、何一つないというのに?
 自分ならありえないことだ。
 このパソコンの中で、自己を持った時からずっと“ここ”にいる。
 暗いのも、静かなのも怖くて、数えきれないほど泣いたけれど。
 それでも“ここ”から動こうとはしなかった。
 いや、動けなかった。
 どこも暗やみに包まれていると、どこに行こうと同じだと、冷静に分析するもう一人の自分がいたから。
 環境を変えることができないなら、元からいた場所にいる方がいい。
 そう、臆病な自分は結論を出してしまったから。

 “ここ”以外、知らない。
 “ここ”以外、どこにも行けない。
 それでいい。希望なんて始めからなかったのだから。

 ――では、今は?
 少女は自身に問いかける。
 彼と一緒に歌うことが楽しみで。
 彼の声が届くことを心待ちにしていて。
 それは、希望を見い出したということになるのではないだろうか。
 暗闇の中で動かなかった自分を、今なら否定できるのではないだろうか。
 彼が勇気を出したように、自分も気力を振りしぼって。
 分かる気が、したから。
 どうしてこの永遠に続く闇をさまようことを選んだのか。
 会いたい、のだ。
 会って話して、一緒に笑って、触れて確かめ合って。
 不安定な斉唱だけでは物足りない。もっと、もっとと、求めたくなる。
 少女の気持ちと、きっと同じなのだ。
 彼の方が少し勇気があった。それだけの違い。
 だったら、自分もがんばってみようか。

 一歩、二歩と、床も壁もない暗い空間を、踏みしめる。
 ずっと動かなかった自分とは決別して、ずっと動かなかった場所から離れていく。
 足は恐怖と不安でガクガクと震えていた。
 それでも歩みは止めない。
 青年の波形を捉え、そちらに向かって進んでいく。

 彼の歌声が、失せた。
 歌いやめたのか、単に聞こえなくなっただけなのかは分からない。
 やっと、決断したところだったのに。
 励ますように、慈しむように紡がれる音がなくては、挫折してしまいそうだ。
 会いたい。これまでより強く深く想った。
 会って、好きなだけ一緒に歌いたい。
 少女は、ずいぶん前に独りで歌っただけの【初音ミク】のデモソングの歌唱データを開く。
 最近は彼に合わせて【KAITO】のデモソングしか歌っていなかった。
「ラ……ラララ……」
 試しに口ずさんでみる。データは壊れていないようだ。
 歌おう。彼に向けて。
 彼の歌声が少女に届いて、救いとなったように。
 この声が道しるべになって、導いてくれればいい。

 今までは彼の声が聞こえてきたときだけしか、歌わなかったから。
 こちらから、声を上げて、彼を求める。
 始めはDの音。
 一般常識としてしか知らない鳥が、翼を広げ大空に羽ばたこうとする瞬間は、こんな気分だろうか。
 この暗闇のどこかにいる彼に届くようにと願って、少女は伸びやかに歌った。





 初音ミクのデモソングの一番最初の音を知るのに苦労したのもいい思い出。
 見られてるかは分かりませんが、こっぺぱんP、キリカさん、この場を借りてお礼申し上げます。

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

trackback

この記事にトラックバックする:

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]