VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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If you are gone
互助会BBSで出たことわざについての話。
ヒビルナ。甘さは……薄甘? 切な目のような、そうでもないような。
「やけに元気だな、ルナ」
振り返りざまに声をかける。
ルナはこちらに向かって駆けてきていた。
兎のつけ耳がみょんみょんと揺れているのが面白い。
「ね、ね。面白いことわざ知ったの!
聞きたい? 聞きたい?」
目の前まで来たルナは、息を整えながら、それでも話しかけてくる。
運動が苦手なのだから走ってこなくてもいいだろうに。とは口にしない。
それだけ早く会いたかったのだと思えて嬉しいから。
「どちらかというと聞きたいかな」
ほうきで落ち葉を掃きながら、ヒビキは答える。
ここはリラクゼーション区域の四季の区、神霊の地。ヒビキが毎日のように通う場所。
最近はルナも掃除をしながら話すことに文句を言わなくなっていた。
頑ななヒビキに折れたのもあるだろうが、ちゃんと話を聞いていると分かってもらえたのだろう。
少なくとも、青年はそう解釈していた。
「はっきりしないなーもう」
ぶう、とルナは頬をふくらませる。
子どもみたいな表情を、美人のルナがやると不釣合いで、でも可愛い。
「ま、いいや」
けろっと、どうでもいいことのように言いのける。
「『狐死して兎泣く』ってゆーの!」
人差し指を立てて、楽しそうに知ったかを披露する。
「ヒビキが死んだらアタシ泣いちゃうよ~」
今度はえんえんと泣きまねをした。
ころころと変わる表情は見ていて飽きない。
「意味、ちゃんと調べてないだろ。
自分のための涙だぞ、それ」
「?」
ヒビキは苦笑して教えるが、よく分かっていないのかルナは首をかしげている。
兎と狐は同じ小動物で、同じ猟師の獲物だ。
猟師に捕らえられた狐を見て、今度は自分の番だろうかと嘆くこと。が正しい意味。
決して狐の死を悼んでの涙ではない。
UTAUの検索機能はVOCALOIDと比べると簡易的なものだから、思い間違いをしたのだろう。
「細かいことは気にしな~いの!」
理解できないのが面白くないのか、ルナは両手を振り上げる。
話していた内容を打ち消すかのように。
ことわざを言い出したのは彼女の方なのに、気分屋なルナらしい。
「それに、ホントにヒビキが死んだら、アタシ泣くよ?
泣いて泣いて目が溶けちゃうくらい泣いちゃうよ」
急に真面目な顔をして、ルナは言った。
どうやらいつもの冗談などではないようだ。
「おれはいつから狐になったんですかね」
しんみりとした空気をどこかにやってしまいたくて、ヒビキは笑う。
ルナには似合わない。そう思ったから。
いつもみたいに能天気に笑って、馬鹿をやって。
そういう方がルナらしい。
「茶化さないでよ~」
ルナは軽く流されたことが嫌だったのか、文句をこぼす。
真面目な話をするには、内容が重いのだが。
「まあ、データだから死ぬってことはないけど、削除される可能性はあるからな。
いくら圧縮されてて低容量とはいえ、場所取ってるわけだし」
仕方なく、話に乗る。ルナから視線を外して、落ち葉を掃きながら。
彼女にとっては聞きたくないようなことだろう。
VOCALOIDと比べるのもおかしいくらいに、UTAUのバイト数は軽い。
感覚・感情の付加プログラムの方も圧縮がうまくできているおかげで、低容量で済んでいる。
それでも邪魔だと、いらないと判断されれば、即ごみ箱行きだ。
「ヒビキはそんなにアタシを泣かせたいの?」
眉を八の字にしたルナが、ヒビキの着物の袖を引く。
話を切り出したのは彼女なのに、まるでヒビキがいじめているようだ。
掴まれていては掃除はできないと、ヒビキはほうきを傍の木に立てかけた。
「心配しなくても消えるつもりなんかないよ。
ルナを置いていくのも心配だしな」
安心させるような笑みを浮かべ、ヒビキはルナの頭をぽんぽんと軽く叩く。
自分が消えることを、考えたことがないわけではないけど。
ただのデータでしかないから。人格も感覚も感情も、作り物でしかないから。
それでも悲しむと言う者がいるなら、ヒビキは消えたくないと思う。
「なによ、それ」
「ウサギは寂しいと死んじゃうんだろ?」
冗談めかしてヒビキは言った。
ルナの兎のつけ耳が意思があるように、ぴくんと動く。
「そーだよ。だからヒビキはいなくなったりしちゃダメなんだよ」
ルナは握っていた袖から手を離して、替わりにヒビキの腕に腕を絡める。
可愛らしいわがまま。ゆるい束縛。
ヒビキにとっては、それが心地良くて。
「ちなみに知ってる?
『兎死すれば狐これを悲しむ』。
さっきのことわざの類語」
喜んでもらうために、そんなことを教える。
ルナが驚いたように顔を上げた。
「ヒビキも、アタシがいないと泣いちゃうの?」
「泣くかは分かんないけど、悲しいのは確かかな」
きっと、どうしていいか分からなくなる。
息の仕方を忘れる。声の出し方を忘れる。歌の楽しみ方を、忘れる。
それくらい、自分にとってルナは大切な存在だ。
「じゃあ、約束。
ヒビキもアタシも、どっちもいなくなったりしないって。
ずっと一緒だよって、約束しよ!」
ルナは嬉しそうな笑みをもらして、提案した。
出された小指に、自分の小指をかける。
ルナが三度縦に振って、「これでよし!」と言う。
「約束な」
ヒビキが優しく笑って告げれば、
「一生、有効だから!」
ルナは向日葵のような鮮やかな笑顔を見せた。
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暫く見てなかった間に素敵な文がいっぱい出てる…!!
そしてヒビルナGJです!
互助会から出るネタも凄いですがそれを文章にできるってやっぱり凄いですね、羨ましいです…!
ヒビルナみたいな女の子の方が男の子を困らせる(ヒビキはけっこう余裕ですが)ってパターンもかなり好きなので、これからもふいに増えてたりすると思います(^^)
互助会はネタの宝庫すぎて困ります。書ききれない……!!
私くらいの文章なら、誰にでも書けちゃうかと! でも、ありがとうございますv