VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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Ilgiorno della Mimosa
遅ればせながら、UTAU一周年おめでとうございます!!
タクウタ。ほのぼの……かなぁ?
UTAU一周年をかすり気味ながら違う祝いごとの話(笑)
特別な記念日が過ぎ去ったばかりとはいえ、皆の気分はまだ高調しているようだ。
そわそわしている者。騒がしくする者。
何のことはない、UTAUライブラリたちの日常だ。
そんな、共有スペースの一角。
「ウタさん、今日も外は良い陽気ですよ」
ぼうっとしているようにも見えるウタに、タクは声をかけた。
「そうですね」
窓の外に目をやり、答える。
見れば分かる。と言いたそうに見えて、タクは忍び笑いをした。
少年が来たときと比べて、ずいぶん表情が豊かになった。
その影響を与えているのが自分なら、これほど嬉しいことはない。
「少し散歩をしに行きませんか?」
タクがそう誘うと、ウタは視線を下げて黙り込む。
イエスかノー。二つの選択肢をシミュレートしているのだろう。
どちらの方がより有意義かどうかを。
「分かりました」
イエスに軍配が上がったらしく、ウタは頷いた。
******
玄関の姿をしたフォルダの出入り口から出て、春の区の花園の地までやってきた。
その名の通りの一面の花。うもれてしまいそうなほど花びらが舞っている。
「こっちです、ウタさん」
少年はウタの手を取ってある場所を目指し先を歩く。
かろうじてある道を、脇に逸れる。
進んでいくと、背の高い木々に咲く花が目立つようになってくる。
この角を曲がれば、目的地だ。
「ミモザが……」
黄色い小さな花々が無数に咲き乱れる中、ウタは言葉をなくしたようだった。
反応は上々。印象づけることはできたようだ。
けれどそれだけでは駄目だった。
今日という日に、意味を与えなければならない。
「ブオナ、フェスタ、デラ、ドンナ」
カタカナ発音なのが恥ずかしかったが、言い慣れない定型句を告げた。
「イタリア語ですか」
音の並びから推測したらしい。
頭のいい彼女でも、さすがに訳までは分からないようだ。
「今日を祝う言葉です」
ニコリと笑って、タクは答えた。
ウタはヘッドセットに手を沿える。
検索しているのだろう。今日はそれほど大きな記念日ではないから。
「国際女性デー?」
候補が出たらしいウタは首をかしげる。
「ミモザの日と言った方が、可愛くありませんか?」
「意味は同じです」
タクが苦笑して言い換えると、ウタはきっぱりと反論する。
曖昧なものは好きではない彼女だから、記念日として定まっている方を優先したいのかもしれない。
「違いますよ。
少なくとも、僕にとっては」
タクは笑みを深くする。
「ウタさんに花を贈る口実ができます」
木々の間に隠しておいたものを、タクは取り出す。
ミモザを彼女の色のリボンで束ねた、花束。
「いつも皆のためにがんばっているウタさんに、プレゼントです」
世話になっている女性や働く女性に、感謝を込めてミモザを贈る日。
これほど彼女にぴったりな記念日もないだろう。
ウタは仮想世界に異常がないか、ひそかにデータの照合や調査をしている。
日々を暮らしていくだけなら困らない小さな誤算を、正しく直す。
同じ時を過ごす、仲間のために。
共有スペースで皆を見守るウタのまなざしは、優しい。
「……ありがとうございます」
ウタは花束を受け取り、顔を隠すようにうずめる。
かすかに見える頬が赤く染まっているのは、ただの願望だろうか。
「喜んでもらえたようで、安心しました。
実はここを探すのも少し大変だったんです」
何しろ一面のミモザの花だ。
春の区にあるか、四季の区にあるか、分からなかった。
記念日を知ってからはリラクゼーション区域をしらみつぶしに見て回ったものだ。
「そうなんですか」
申し訳なさそうにウタは眉尻を下げる。
そんな表情をさせたかったわけではないのに。
「でもウタさんのための苦労なら、いくらしたっていいんです」
そう。タクはウタのためならどんなことでもできる自信があった。
皆のためにがんばる彼女のために。
自分は何ができるだろうかと、いつも考えている。
「今日は女性のための日ですから、何かあったら言ってくださいね」
和やかな表情でタクは告げる。
「いえ。これだけで、充分です」
ウタはそう言って、花のような笑みをこぼした。
二日前にも、同じようなやり取りをした。
UTAUの、そしてウタの誕生日。
あの日も、ウタは笑ってくれた。
それだけでタクは嬉しくて仕方がなくなるのだった。
特別な日に、特別な贈り物を。
誰よりも何よりも、特別な人だからこそ。
そして返ってくる笑顔も、また特別なものの一つになる。
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