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Stars beautiful tonight
流星群がありましたね。見ましたか? こだまんは見たかったのに見れませんでした(T_T)
ということで、ユズコト。コト視点。
この二人にしては珍しく、×と言ってもいい感じの話です。甘いかは……知らん(笑)
「今夜はきっと、星が綺麗ですよ」
意味深な笑みを浮かべながら、ユズは言った。
記憶が正しければ、こいつの決めゼリフだったはずだ。
……知っているのは音声ファイルをあさっていたら偶然見つけたからで、調べたりしたわけでは断じてない。
「いつも変わんないじゃん」
コトはつっけんどんに返す。
「毎日毎時間、違いますよ。
星は地球の自転によって、動いているように見えます。
季節によって見える星座も変わりますし」
「全部おんなじに見える」
放っておけばずっと続きそうな星談義をぶった切る。
コトにとっては星が姿を変えようがどうでもいい。
夜に鳴く鳥の方が、ずっと興味があった。
「コトはそうかもしれませんね」
ユズはクスッと、苦笑とも取れる笑みをこぼす。
残念に感じているのか、楽しんでいるのか、まったくもってつかめない。
「分かってるんなら、なんでさっきみたいなこと言うのさ」
コトはむっとしてつっかかる。
いつもみたくからかわれているんじゃないかと疑いたくなる。
「なんでだと思います?」
試すように、ユズは問いかけてくる。
「…………気まぐれ?」
考えても本気で分からなくて、結局ありがちな答えを出す。
ユズなら充分にありえた。
「コトらしい答えですね」
まるで予測済みだったかのように、ユズは笑みを張りつけたまま。
違和感を覚える。
いつもコトをからかうときの表情と違う気がして。
……余裕が、ないように見えて。
「ぼくは嘘は言ってません。
今回は珍しく、ね」
ユズはそれだけ言い残し、扉を閉めてしまった。
残されたコトは、
「意味、分かんない」
そう呟いて、こつんと机に額を当てた。
******
それから四時間三十八分後。深夜と呼ばれる刻限。
コトはなぜかここに来ていた。
そこには探知していたから分かっていたけれど、ユズがいた。
「やっぱり来ましたね」
コトの行動も想定内だったらしく、笑顔で迎えられた。
四季の区、月星の地。
朝でも昼でも関係なく夜空が見られる、リアルではありえない場所。
星といったら、ここしか思い浮かばなかった。
「……はめられた気がする」
あっさり天敵の手に落ちた自分を責めたくなる。
ユズがいると分かった時点で、引き返せばよかった。
星が綺麗だろうとどうでもいいと、思っていたはずなのに。
ユズの様子が気になって、来てしまったなんて。
「たまには夜の空を眺めるのも楽しいものですよ。
コトの好きな鳥は、ほとんど飛んでませんが」
私服姿のユズは珍しく、本当に嬉しそうに笑う。
話しながら歩きだしたので、コトもそれについていく。
まるではしゃいだ子どものように、夜空を見上げる瞳はキラキラしていた。
コトの知らない一面、だ。
「青空の方が綺麗」
居心地が悪くて、つい真っ向から否定するようなことを口にしてしまう。
本心だったが、言わない方がいいようなことだった。
「決めつけるにはまだ早いですよ」
ユズは自信満々といった顔で言う。
「どーだか」
コトはつい意地を張ってしまう。
夜空が嫌いなわけではない。綺麗なことも知っている。
けれどそれを素直に認められるほど、コトはできた人格者ではなかった。
さくさくと、草を踏む音だけがする。
ユズの半歩後ろを黙ってついていく自分。変な感じだ。
口を開けば悪態ばかり。喧嘩しかしたことなかった。
どうして自分はこんなところで少年と二人きりでいるんだろう?
