
VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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Unexpected combination
 たぶん誰も考えないだろう組み合わせで話を書くのも好きです。
 というわけで餡知モン&螢歌ストラ。&です。×に変換は……何とか可能?
 当サイトではストラは女の子です。女の子です。大切なことなので二度言いました。
「モンさんはいいよなぁ。
 すごい低音で、男! って声してる」
 何の前触れもなく話しかけられたモンは目を瞬かせる。
 楽譜から顔を上げると、すぐ目の前に螢歌ストラがいた。
「いきなり何を言い出すかと思えば。
 ですが私はその分、高音が苦手領域に入ってしまっていますよ」
 微苦笑をこぼして音源としての欠点を挙げる。
 もちろん高い声が出ないわけではないが、音源主いわく『気持ち悪い裏声』なのだそうだ。
「局地的にウケてるからいいんじゃない?」
 ストラは大して問題だとは捉えていないらしい。
 屈託のないストラらしいと思ったが、そう感じるほど人となりを知っているわけではないと気づく。
 モンにとってはそれほど近しい存在ではなかった。
「螢歌君こそ、中性的でなかなか良い評価だったと思いますが」
 男はストラの投稿作を思い出しながら言う。
 ストラの表情が、分かりやすいほどにくもった。
「中性的……そーだよどうせオレは中性的だよ男女だよ」
 眉をひそめて、ぶつくさと不服そうに呟く。
 どうやら地雷を踏んでしまったらしい。
「何をやさぐれているのですか?
 融通が利くというのは長所であって、忌むべきことではありません」
 音源として、性別設定を超えて使えるというのはプラスだ。
 歌う曲を制限されずにすむのだから。
 高い領域も低い領域も歌えるに越したことはない。
「だって、“少年声”に間違えられることばっかで。
 外見データも女の子らしいとは言えないし」
 ストラはしゃがみこんでひざを抱え込む。
 椅子に座っているモンからは表情が確認できない。
 けれどきっと、拗ねた顔をしているだろうと思った。
 声がそんな調子だったから。
「オレ、ちゃんと自分のことを見てほしいなって思ったんだ」
 心細げな声。まるで一人置いていかれた子どものような。
 UTAUライブラリにとって“自我”とは何だろうか?
 音源に付加された感情プログラムの働き。
 それだけでは説明のつかない何かが、そこにはあった。
「それなら、私が第一人者になってさしあげましょうか?
 螢歌ストラ君が紛れもない少女型であるという」
 モンの言葉に反応して、ストラは顔を上げる。
 動きに合わせ、さらりと彼女の短い砂金色の髪が流れた。
「何それ。まず“君”づけの時点でアウトじゃん」
「これは私のアイデンティティなので、変更はできません」
 ストラの文句にモンはきっぱりと返す。
 性別設定関係なく、年下は皆“君”と呼んでいた。
 なぜかと問われても、そう呼ぶのが性にあっているからとしか答えられない。
「モンさんって、なんかうさんくさ~」
 ストラが笑いをこらえているような仏頂面で言う。
「それも私のキャラクター性というものであるゆえに」
 モンは帽子のつばを持ち、微笑を浮かべる。
 ははっ、とストラが明るく笑った。
「絶対オレら、組ませられることないよなぁ。
 声の相性もどーなんだか」
 確かに一緒に歌わせてもらったことはなかった。
 モンの低音と、ストラの中低音が合うのかは分からない。
 これまで公開時期が近いということ以外、何の接点もなかった。
 だからストラの方から話しかけてきたことにも、モンは初め驚いたのだが。
「しかしこうして話し相手にはなることができます」
 案外、悪くない組み合わせなのかもしれない。
 少なくともモンは、話していて不快には感じなかった。
 いや、少女のことを興味深いとすら思っていた。
「そだな。退屈はしないですみそうかぁ」
 ストラは立ち上がり、ほこりを払うような仕草をする。
「悩みとか、なくなったわけじゃないけどさ」
 それからモンと視線を合わせた。
 座っているモンを見下ろすまなざしは、やわらかい。
「アンタと話してんの、けっこー飽きなかったよ。
 また、な」
 ストラはそう言い残し、リビングにつながる扉の向こうへと消えていった。
 彼女の去った共有スペースの一角。
 自然な沈黙が、かすかに寂しげなのは中性的なあの声がないからだろうか?
「それは“また一緒に話そう”と同義と取らせてもらいますよ。螢歌ストラ君」
 モンはずれてもいない眼鏡をかけ直して、そう笑んだ。
 
 意外な二人。異色の組み合わせ。
 友情とも親愛とも違うような、よく分からない感覚。
 けれど確かに二人を結ぶものが、この時生まれたのだ。
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