
VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
| ≪ Insensitive 4 | | HOME | | Your name, My secret ≫ | 
3・君とたくさん話したい
『愛しい君と過ごす日々で50のお題』 3・君とたくさん話したい(時音タク×唄音ウタ)
配布元:原生地
「ウタさん、この歌なんですが」
 僕は今日もウタさんに話しかける。
 何かと理由を見つけては、こうやって彼女の部屋に来る。
「囁くような途中の語りが特徴的ですよね。
 そのことで、ウタさんの意見を聞きたいんです」
 意見を聞く。一見それらしい言葉に聞こえるけれど、下心はあります。
「何でしょう」
 ウタさんは話しかけるたび、返事をしてくれる。
 それがどれだけ嬉しいことなのか、この人は分かっているのかな?
 思わず口元には笑みが浮かぶ。
「UTAUはVOCALOIDのように、Brightnessがありません。
 この場合、単純に音量を下げるしかないと思うんですが、ウタさんはどうですか?」
 ウタさんがこういった論題を好きだと知っていて、問いかける。
 自身がUTAUだからといって、UTAUを知り尽くしているわけじゃない。
 あくまで“歌わせてもらう”ソフト。しかも自分たちは音源データに付加されたプログラムでしかない。
 もっと上手に歌うための議論は、日常のようにしている。
「間違ってはいないと思います。
 あとは、エンベローブの最初を低めにするという方法もありますが。
 元々がウィスパー系の音源であれば、それだけで囁き声に聞こえるのではないでしょうか」
「一理ありますね。
 他の手として、UTAUからは離れてしまいますが、音声を加工することもできますね」
「その前に原音設定があります」
 いつもより音節を長くつなげて話すウタさんを、僕はじっと見つめる。
 自慢の処理能力を発揮している姿は、輝いて見えた。
「ああ、あとプロパティでBRE値とH/h値がありましたね。
 それらを組み合わたらどうなるのか、気になってきました」
 思い出したように、玄人向けの数値を口にする。
 僕たちのマスターは一度も使ったことがないものだ。
「音源次第でだいぶ勝手は変わるでしょうが、できなくはないと思います」
 はっきりと、ウタさんは言った。
 ウタさんが可能性の話をするとは珍しい。
 それだけ議論が楽しいんだろうな。
「確かに。UTAUでもこういう声は不可能ではないかもしれません」
「そうですね」
 僕の肯定にウタさんも頷いて、沈黙が落ちる。
 この話題はもう終わりになりそうだと寂しく思った。
 また何か見つけてこないと。
 そんな、思惑をウタさんは知らないだろう。
「――タクは、どんなことでも私にまず聞きますね」
 珍しくウタさんの方から発言する。
 尋ねているというよりは、確認。
 ウタさんもそれくらいは分かっていたらしい。
 過去の僕の行動パターンから分析したのかな?
 “情報”が何より好きなウタさんだから。
「そうでしょうね。自覚はあります」
 本当のことだったから、正直に認めた。
 ウタさんが眉をひそめる。
 あ、訳が分からないって顔だ。
 無表情のようで分かりやすいウタさん。大抵の感情なら読み取れる。
「どうしてなのか、気になりますか?」
 僕は意地悪な質問をする。
 ウタさんは“知らないこと”があるのが嫌いだ。
 どんな情報でも、記憶して記録しておきたいらしい。
 だから返ってくる答えは必ず『是』。
 その通りで、ウタさんは迷うことなくこくんと頷いた。
「ウタさんと、話していたいからです。
 ウタさんの声が聴きたい。ウタさんの言葉で聴きたい。
 ウタさんの声が好きだから。ウタさんのことが好きだから。ですよ」
 これ以上ないくらいの笑顔で、言ってあげる。
 我ながらよくこんなすらすら言葉が出てくるなと思うけれど。
 全部、本心だ。
 はっきり言葉にしないと、ウタさんには伝わらない。
 だから僕は、何度だって言います。
 あなたのことが好きです、ウタさん。
「……そう、ですか」
 ウタさんは困ったような表情をした後、うつむいた。
 その頬が赤く染まっているように見えたのは、僕の気のせいですか?
「照れました?」
 くすっと笑みをこぼして、訊く。
 ユズ君の、好きな子をいじめたくなる気持ちが、少しだけ分かってしまう。
 ウタさんのこんな顔が見れるのは、僕だけだろうから。
「少しだけ」
 素直なウタさんはそう答えて。
 僕は嬉しくて笑った。
 あなたとたくさん、どんなことでも話したい。
 僕はいつもそう思っている。
 必要なこと意外、言葉にしようとしないあなただから。
 それでも話しかけると、きちんと答えてくれるから。
 だから、ねえ。もっともっと、ウタさんの声を聞かせてください。
 ウタさんの音で、ウタさんの言葉で、僕に応えてください。
 やっぱり僕は、あなたと話す時が好きなんです。
| ≪ Insensitive 4 | | HOME | | Your name, My secret ≫ |