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しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

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lemon ice

 VOCALOIDとUTAU、大体2:3くらいでの更新になってる気がする。半々くらいにしたいような、今のままでいいような。
 とりあえず『Not Lemon』(リンレン)前提のカイミク。糖度は……ある、と思われます。
 天然で小悪魔みたいなミクさんが好きですよっと。






 可愛い妹は無邪気で無知で気まぐれで、たまにとんでもない問題を起こしたりする。
 そんな彼女が今日は下の妹と作った爆弾を、楽しそうな声と明るい笑顔を添えて、投げかけてきた。



lemon ice




「ねえ、お兄ちゃん」
 人畜無害の可愛らしい呼びかけだった。
「ん?」
 だから、青年も笑みを浮かべ首をかしげる。
 何か自分に訊きたいことがある、といった様子だった。
 歌の解釈で分からないところでもあったのだろうか。
 油断している時ほどとんでないことを言うと、失念していたのだ。

「ファーストキスって本当にレモンの味がするの?」

 告げられた言葉に、KAITOは笑顔のまま固まった。
 ミクは興味津々といった様子で、悪意も他意も無いのだと知る。
 知ったからといって、どうにかなるものでもないのだが。
「…………今度はどこで勉強したんだい?」
 何とか平静を装うことができた自分を褒めてやりたくなった。
「リンちゃんと一緒にね、人の感情について調べたの。
 たくさん知ってれば知ってるほど、歌うときの参考になるでしょ?」
「うん、そうだね」
 先輩として肯定を返し、目線で先を促す。
 歌で人の心を動かすVOCALOIDとして、彼らの想いを知ることは重要だ。
 真摯に歌と向き合う彼女の姿勢は好ましく、正しい。
 ……たとえ、空回りしていようと。

「で、やっぱり代表的なのは恋愛感情だと思って。
 そういう歌って多いから」
 ただの統計論を語る、少女らしい華やぎのない声音。
 それを聞いて、青年は前にマスターがこぼしていた言葉を思い出す。
 ミクにはまだ知らない音があると。
 まだ、足りないココロがあると。
 これがその、何よりの証拠のような気がした。

「恋をすると、相手のことしか考えられなくなるんだって。
 話したりするだけでとっても幸せになって、会えないととっても寂しくって。
 それでね? 相手に触れたくなって、触れてほしくなるんだって」
 KAITOは恋について真剣に語るミクの顔を見ていられなくて、楽譜に視線を戻した。
 それすらも恋の歌だったということを、音符を目で追ってから思い出す。
 澄んだ声で話される内容が、楽譜に書かれた歌詞が、どうしても自分の想いとリンクしてしまう。

 困った。まるで拷問ではないか。
 何が悲しくて好きな少女から、こんな話を聞かなくてはならないのだろう。

「だから抱きしめたりキスをしたり、……その後は何をするんだろう?」
  有害な画像やページは見れないようフィルタリングしておいて良かった、とKAITOは息をつく。
 後、一回か二回リンクを飛べば、きわどい言葉に辿り着いていた可能性がある。
 ミクやリン・レンが誤ってそういったものを見てしまわないよう、マスターに頼んで制御してもらっていたのだ。
「えっと、キスの中でも一番最初のキスは特別らしくって、レモン味なんだって書いてあった」
 メモリーを探っても何もヒットしなかったのだろう。ごまかすように早口になった。
「ほんと? ほんと?
 私すっごく気になってるの!」
 どう答えろと?
 KAITOは本気でそう言いたくなった。
 ただの好奇心だと分かっている。都合のいい誤解をしたりはしない。
 それでも、たとえば期待に輝く翡翠の瞳だとか。
 興奮しているからか、わずかに朱に染まった頬だとか。
 形の整った桃色の唇だとか……見てしまうと、色々と揺らぐものがあるのだ。

「甘酸っぱい、のたとえがレモンだっただけじゃないかな。
 キスする前にレモンを食べない限りは、ありえないと思うよ」
 無難で現実的な答えを何とか絞り出すことができた。
 落ち着け。冷静になるんだ、冷静に。
 そう必死に言い聞かせている時点ですでに動揺しているのだけれど。
 自己暗示だって、しないよりは幾分かマシだろう。
「なぁんだ、残念」
 ミクは面白くなさそうに唇を尖らせる。
 これで興味を失ってくれればいい。
 そうすれば、これ以上の葛藤を続けなくてすむから。

「でも、どうして甘酸っぱい必要があるの?」
 恋を知らない無垢な瞳が、KAITOを見上げて訊いてくる。
 本当に、拷問だ。
 問いに深い意味は含まれていないのだと、青年のことなどどうとも思っていないのだと、知らしめられる。
 分かっていたことであっても、やはりきつい。
「……恋愛が、そういうものだからじゃないのかな」
 ため息を何とか噛み殺し、頭の中でシミュレートした答えを音にする。
 むしろ、自分にしてみればレモンではなくグレープフルーツだ。
 甘酸っぱさよりも、特有の苦さが目立って。
 口の中に残る酸味の強い香りに、酔いそうになる。

「そっかぁ、じゃあお兄ちゃん」
 理解したのかは分からないけれど、とりあえず納得はしたらしい。
 呼びかけに青年は顔を上げる。
 ミクの人差し指がKAITOの唇にちょんっと触れた。

「私にキスする時は、レモン味のアイスを食べておいてね」

 思考回路が停止する音を聞いた気がした。

 なんちゃって、と恥ずかしそうに笑うミクの声も顔も頭には入ってこないで。
 我に返った時にはもうそこに少女の姿はなかった。
 爆弾の威力はすさまじく、情報処理能力が著しく低下している。
 言葉を正しく理解するどころか、論理的に整理することすらままならなかった。


「えっと、それは…………どういう意味なんだ? ミク」



 それからしばらくは、一人悶々と考え込むKAITOの姿があったとか、なかったとか。





 恋に悩み恋に惑う兄さんが好きです。良くないですか、駄目ですか。
 ミクの恋愛感情の有無はあえて決めてません。
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comment

無題

  • いいよね! 
  • 2011/07/25(月) 20:24
  • edit

なんか、
「思考回路が停止する音を聞いた気がした」が
メルトの「恋に落ちる音がした」みたいでおもしろかったです♪
なんかボカロのみなさんは恋とか愛には弱いみたいですね^^かわいいなぁ~

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