VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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Fulminant
性格設定2の方の、カイミク。
雷ネタとしては正統なような、ちょっとずれてるような、そんな感じ。
梅雨時期だから仕方がないけれど、蒸し暑い。
それもこれも活動を停止したエアコンが悪いのだ。
ミクは八つ当たり気味にネギのクッションを壁に投げつけた。
瞬間、まるで叱るみたいに光った窓の外。
「ぴぎゃっ!?」
ビクッと肩を揺らして、それから急いでクッションを取りにいく。
大きな音がする前に抱え込む。
そして太鼓のような腹に響く雷鳴を耐える。
「こ、怖くなんかっ……!」
震えそうになる体を縮こませて、虚勢を張ってみたけれど、見事に声はかすれていて。
電子の世界に避難したくても、これだけ感情が乱れていたら無理だ。
大人しく雷雲が去ってくれるのを待つしかないのが悔しい。
薄暗い中で、一人でいるにはマスターの部屋は広くて、心細くなってくる。
「ミクー? どうかした?」
こんな時に一番会いたくない彼の声が聞こえた。
視線だけそちらに向けると、ちょうど実体化している最中だった。
パソコンも電源が落ちたから、様子を見にきたのだろう。
「なっ、何でもない!」
知られたくない。他の誰よりも彼だけには。
雷が怖いだなんて、子どもじみていて、恥ずかしい。
カーテン越しでも眩しい光と轟音に、出そうになった悲鳴を何とか飲み込んだ。
「なんか小動物みたいだね。
面白くって可愛い」
ニコッと憎たらしい笑顔に、文句を言う気力も今はなかった。
「そうそう、ミクもアイス食べる?」
「はぁ?」
突然の青年の言葉に、思いきり眉をひそめる。
どうして、ここでアイスが出てくるのだろうか?
当然のミクの疑問に、KAITOの方が不思議そうな顔をした。
「停電しちゃったんでしょ?
こっちじゃ全然動けなかったし、だったら冷蔵庫もだよね。
アイス溶けちゃう前に、一緒に食べちゃおうよ」
言いながらリビングに向かって、すぐに焦げ茶の丸い箱とスプーンを二つ持ってくる。
いつもなら独り占めする彼が一緒にだなんて、珍しい。
大きなサイズだから二人で、というわけではないのは分かりきっていることだ。
このKAITOならたとえ業務用だろうと完食できてしまうだろうから。
「ほら」
小さいスプーンをこちらに差し出す。
自分の方はスープを飲むような大きいものだ。
あくまでも自分のペースを崩さない兄が、何だか羨ましくなってくる。
「お兄ちゃん一人で食べればいいじゃない」
この銘柄はどれもおいしいし、ストロベリー味は特に好きだ。
それでも今はあまり食べる気にはなれない。
「でも、暑いでしょ?」
VOCALOIDにも体感温度はあるのだから当たり前のこと。
首をかしげて訊いてくる青年に腹が立ってくる。
放っておいてほしいのに。どこかに行ってくれればいいのに。
「大丈夫だもん!」
強がりだ、とすぐにばれてしまうだろう。
抜けているようで、見るべきところはきちんと見ているような彼だから。
いろんな意味で大丈夫ではない、と感づかれてしまうだろう。
だから早く一人にしてほしかった。
雷が、また音を立てる。
光ってから、鳴るまでが一秒。一向に遠ざかる気配を見せない。
怖くなんてないから。そう思っても怖いものは怖くて。
クッションを握る手に力がこもった。
「こんな時くらい、頼ってくれてもいいと思うんだけどなぁ」
いつもは甘えてくれないんだしさ。兄の優しい声が降ってきて。
不覚にも、涙がこぼれそうになった。
目じりにたまったものを見られたくなくて、クッションに顔をうずめる。
分かってるよ。とばかりに大きな手のひらに頭をなでられた。
「……誰が。お兄ちゃん頼りないのに」
素直になれない自分が嫌になる。
頼りないなんて、本当は思っていない。
人が良くて、貧乏くじを引きやすいのに、そんなことは気にしなくて。
誰よりもミクのことを見ていてくれて、大切にしてくれて、守ってくれる。
本人には絶対に言えないけれど、頼りになる自慢の兄だ。
「否定はできないけど。
でも、こうしてれば安心できるでしょ?」
言葉と共に、ぬくもりが少女を包み込んだ。
温かい。クッションなんかより、ずっとずっと。
白いコートを、離れてしまわないようにきゅっとつかむ。
「全然……できないもん」
条件反射みたく正反対の答えを呟けば、小さな笑い声。
天邪鬼な自分の本当の気持ちを、きっと分かってくれているのだろう。
「そっか」
アイスを食べれば大丈夫だよ。と言った兄に突っ込みを入れられるくらいには、安心できたようだった。
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