忍者ブログ

しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Lightning

雷で停電したときに思いついたカイミクネタ。
同じ題材で違うカイミクが後2つあるので、連続で更新できたらいいな。






 厚い雲が重なり合って空を覆い隠している、どんよりと薄暗い日のこと。
 実体化して兄と歌の練習をしていた時に。

 突然、ピカッ、と空が光った。



Lightning




 窓の外が真っ白になったことに驚いて、ミクは出すはずだった声を飲み込んでしまう。
 それは本当に一瞬だったけれど、衝撃的で。
 ぴったり六秒後に鳴ったゴロゴロという音に、やっと我に返った。

「お兄ちゃん! 雷だよ、雷!!」
 知識でしか知らなかった事象を経験できた喜びに、少女はKAITOに飛びつく。
 彼は一瞬目を見開き、すぐに困ったように笑った。
「嬉しそうだね、ミク」
 そう言って優しく頭をなでてくれる。
 ミクは余計に嬉しくなって、えへへ、と笑みをこぼした。
「うん♪ だって初めて見たもん!」
 雷は初夏から秋にかけてが多い。
 ミクが発売されたのは夏の終わりだけれど、この家に来たのは冬だった。
 だから今まで一度も体験したことがなかったのだ。
 窓まで駆け寄り、また光らないかな、と待ってみる。
 本当は外に出て見てみたい。
 しかし、いつ雨が降るかもしれない今、心配性の兄に止められることは確実だ。

「怖くない?」
 青年の問いに、少女は首をかしげる。
「雷は、怖いものなの?」
 怖いと感じる理由が分からない。
 どうやら自分は人間世界の常識にうといようだった。
 必要最低限は登録されているから、大して問題はないのだけれど。
 それでも多くの人に歌を理解してもらうには、まずは自らがリアルを理解しなければ。
 と、ミクはいつも思っていた。
「人によるけど、大抵はそうなんじゃないかな。
 万が一近くに落ちてきたら、危ないからね」
 兄の説明に、少女は納得する。
 人間が怖がる理由と、自身が怖くない理由を。
「そっかぁ、私たちはそんな心配ないもんねぇ」
 技術的なことは知らないが、実体化したVOCALOIDは質量を持っただけのデータの塊なのだそうだ。
 体が機械でできているわけではないから、多量の電流でもショートしたりはしない。
 電子の世界よりは衝撃によるデータの破損がしやすいそうだが、それもバックアップさえ取ってあれば大丈夫だろう。
 ようは、VOCALOIDであるミクの脅威にはならないのだ。

「けど、マスターが怪我をしたりしたら嫌だろう?」
 KAITOの諭すような穏やかな言葉に、ミクはハッとする。
 主人を第一に考えるVOCALOIDだ。何が言いたいのかはすぐに分かった。
 雷がマスターに害を及ぼす可能性もある、ということ。
「あ! そうだね……考えてもみなかった。
 マスターに落ちちゃうのは、確かにイヤ」
 雷ほどの衝撃は、人間にとっては耐えがたいものだろう。
 運が悪ければ死んでしまうだろう。
 想像したくもない仮定に、少女は泣きそうになる。

「最近は避雷針だとかも多いし、宝くじに当たるよりも可能性は低いと思うけどね」
 落ち込んだミクを元気づけるような、明るい声。
 注意したり励ましたりと、行動に統一性がないが、それが兄のやさしさだと知っていた。
 無知な少女を放っておかずに、理解するまで面倒を見てくれる。
 しかもきちんと、ミクのことを気遣いながら。
「そうだよね!」
 二重の意味を込めて、笑顔を向けた。
 KAITOの優しさが、嬉しい。
 子どもっぽいかもしれないけれど、見守られているようで安心するのだ。

 雷が、また光って、鳴った。
 ミクは窓の外へと視線を持っていく。
 純粋な好奇心と喜び。それと少しの苦い気持ち。
 加わった感情は彼が教えてくれたものだ。

「でも、やっぱり綺麗だな。
 音も太鼓みたいだし」
 呆れられてしまうかもしれないけれど、素直に告げる。
 光が見えてから、今度は八秒。雷雲は遠ざかっているようだ。
 それを寂しく感じるくらいには、気に入ってしまった。
「雷の語源は神が鳴る、だからね。
 雲の上で鬼が背負った太鼓を鳴らしてるっていう、子ども向けの解釈もあるし」
 博識な青年の話に、ミクはバッと顔を上げた。
 目が合ったKAITOは不思議そうな顔をする。

「じゃあ、合わせて歌おうよ!
 神さまの太鼓の伴奏で」

 我ながら中々の名案だと思った。
 雷が空気の摩擦による現象だと知っているし、音楽と呼べるほど整った旋律ではない。
 それでもミクは名曲に出会った時のように感動した。
 兄なら、そんな自分の気持ちを分かってくれるはずだから。

「それもいいかもね」
 何を歌おうか、と少女の大好きなやわらかい笑顔で言った。





 人とずれてるボカロが好きです。でも怖がるミクも書いてみたいので、他にもネタがある。
 実体化の原理が不明すぎ、というかありえなさすぎorz
 何かあれです。ウルトラマンとかと似た原理。エネルギーから質量を作る。
 普通は逆だから、うんごい手間と時間がかかるそうですが(笑)

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

trackback

この記事にトラックバックする:

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]