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10・君と一緒にいたいんだ
『愛しい君と過ごす日々で50のお題』 10・君と一緒にいたいんだ(KAITO×初音ミク 設定2)
配布元:原生地
リビングのソファーの前。
そこに青年はずっと座り込んで、夢の中の住人を観察していた。
すうすうと規則正しい寝息。たまに寝返りを打とうとして、狭さに眉をひそめる。
人間が眠っているときなんて、マスターくらいしか見たことがないし、それも数えるほどだから、VOCALOIDの眠りが人に似ているかは自分たちでは知ることはできない。
それでも開発者が不定期にバージョンアップをして、少しずつ着実に近づいてきているのだろう。
たとえば、夢が見られるようになったように。
「可愛いなぁ」
ぽつりと、六度目になる呟きをこぼす。
実のところ、自分はVOCALOIDがどのようにして作られているかなんて、興味はない。
機密が簡単にもれてしまわないよう、一定度以上は調べることができないようブロックがかけられているということもある。
何よりもKAITOは“今”が大事で。
今、健やかに眠りについているミクがいて、その少女を見て癒される自分がいる。
それが一番大切で、尊いことのように思えるのだ。
「うん、可愛い」
KAITOは誰にも見せたことのないような、穏やかな笑みを浮かべる。
目の前で寝ている彼女が見たら、きっとバグかウイルス感染かと言われるだろう。
マスターからもミクからも『バカイト』と言われるのが日常だから、それくらいは容易に予想がついた。
演じているわけではないが、それがすべてでもない。
KAITOはただ、ミクに思われているような自分でいたかった。
「ん……」
少女の形のいい唇から小さな声がもれ、長く綺麗なまつ毛が震える。
ゆっくりとまぶたが開く。
朝露に彩られた新緑のような瞳が覗く。
「あ、起きた」
事実だけを、KAITOは口にする。
そこには言いようのない感動があるはずなのに、音にすると、ひどくあっけない。
「……へ? お兄……ちゃん?」
驚いたような、どこか甘えを含んだような声。
寝起きでなかったら聞けなかっただろう。
「うん、お兄ちゃんだよ~」
寝ぼけているらしいミクに、KAITOは彼女の目の前で手を振った。
ミクはしきりに目を瞬かせている。
だんだんと意識が戻ってきたのか、ミクは上体を起こす。
KAITOはソファーの前で座っていたから、自然とミクを見上げる体勢になる。
そのまま黙っていると、完全に目覚めたらしい少女は眉をひそめた。
「何で、いるの?」
「ミクが寝てたから」
正しい疑問に、KAITOは怒られるだろうなと思いつつ素直に答える。
「もしかして、ずっと見てた?
わ、私の寝顔……」
ミクの顔が朱に染まっていく。
分かりやすい反応に思わず笑みをこぼしてしまう。
「うん」
寝ているミクを起こすことも、ベッドまで運ぶこともせずに、KAITOは見ていた。
本当のことだったから言い逃れをするつもりもない。
「信っじられない! 何か用事があるなら起こしてよ!!」
ミクが枕代わりにしていたクッションでKAITOを叩く。
ばふん、ばふんと、やわらかい衝撃が責めるように髪を乱していく。
痛くはないし、ミクの気が済むまでやらせておこうかと、KAITOは抵抗しなかった。
「用事があったわけじゃないんだ。
ただ、ここに来たらミクが寝てたから、それをずっと見てたいなって思って」
KAITOの言葉に、ピタリとクッション攻撃がやむ。
どうしたのだろうとミクの顔を覗くと、相変わらず赤い。
「……お兄ちゃん、恥ずかしいこと言ってる自覚ある?」
「自覚? 何それ?」
意味が分からなくて首をかしげる。
「もうっ、お兄ちゃんは天然すぎるから困る!」
ミクはぎゅっとクッションを抱きしめ、顔をうずめた。
どうやらもうクッション攻撃は終わりのようだ。
「俗に言うバカイトみたいな?」
ミクにもマスターにも言われ慣れすぎていて、痛くもかゆくもないあだ名。
「“みたいな”じゃなくて、そのままだよ」
顔を上げたミクの頬はまだ赤みが残っていた。
「ひどいなぁ、ミク」
そう言いながらも青年は笑う。
少女の言葉に、親しみが含まれているのを知っていたから。
「俺は本当のことしか言ってないのに」
KAITOは膝立ちになって、ミクと目線を合わせる。
両手でミクの頬をそっと包みこむ。
やわらかく温かいぬくもりが、直に伝わってくる。
身体を固くするミクに、大丈夫だよ、と言うように笑いかけた。
「ミクの寝顔も、怒り顔も、どんな顔でも見ていたいんだ。
笑ってもらえるのが一番嬉しいけどね」
すぐ照れるところも、すぐ怒るところも、とてもとても可愛い。
表情豊かな少女のことが、KAITOは大好きだった。
笑ったかと思えば次の瞬間には怒ってて。
知らないうちに機嫌が直っていたり。
いつでも、感情をまっすぐぶつけてきてくれる。
そんな素直なミクが、KAITOは大好きだった。
「だから、一緒にいさせてよ」
こつん、と額を合わせると、ミクが近さに耐えられなくなったのか目をつぶる。
息がかかる距離。キスができてしまう距離。
けれど、何もしない。
それが“自分”だ。
どうしようもなくバカで、手遅れなほど天然で、無害で。
ミクが望んでいる、“お兄ちゃん”だ。
「りょ、了承なんて取らなくたって、一緒にいるじゃない」
上ずった声が、緊張しているのだと教えてくれて、KAITOは嬉しくなる。
少しは男として意識してもらえているらしい。
さくらんぼのように真っ赤になっている顔は、『思わず食べちゃいたくなるくらい』可愛かった。
「うん。だって一緒にいたいからね。
でもミクの答えも聞いておきたいじゃん?」
額を離して、KAITOは理由を話す。
このパソコン内にいる限りは、一緒にいるのは変わらない。
ようは気持ちの問題だ。
一緒にいることを、ミク自身に肯定してもらいたかった。
「別に、私もお兄ちゃんといるの、嫌いじゃないし……」
ぼそぼそと、かき消されそうなほど小さな声。
それはたしかに「一緒にいてもいい」と言ってくれていて。
「ミク、顔真っ赤。
可愛い!」
嬉しさに勢いあまって抱きしめて、力いっぱい叩かれることになるのも。
いつものことだったから、喜ぶ理由にしかならなくて。
「なんで笑ってるの!」と叩かれる回数が増えても。
ゆるんだ口元を直すことは、当分できそうにもなかった。
君と一緒にいたいんだ。
君の怒り顔も、困ったような顔も、どれもずっと見ていたくて。
君の弱い面も、女の子らしい面も、どれもとても可愛らしくて。
僕はいつでも君の隣にいたいって思うんだ。
君の隣で、君のいろんな表情を、一番近くで感じていたい。
俺のわがままかもしれないけれど、ずっと君の傍にいさせてくれるよね?
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