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しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

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Insensitive 4

 ついにUTAUカテゴリーがカイミクカテゴリーを抜かしてしまいました。
 まあ、でもUTAUはカップリングも絵も何もかもがごっちゃに入ってるので、仕方ないかなぁとも思ったり。
 カイミクもがんばって増やしますけどね!

 ということで、連載? してたのの完結編です。
 カイミク……たぶん。KAITO視点。
 これでKAITO兄さんも可哀想じゃなくなったかなぁと。個人的にはですが。
 ……くっついてませんけど。微妙な感じに中途半端ですけど。






 どこか現実味のない会話を姉とした後、青年は一人で花畑へと来ていた。



Insensitive 4




 と言っても、仮想世界での再現されたものであり、画像ファイルなどと似たようなものだ。
 VOCALOIDなど意識を持つソフトが気を休めるために作られた、有志によって作られたプログラム。
 その一つである、春の区の野原の地。
 どこまでも色鮮やかな花が咲き誇り、青空が広がるここは、ミクのお気に入りの場所だった。

 道らしい道もない空間を、KAITOは歩んでいく。
 エンジンが違うとはいえ同じVOCALOIDの現在位置は、ある程度つかめる。
 もしそうでなかったとしても、誰よりも彼女を見ていた青年には、行動パターンなど手に取るように読めていた。
 きっと、ここでうずくまって泣いている。
 初めて知った感情に途惑いを覚えて、途惑う自分にも驚いて、どうしていいか分からなくなって。
 それは彼が望んでいた思いで、望めないとあきらめていた思いだ。
 恋に恋する無垢で無知な少女は、これからも変わることはないと決め付けていた。
 ほんの少し煽られただけで揺らぐほど、大きな想いを抱いているとは考えていなかった。

 賭けだったのだ。あの時の、恋情を込めた声は。
 無駄だと、馬鹿げたことだと、思っていた。
 見開かれた瞳を、そこに映る当惑を見て、初めて自分が勘違いをしていたことに気づいた。


「ミク」
 背の高い草花に囲まれ、小さな体をさらに縮こませた少女の名を呼ぶ。
 びくっと大きく震える肩。声は届いているようだ。
 隠そうとしてももれ出る嗚咽から、泣いているのだと分かった。
「急に、どうしたの?
 何か嫌なことでもあった?」
 KAITOは手を伸ばしても触れられない距離を保って、慎重に言葉を選ぶ。
 我ながら白々しいとは思うけれど、迂闊なことを言って刺激してしまえば、余計に怯えられる可能性がある。
 それだけは、一番避けたかった。これ以上は自分が持たないから。
「ちがっ、違うの!!
 何でもないから、気にしないで!」
 声は可哀想になるくらい、震えていた。
 思わず用意していた言葉を飲み込んでしまうほどに。
「私が、おかしいの!
 お兄ちゃんのせいじゃなくって、私が……。
 いつもと一緒なのに、一緒じゃないの!」
 頭を抱え込んで、首を何度も横に振る。
 分からない。分からない、と。駄々をこねるように。
 幼いのだ、ミクは。“恋”の意味を履き違えてしまうほど。

「ミク」
 親愛だけを込めた声音で、そっと語りかける。
 少女は恐る恐るといった様子で初めてこちらに顔を向けた。
「大丈夫。いつもと一緒だよ。
 ミクはどこもおかしくなんてない」
 涙にぬれた瞳を覗き込みながら、ゆっくりと音を紡ぐ。
 荒地に水が染み込むように、心に届けばいい。
 優しさだけを込めた、兄としての、KAITOの言葉が。
「……本当? 私、変じゃない?」
 不安げに首をかしげて、ミクは訊いてくる。
 頷いてほしいと、懇願するように揺れる翡翠の瞳。
 とても綺麗だと思った。曇らせたくはないと、思った。
 だから今は、優しい嘘で守ってあげよう。
 傷つけられることのないよう、包み込んであげよう。
「うん、変じゃないよ」
 迷いはなかった。
 少女がいつかすべてを受け止められるようになるまで、待とうと。
 そう、心から思うことができた。

「お兄ちゃんも?」
 幾分か安心したように表情を緩めたミクが、さらに尋ねてきた。
 KAITOが、青年の声がいつもと違ったことに気づいている。
 それは日頃から彼に注目していた証明でもあるような気がして、喜びが込み上げてくる。
「ミクにはどう見える?」
 兄の声で問い、兄の顔で笑む。
 騙されてもらわなければ、ならなかった。
 少女を守るために。平静を保たせるために。
 急激な変化は、きっと少女を傷つける。きっと少女を疲弊させる。
 それは彼の望むところではなかった。

「変、じゃない。いつもと一緒だよ!」
 心からほっとしたような笑顔で、ミクは言った。
 もう大丈夫だろうと、KAITOも安堵に表情を和らげる。
 振り出しに戻っただけだと、意味がなかったと、姉は言うかもしれない。
 けれど、そうではないと自分は知っていた。

「お兄ちゃん、……ありがとう!」
 少しの間の後に、感謝に言い換える。
 飲み込んだ言葉がなんとなく分かって、KAITOは笑みをこぼす。
 変化は、少しずつでいい。確かに変わってきているから。
 これからミクの『大好き』を聞くことは減るだろう。
 嬉しいのか、寂しいのかは分からない。
「どういたしまして」
 何に対しての礼なのか、知らないし、訊くつもりもない。
 彼女が笑ってさえいればよかった。
 それに気づけなかった今までが、少しもったいなかったような気がする。
 きっかけをくれた姉に感謝しなくては。
 KAITOはそう、幸せそうな笑みをこぼした。

 

 変わっていないようで、変わった関係。
 今までとは違う苦しみと、大きな喜びが、二人を待っていた。





 KAITO兄さんちょっとは報われた? これでミクも“insensitive”じゃなくなったかなぁと。
 意味は、簡単に言うと“無神経”。鈍感よりさらにひどい感じ。
 我が家のミクさんは天然鈍感っ子なので、知らず知らずのうちにKAITO兄さんを傷つけてたりしそうです。
 今回のはちょっと行きすぎた例として。
 まあ、恋に恋するお年頃ってヤツですね。
 恋したいなぁって思ってたら、ちょうどいいのが目の前に。みたいな。

 そんなこんなでしたが、ミクさんも少しは成長したでしょう。うん。じゃないと兄さん可哀想だ。
 連載の形を取ってたお話も、ひとまずおしまいです。
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