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Princess holding ~another~
テトとテッドのお話の、数分後の出来事。登場人物が多すぎてメンドイけど、一応言っときます。
轟栄一・栄二・桃音モモ・穂歌ソラ・サラ・時音タク・唄音ウタ(デフォ子)と、テトとテッド。
栄一視点で、栄二モモ・ソラサラ・タクウタ・テドテト要素あり。
……書いててウザくなりましたが、こんな感じです。
栄一は瞬きをくり返す。
リビングにいたものは誰もが一様に固まっていた。
「なんだ、皆の者。
ボクの顔に何かついているか?」
きょとん、とテトは目を丸くする。
登場の仕方に驚いているのだと、分かってはいないらしい。
「お前が動くのを面倒くさがっているから、呆れているんだろう」
一つため息をついてテッドは言う。
「君は黙っていろ!」
「はいはい、悪かった悪かった」
「思っていないだろう!」
小馬鹿にしたような笑みを浮かべているテッドに、テトはさらに睨みを効かせる。
いつもと変わらないのやり取りに、時間がやっと動き出す。
「あ、お疲れさまです、二人とも」
一番に我に返ったソラが出迎えの言葉を告げる。
「お疲れさま」
「相変わらず仲良いよね~」
「意外と早かったですね」
「どだったどだった!? 神調教!?」
それに栄一が続き、サラ、タク、栄二も遅れて会話に参加する。
ウタは頷いただけで済ませていた。
「いつも通りだ。まだ少し調整するらしい」
テッドが栄二の質問に答える。
「完成が楽しみですぅ」
モモが胸の前で手を組んで、瞳をキラキラさせて言う。
栄二がそれにうんうんと大きく頷く。
「聞いて驚け。ボクの本気だからな」
テトは誇らしげに背を反らして言うが、
「期待しないで待ってます」
「君は一言多いな!」
ソラの発言に、どこから出したのかフランスパンを投げつける。
不意打ちだったというのに、慣れているからかソラは簡単に避けてしまう。
怒らせると色々と面倒なのに……と栄一はため息をつきたくなる。
「ソラは天然だから~」
あはは、とサラが笑って言う。
栄一的には姉のサラの方が天然だと思うが、本人に自覚はないらしい。
「ではな」
事態が悪化する前にと、テッドが部屋に入っていく。
テトが何かを言っていたような気がしたが、聞き取れずにドアが閉ざされる。
それと同時に、誰のものともつかないため息が響いた。
「うわぁ、見た? モモちゃん」
「は、はいぃ。見ちゃいました、栄二さん」
栄二とモモがヒソヒソと内緒話をする。
小さな声でもこの距離なら充分聞こえてしまうのだけれど。
分かっていて、わざわざやっているのだろう。
「なんか絶対見ちゃいけないもの見ちゃったよね。
ダイジョブかな? 馬に蹴られないかな?」
首をかしげて、本当に心配そうな顔をしている。
冗談が通じないのが栄二とモモだった。
「邪魔はしてないですから、きっと……たぶん、だいじょぶです」
ぐ、と栄二の手を握り、モモは言う。
一蓮托生、だとでも言いたいのだろうか。
モモちゃん……、と栄二が感動したような声をもらす。
完全に二人の世界だ。少し寂しい。
「別に珍しいことでもないんじゃないんですか~?」
タクがのんびりとさっきまで読んでいた本に再び目を戻す。
「荷物を運ぶのと、一緒」
今まで無言だったウタが、タクの本を横から覗き込みながら、続いた。
無表情で何を考えているか分からないウタは、なぜかタクにだけは懐いている。
話す文節の長さも、表情も、タク相手だとわずかに豊かになる。
「さすがに荷物まではいかないと思うけど、確かに特別なことではなさそうでしたね」
「あたしもソラにしてもらったことあるよ!」
ソラが今見た光景を思い出すように呟けば、サラがはいは~いと手を上げて言う。
いわゆる、お姫さま抱っこ。
あまりやる機会は多くない気がするのだけれど、嘘をついている様子はない。
ソラも否定をしないということは、本当のことらしい。
「……お前も、大変だな」
思わず栄一はそうソラの肩を叩いていた。
「それほどでも」
テトに迷惑をかけられるのも、サラの世話をするのも、ソラにとってはもう習慣になってしまったのかもしれない。
同情するが、考えてみれば栄一もあまり変わらない。
モモの心配をし、栄二の起こす問題を処理し、やはりテトからも迷惑をこうむる。
自分で言うのもなんだが、苦労人なんだな、としみじみとしてしまった。
「兄ちゃん兄ちゃん、見て見て!」
弟の声に、栄一は顔を上げる。
目に入ってきたのは、モモを抱き上げている栄二だ。
背も低く、抱え方も分かっていないために、腕がふるふると震えている。
「栄二さん力持ちです~」
楽しそうにモモがはしゃぐ。
危ないからすぐに降ろしてやれ、と思うのだが、二人はノリノリだ。
「すごいすご~い!」
「がんばりますね」
サラもソラも止める気はないらしい。
タクとウタにいたっては見て見ぬふりだ。
「でもちょっと歩けないや」
へへ、と恥ずかしそうに栄二が笑う。
感覚を制御すれば、重量の方はどうにかなる。
けれど慣れないことをしているせいで、体勢がきちんとしていない。
ようは重心が安定していないのだ。
「何やってんだか……」
栄一は頭を抱えたくなる。
落ちて怪我でもしたらどうするのか。
大抵のものであればすぐに修復できるけれど、それだってマスターの手を煩わせてしまう。
「栄二さん、右手はもうちょっと上です。肩を掴むように。
腰が引けてるので、しっかりと両足に力を入れて立ってください」
見ていられなかったのか、ソラが抱き上げ方を教える。
改めて言葉にするとひどく現実的なものだ。
「ソラが偉そうに指導してる~」
面白そうにサラが茶化し、
「姉さんで慣れさせられましたから」
ソラは苦笑して応える。
二人の仲が良いのは分かっている。今に始まったことではない。
けれど何と言うか……勝手にやってろと、言いたくなるのは栄一だけだろうか。
「ああ、さっきよりはマシになったみたいですね」
「良かった」
タクとウタが本から顔を上げ、何とか形になった栄二のお姫さま抱っこを眺める。
ウタがパチパチと、手を何度か打つ。たぶん、彼女なりの褒め方だろう。
栄二もモモも満更ではなさそうだ。
真剣に悩んでいる自分が馬鹿みたいに思えてきた。
「なんかもう、疲れた……」
テトとテッドの影響は、結構大きいらしい。
それもこれもあの二人がお似合いだったからいけないんだ、と栄一はらしくもないことを思った。
王子と姫のように、きっちりと役がはまっていたから。
だから栄二が真似をするし、モモも憧れているのだ、と。
理由が分かったところで、栄一にはどうすることもできないのだけれど。
せめてリビングに入ってくる前に、降ろしておいてほしかったなぁ。
そんな、もう終わってしまったことを、ぼんやり思うのだった。
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