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jealousy
PixivでTさまの素敵なイラストを見て、妄想が止まらなくなってしまったもの。
掲載許可ありがとうございました!
あくまで妄想の産物ですので、イラストとの直接的関連はありません。
ソラ→サラ前提の、ソラと栄一の友情物のようなそうでもないような(?)お話です。
夜。一日が終わりを告げる時間。
ソラはその光景を見て、一瞬思考回路が停止したのを感じた。
情報量に処理が間に合わなかったのだ。
処理を遅らせたのは、視覚から得た情報に途惑った、感情プログラム。
「あ、ソラ」
声をかけられ、ハッとする。
共有スペースの端の方で、壁に背を預けて座っている栄一だ。
「良いところに来たな。
どうしようか困ってたんだ」
苦笑して、青年の肩にもたれかかっているサラを指し示す。
栄一の足元には彼の弟も横になって寝息を立てていた。
手に持っている楽譜からして、次の歌の練習をしていたのだろう。
その間に栄二とサラが、眠ってしまったのだろう。
そう、理解はできた。
けれど。
「栄一さん」
声が存外冷たく響いたことに、驚いた。
それは栄一も同じだったようで、彼は目を丸くしている。
「とりあえず、姉さんは僕が部屋まで運びますので、栄二さんの方はそちらでどうにかしてください」
言いたいことだけを早口に告げて、三人に近づく。正確にはサラに。
「ソラ?」
少年のものよりも落ち着いた低音に呼ばれる。
いつもは年長者として頼りにしている存在。
それが、今このときばかりはわずらわしくて仕方がない。
「どうかしたのか?」
気になんてかけないでほしい。放っておいてほしい。
今は冷静な判断なんてできそうにないから。
栄一の肩を借りて、安心したように眠っているサラを見ていると。
醜い感情が、あふれ出てくる。
その場所は自分のものだ。他の誰にも渡さない。彼女の隣は、彼女の傍は。過去も今もこれからだって、自分のものだ!
すべてぶちまけてしまいたくなってしまう。
「……別に」
何とか平静を装って、それだけ答えた。
サラの膝の裏に手を回し、腰を支え、持ち上げる。
軽さは知っている。もう体になじんでいる重み。
顔を覗き込んで起きていないことを確認する。
どこまでも能天気な寝顔に、少しだけ表情を和らげた。
「おやすみ」
すでに歩み始めていた少年の背中に、声がかかる。
柔らかな低音が染み入るように響いて。
仕方がないなという呆れにも似た、けれどもっと優しい気遣い。
栄一は気づいたのだろうか。ソラの嫉妬心に。
それともただ、寝る前の挨拶として言っただけなのだろうか。
声に含まれている温かみだけでは判断できない。
ソラは振り返る。
そこには変わらず、栄二を膝に乗せて微笑んでいる青年がいた。
サラを起こさないようにと、気を使ってくれていた栄一に、自分は何をしただろう?
不機嫌丸出しで話しかけ、取り上げるようにサラを運ぼうとして。
なんて愚かなことをしてしまったのか。
「おやすみなさい」
複雑な感情が入り混じって苦笑いになってしまったけれど、それでもソラは笑った。
栄一も瞳を細めて答えてくれる。
彼はいい人だ。良い意味でも悪い意味でも、お人好しで。
夜遅くまでの練習にだって、下心なんてないことくらいすぐに分かる。
それでも頭に血が上ってしまったのは、ソラが未熟だから。
どこまでも子どもじみた独占欲。
己を制御できないまま、危うく栄一に害を及ぼしてしまうところだった。
「次はこんなことにならないように、気をつけるから」
栄一は優しい。
損をしていると思うぐらいに、人が良すぎる。
ソラが不機嫌だった理由も、何も訊かない。
これが大人というものなのだろうか。
年齢設定すら決まっていない者も多い、子どもと大人の境界が曖昧な、仮想世界のUTAUライブラリ。
それでもやはり自分は子どもで、彼は大人だ。
「もし、なっても。また僕が運びますよ」
ソラは笑みを浮かべ、嫌味とも取れる冗談を言った。
栄一も意味を察したようで、苦笑する。
彼になら、許してもいい。
ひとときだけ、サラの隣を譲ってもいい。
もしサラが望むなら、ずっと、に延長することになるのかもしれないけれど。
その時はその時で、また考えることにしよう。
「……姉さんを起こさないでおいてくれて、ありがとうございました」
始めに言わなければいけなかったことを告げる。
困り果てながらも、サラを起こそうとはしなかった栄一。
そんなところにも人の良さが表れている。
「どういたしまして」
栄一は彼らしい優しげな笑みをこぼす。
ソラは軽く頭を下げて、その場を後にした。
別に、怒るほどのことではなかったと、最初から分かっていた。
それでも感情が適応されている自分には、どうしようもないこともあって。
他人に対するもやもやが消えたわけではないけれど。
それでも少しずつ認めていこうと、思えるようになった。
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