VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ Happy Birthday | | HOME | | I can not understand ≫ |
love can not hide
マコとシンのお話。相変わらずマスター←マコ←シンです。
一応、『Idealistic theory』前提のお話。読んでおいた方がたぶんいいです。
声は風に解けて消えていく。
波打つ草が拍手をするように擦れて音を奏でる。
空はただマコを包み込み、太陽は優しく見守るよう光をこぼす。
観客はそれだけ、とマコは思っていた。
風に流れてきた手を叩く音に、マコは驚いて振り返る。
そこには楽しそうな笑みを浮かべているシンがいた。
「シンちゃん、聞いてたの」
「ん、ダメだったか?」
声をかけると、シンは会話がしやすいようにかさらに近づいてくる。
「駄目ってことはないけど……」
誰に聞かせるつもりもなかったから、好きに歌ってしまった。
聞き苦しいとまではいかないかもしれないが、面白くなかったのではと思う。
何より、不意に心を覗かれたようで、恥ずかしかった。
「マコっちの歌はまっすぐだな~」
感心したように言われ、マコは首をかしげた。
『和音マコ』は明瞭系の声質に分類されるものの、今の言葉には別の意味合いを含んでいるように聞こえる。
「よく通る声ってこと?」
「それだけじゃなくってよ、なんつーか、心にまっすぐ届く」
どこか熱っぽくシンは語る。
「誰を想って歌ってんのか、すげー伝わってくるんだよな」
楽しそうな笑み、がくずれた。
瞳にはたしかに切なげな色が見えて。
マコの気持ちを知っているからだろうか?
胸に秘めていたはずの大切な想いが、顔を出す気配がした。
「シンちゃん……」
何を言えばいいのだろうか。
ずっとずっと、仲間たちに、一番の友人のルナにさえ黙っていたこの想いを。
目の前の男には気づかれている。
シンの緑青色の双眸は、すべてをありのまま映し出す、隠し通せない色をしていた。
嘘をついたところで騙されないだろう、彼は。
下手なごまかしも通用はしない。
そんな空気が、二人の間に流れている。
「誰にも言わないでね」
結局、マコは降参した。
目を合わせていられなくて、うつむいてしまう。
「何を?」
分かっているだろうに、わざわざシンは問う。
「私の……好きな人のこと」
言葉にするのは初めてのことで、本人を前にしているわけでもないのに鼓動が鳴った。
しめつけられたように痛みが走り、胸元でぎゅっと手を握る。
大切に温めてきた想いだった。
消せればいいのにと、幾度も思って。
そのたび、育ってしまった想いの深さに気づかされた。
「言わねぇさ。
マコっちが黙ってる間はよ」
意外にあっさりと、シンは承諾してくれる。
周囲を困らせることはしても、厭われるようなことはしない青年らしい返答かもしれなかった。
「叶わないって、分かってるんだもの。
皆に心配かけたくないわ」
もし知ったら、水くさいと言われるだろう。
ルナなどは、どうして話してくれなかったのかと怒るかもしれない。
それでもマコは秘密にしておきたかった。
途惑うこともあるほど、優しい彼らだから。
余計に気をわずらわせたくないと、マコも思うのだ。
「マコっちならそー言うと思ったぜ」
シンはわざとらしくため息をつく。
「どういう意味よ?」
文句を言われたような気がして、顔を上げ仏頂面で返す。
「周りのこと、考えすぎ。
オレみたいにちっとくれー迷惑かけたっていいんだぜ」
仕方ないな、と我の強い子どもに見せるような苦笑。
どう言われようと、マコは考えを改めるつもりはない。
「シンちゃんはちょっとじゃないじゃないの」
ずばっと指摘すると、シンは笑い声を上げた。
けれどマコは知っている。
大丈夫な迷惑しか、かけてこないことを。
「まあ信用できないかもしんないけど、誰にも言わねぇから」
「ちゃんと信じてるわよ」
冗談はよく口にするけれど、悪質な嘘はつかない。
シンという男のことを、これでも結構分かっているつもりだった。
「そっか」
シンはほっとしたような、嬉しそうな笑みを浮かべた。
そんな顔をしなくとも、シンの言葉を信じる者は他にもいるだろうに。
モモやタク、ソラ、ルナに……。
「……気づかれたのがシンちゃんで良かったかもしれないわ」
ぽつりと、小さくマコは本音をこぼす。
風下にいるシンには届いただろう。
「?」
意味が理解できなかったようで、シンは首をひねる。
「少しなら迷惑かけても平気って、思えるから」
ふふっと笑んで、マコは言った。
シンには頼っても平気だと、なぜか思える。
些末なことは気にしない豪胆さ。何があっても笑っていそうな快活さ。
どんな格好悪い面も、すべて受け止めてくれそうな、懐の深さ。
寄りかかっても大丈夫。そんな気がするのだ。
「あ~……」
シンが手で顔を覆って声を上げた。
そのまましゃがみ込んで、髪をくしゃくしゃっとかき回す。
「どうかした?」
マコはひざを折って覗き込む。
「や、殺し文句だなって……思っただけ」
そう言ったシンの顔はどこか赤くて。
本当にどうしたのだろうかと、マコは首をかしげた。
≪ Happy Birthday | | HOME | | I can not understand ≫ |