彼といて楽しいことなんて、何もない……はずなのに。
「そろそろですね」
そう言って、ユズは立ち止まる。
ちょうど空が綺麗に見える高台に来ていたようだ。
「何が?」
コトは意味が分からず尋ねる。
「見てのお楽しみです」
ふふっと笑みを浮かべ、内緒とでも言うように人差し指を立てた。
一度空を仰いでから、ユズは草の上に座り込む。
それから何を思ったか上着を脱いで、隣に敷いた。
「お隣、どうぞ」
上着を指し示しながら、ユズは言う。
紳士のようなふるまいが、いつものユズらしくなくて、コトは途惑った。
「……汚れるよ」
寒くないのかとか、別にいいのにとか、他にも言いたいことはあった気がするけれど、口をついて出てきたのはそれだけだった。
「これくらいかまいません」
「じゃ、遠慮なく」
いいと言うなら平気なんだろうと、コトは上着の上に座る。
さっきまで着ていたからか、温もりが伝わってきて、何だか恥ずかしかった。
しかも隣との間は三十センチもない。……近い。
気にしないようにすればするほど、意識してしまって。
ぐるんぐるんと、頭の中で今の会話やら現状やらが回る。
こんなことなら上着なんて無視して、もっと離れて座ればよかった。
変に意識しているのはきっと自分だけ。
無性に腹が立って、コトは地面を軽く蹴った。
「コト、見てください!」
その言葉にコトは顔を上げる。
隣を見ればユズは空をじっと見つめていた。
自然とコトの視線も上に向かっていき、それを見た時、息を呑んだ。
一面に広がる星空。その中に――。
「わぁ……!」
輝く軌跡を残し消えていく光たち。
数え切れないほどたくさんの星が流れては、夜空に解けてゆく。
まるで宝石箱をひっくり返して、宝石が転がっていくみたいだと思った。
流れては消え、消えては流れ、視界いっぱい流れ星でうめつくされる。
「綺麗でしょう?」
うっとりと紡がれたユズの言葉に、コトはこくこくと頷くことしかできなかった。
夢のような光景だ。
流れ星を見たことがなかったコトにとっては、本当に嘘のような。
けれどたしかに星が瞬き、流れていってる。
「大型の流星群です。
十年に一度見られるかどうか、だとか」
ユズの説明に、コトは隣に目をやる。
こちらにまっすぐ向けられていた瞳と出会う。
「これ、見せるために?」
あんな意味深な言葉を言い残していったんだろうか?
「コトだけに教えたわけじゃないですよ。
皆も違う場所で見ているはずです」
四季の区の地は大抵がかなり広く作られている。
月星の地も、色々な場所から夜空が楽しめるようにと、湖があったり、趣向が凝らされていた。
「でも……ここからが一番綺麗に見えるから」
ユズはまた空を仰ぐ。
星を見るときのユズは、こんなに澄んだ瞳をしてるんだと、また一つ知った。
「特等席、なんだ」
コトは表情を和ませて、同じように空を仰いだ。
一番星が綺麗に見える場所で、誰よりも星が好きな人と見る夜空は、どれだけ輝いてるのだろう。
ひょっとしたら、自分はすごい幸運に恵まれたのかもしれない。
「コトがここに来るかは、賭けみたいなものでした。
一緒に見られてよかったです」
ユズの声には嬉しそうな色があった。
だからあのとき様子がおかしかったのか。
きっと、もし興味を持たせられなかったらと、気をもんでたのだ。
「分かりやすく教えてくれたらもっとよかったのに」
いつものように憎まれ口をたたく。
けれど空気がやわらかいから、本気で怒っているわけではないとバレてるだろう。
星はまだ流れ続けている。
一瞬のきらめきは、儚いけれどたしかにコトの胸に熱を宿す。
「素直じゃないんですよ。コトと同じで」
コトがユズを見れば、少年は苦笑を浮かべていた。
「あたしはあんたと違って素直だもん!」
言いたいことははっきり言うし、したいことだって好きなようにする。
……素直じゃないのは、ユズの前でだけ。
からかわれるせいか、いつもつっけんどんな態度を取ってしまう。
「じゃあ、綺麗な光景を見せてくれた相手に言うことは?」
ユズは誘導するようにニコリと笑う。
コトはゆっくり息を吸った。
言わなくちゃいけない言葉がある。
ユズには言ったことのない言葉だ。言うこともないと思っていた。
今、言わないでいつ言うのか。
感謝を、伝えないと。
「……あ、りが……と」
うまくは言えなかったけれど。
途切れ途切れだったけれど。
たぶん、気持ちは伝わったんだろう。
「よくできました」
彼はまぶしいくらいの笑顔を、見せてくれたから。
星が流れる時。
少年と少女は邂逅する。
星々に、見守られながら。
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