VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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Lightning
雷で停電したときに思いついたカイミクネタ。
同じ題材で違うカイミクが後2つあるので、連続で更新できたらいいな。
窓の外が真っ白になったことに驚いて、ミクは出すはずだった声を飲み込んでしまう。
それは本当に一瞬だったけれど、衝撃的で。
ぴったり六秒後に鳴ったゴロゴロという音に、やっと我に返った。
「お兄ちゃん! 雷だよ、雷!!」
知識でしか知らなかった事象を経験できた喜びに、少女はKAITOに飛びつく。
彼は一瞬目を見開き、すぐに困ったように笑った。
「嬉しそうだね、ミク」
そう言って優しく頭をなでてくれる。
ミクは余計に嬉しくなって、えへへ、と笑みをこぼした。
「うん♪ だって初めて見たもん!」
雷は初夏から秋にかけてが多い。
ミクが発売されたのは夏の終わりだけれど、この家に来たのは冬だった。
だから今まで一度も体験したことがなかったのだ。
窓まで駆け寄り、また光らないかな、と待ってみる。
本当は外に出て見てみたい。
しかし、いつ雨が降るかもしれない今、心配性の兄に止められることは確実だ。
「怖くない?」
青年の問いに、少女は首をかしげる。
「雷は、怖いものなの?」
怖いと感じる理由が分からない。
どうやら自分は人間世界の常識にうといようだった。
必要最低限は登録されているから、大して問題はないのだけれど。
それでも多くの人に歌を理解してもらうには、まずは自らがリアルを理解しなければ。
と、ミクはいつも思っていた。
「人によるけど、大抵はそうなんじゃないかな。
万が一近くに落ちてきたら、危ないからね」
兄の説明に、少女は納得する。
人間が怖がる理由と、自身が怖くない理由を。
「そっかぁ、私たちはそんな心配ないもんねぇ」
技術的なことは知らないが、実体化したVOCALOIDは質量を持っただけのデータの塊なのだそうだ。
体が機械でできているわけではないから、多量の電流でもショートしたりはしない。
電子の世界よりは衝撃によるデータの破損がしやすいそうだが、それもバックアップさえ取ってあれば大丈夫だろう。
ようは、VOCALOIDであるミクの脅威にはならないのだ。
「けど、マスターが怪我をしたりしたら嫌だろう?」
KAITOの諭すような穏やかな言葉に、ミクはハッとする。
主人を第一に考えるVOCALOIDだ。何が言いたいのかはすぐに分かった。
雷がマスターに害を及ぼす可能性もある、ということ。
「あ! そうだね……考えてもみなかった。
マスターに落ちちゃうのは、確かにイヤ」
雷ほどの衝撃は、人間にとっては耐えがたいものだろう。
運が悪ければ死んでしまうだろう。
想像したくもない仮定に、少女は泣きそうになる。
「最近は避雷針だとかも多いし、宝くじに当たるよりも可能性は低いと思うけどね」
落ち込んだミクを元気づけるような、明るい声。
注意したり励ましたりと、行動に統一性がないが、それが兄のやさしさだと知っていた。
無知な少女を放っておかずに、理解するまで面倒を見てくれる。
しかもきちんと、ミクのことを気遣いながら。
「そうだよね!」
二重の意味を込めて、笑顔を向けた。
KAITOの優しさが、嬉しい。
子どもっぽいかもしれないけれど、見守られているようで安心するのだ。
雷が、また光って、鳴った。
ミクは窓の外へと視線を持っていく。
純粋な好奇心と喜び。それと少しの苦い気持ち。
加わった感情は彼が教えてくれたものだ。
「でも、やっぱり綺麗だな。
音も太鼓みたいだし」
呆れられてしまうかもしれないけれど、素直に告げる。
光が見えてから、今度は八秒。雷雲は遠ざかっているようだ。
それを寂しく感じるくらいには、気に入ってしまった。
「雷の語源は神が鳴る、だからね。
雲の上で鬼が背負った太鼓を鳴らしてるっていう、子ども向けの解釈もあるし」
博識な青年の話に、ミクはバッと顔を上げた。
目が合ったKAITOは不思議そうな顔をする。
「じゃあ、合わせて歌おうよ!
神さまの太鼓の伴奏で」
我ながら中々の名案だと思った。
雷が空気の摩擦による現象だと知っているし、音楽と呼べるほど整った旋律ではない。
それでもミクは名曲に出会った時のように感動した。
兄なら、そんな自分の気持ちを分かってくれるはずだから。
「それもいいかもね」
何を歌おうか、と少女の大好きなやわらかい笑顔で言った。
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