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Twinkle star
UTAUのキャラソート更新したよ!(ここで言うことなのか)
ユニット「夜空」誕生記念創作(嘘)
ユズルナ。コトちゃんもルナさんも好きなだけなのです。浮気ではないのです。
ルナさんに対しては腹黒にならないユズ君。何でだろう。
「ねえユズ君。
星はどうして光ってるんだろうね~」
他愛のない話の延長だった。ルナがそう言い出したのは。
けれど彼女の瞳には何か空虚なものが宿っていて。
一瞬、ユズは言葉をなくした。
「それは、恒星の場合は自らの重力によって生じる核融合反応によって光輝いて――という話が聞きたいわけではないですよね」
星に関しては熱くなってしまう自分を押しとどめて、確認する。
自分が鈍感だとは思わないし、それなりに観察力はあるつもりだ。
今のルナがいつもと違うことくらいは分かる。
天真爛漫で、快活な彼女と。今のルナは、どこか悲しげだ。
「うん。難しそうだし」
それでも少女は笑う。無理をしているような笑み。
そんな表情はしてほしくなかった。
「いきなりどうしたんですか?」
ユズには分からない。
ルナが悲しそうな顔をする理由も、先ほどいきなり『星を見に行こう』と連れ出された理由も。
憶測するにしても、情報量が少なすぎた。
「ほら、人って自分を星にたとえたりするじゃん?
『あの星みたいに輝きたい』とか」
「そうですね」
ルナの話にとりあえず相づちを打つ。
人は――人を模っした、自分たちもだけれど――たとえ話が得意だ。
太陽、月、星。天体に限らず、自然に存在するあらとあらゆるものにたとえる。
それは今に始まったことではなくて、少なくとも日本なら万葉集ですでにいくつも例があげられる。
ルナは、何が言いたいのか。
彼女の視線はずっと満天の星の空に向けられたままだ。
「でも星は、輝きたくって輝いてるわけじゃないのかな~って、思って」
やがてぽつりと、独り言を呟くようにそれは発せられた。
本当に小さい声は、きっとUTAUでなかったら聞き逃していただろう。
もっともUTAUでなければ、ここにいることもないのだけれど。
「つまり、輝きたい人が星にたとえようとするのはおかしいと」
自分の中で整理するように、ユズはゆっくりと咀嚼する。
「否定するわけじゃないけどね」
へへ、と居心地が悪そうに苦笑した。
ルナらしくない言葉だと思った。
快活で、無邪気な彼女は、何でもきっぱりと言い切る。
それがどんなに辛辣であっても。それがどんなに凄惨であっても。
けれど今回は曖昧だ。
どこか迷いがあるような言葉選び。
ルナも分からないからだろうか? 星の考えていることなど。
「星に意思はありませんから、輝きたいとも輝きたくないとも言えないでしょう」
ユズは自身の知識から、そう言うことしかできない。
星々はただ、自然の摂理を繰り返しているだけに過ぎない。
生まれて、輝いて、やがて消滅する。
そこには意思も意図も存在しない。
「うん。そうだね」
ルナは頷く。望んだ答えではなかっただろうに。
ユズには彼女の望む通りの答えなんて用意できない。知識が邪魔をする。素直ではない性格が邪魔をする。
何より、ルナが何を考え何を望んでいるのかなんて、分からなかった。
鈍感ではないつもりで、観察力もある方だと思っていて。
それでも捉えきれない。
彼女は、それこそ名前そのまま“月”のように、大きく気まぐれな存在だから。
「光ってても、意味なんてないんだよね。星にとっては」
星を見上げながら、残酷なことを平然と言う。
ルナは良い意味でも悪い意味でも、純粋だ。
言葉を選び、表情を作る自分とは基盤からして違う。
ありのままをさらけ出す。
「意味を見出すのはそれを見上げている人間ですから」
ユズは、好きな星よりもルナの横顔ばかりを見ている。
悲しげな、今にも泣きそうな、それでも必死に笑っている、少女の顔を。
「じゃあ、見てもらえれば、意味はある?」
ルナがすがるような瞳を向けてくる。
やっと、ユズにも言いたいことが掴めてきた。
人が星に自分をたとえるという話から、つながっていたのだ。
「見つける人にもよるでしょうけど」
自分でも驚くほど慎重に、ユズは言葉を紡ぐ。
傷つけたくはないから。
欠けた月を、再び望にするために。
「……輝いたって、あんなにたくさんあるんだもん。
見つけられないよ」
抱えた膝に顔をうずめる。
丸まった背中は、泣いているようにも見えた。
小さな小さな子どもが、部屋の隅で縮こまっているかのような。
世界の広さを知り、世界の無常さを知った子どもが、殻に閉じこもったような。
独りは嫌だ、寂しいと。誰か聴いて、見つけてと。
埋もれていく自らの声が、薄れていく人の記憶が、怖くて。
不安で満たされてしまった心。それでも期待することはやめられずに。
自分で自分に、傷を作っていく。
「ルナさんは月ですが、もし星になったとしても、ぼくなら見つけられると思いますよ」
ユズはルナの頭をそっとなでてやる。
灯火を見失ったのなら、自分が標になれたらいい。
人の恐ろしさを知ったのなら、人のすばらしさを教えてあげられればいい。
素直になるのはどうしても苦手だけれど、彼女のためなら悪くない。
「どうして?」
ルナが顔を上げる。本当に意外だったようで、目はまん丸だ。
切なげな微笑から表情が動いた。
ユズは嬉しくて、それだけで喜んでいる自分がおかしくて、笑った。
「ルナさんですから」
「理由になってないよ~」
ポコポコと、ユズを叩くルナ。
痛くもかゆくもない暴力に、少年は笑みを深くした。
「ぼくにとっては充分な理由なんです」
そう。ユズにはすぐに分かる印がある。
自分はここだ。と主張するように、星明りを受けて金の髪は輝く。
そのかすかな光だけで、自分は見つけられる。
どの星でもなく、今、目の前にいる“天音ルナ”を。
探し出せるという自信が、確信があった。
「必ず見つけますから、輝いていてくださいよ」
慰めではなく、挑発するような響きを持たせる。
こちらの方が快活なルナには似合いだ。
不安なんて、どこかへ吹き飛ばしてしまえばいい。
「期待されたら、応えなくっちゃね!」
ルナは立ち上がってガッツポーズを取る。
水鏡のように澄んだ天の色の瞳が、いつもの輝きを取り戻す。
それを見て、ユズは心からの笑みをこぼした。
「……絶対、見つけますから」
満天の星空を仰ぎ、もう一度くり返した。
少年にとっての誓い。守らなければならない、約束。
いつだって、彼の世界を鮮やかに彩る少女との、大切で特別な、約束だった。
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