VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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How to become familiar
ちょこちょこ2009年製のUTAUキャラも取り扱ってこうと思ってます。
今回は音魂屋二太郎&一姫。たぶん、ほのぼの。
中の人のブログにあったネタをちょっとだけ参考にしてます(オトダマゲット、じゃないですよ(笑))
自分とよく似通った、断続的な波長を追う。
区と区をつなぐ電子回路で、二太郎は探していた人影を見つけた。
「た、たとえデフォルトトリオの前に敗れようとも、我が志はいまだ……」
一姫は床に手とひざをつき、うなだれていた。
言っていることは相変わらず意味不明だ。
「姫よ~、まだやってるんか? 売り込み」
とりあえず声をかけると、一姫はがばっと顔を上げる。
九死に一生を得た、といった様子だ。
目には涙までためていた。
「二太!! そなたも助太刀に参ったのだな!」
確認ではなく断定形。変なところで自信家だ。
「や、いー加減あきらめろって言いにきた」
期待を裏切るようで悪い気もしたが、決めつけられてはこっちが困る。
二太郎の言葉に一姫の顔が怒気に染まっていく。
まさに百面相だ。
面白いと言ったら、さらに怒るだろうか。
「このへにゃちょこりんがぁ~!」
一姫がキッとにらみつけてくるが、慣れている青年にとっては、まったくもって怖くない。
たまにおかしな言葉を使うのも今さらだ。
「第一売り込む相手、間違えてねぇ?
普通、そういうのはマスターにやるもんだろ。
俺たちこんだけ良い音源なんです。使ってくださいって」
二太郎は見当違いな方向に力を入れている彼女に、助言をする。
ダウンロードされたばかりの一姫は、熱心に他の音源たちに挨拶回りをしていた。
だが考えなしの性格上、空回りをしてばかりのようだった。
そんなことをしているよりは、マスターに好印象を持ってもらうことの方が良いと思う。
VOCALOIDとは違い、あちらから呼ばれなければ通信もできないけれど。
少なくとも一姫がやっていることよりは確実だ。
「しれ者が!! 隣人との交流を持たずして、どう生活が成り立とうか!
万が一、村八分などということになったら……」
言いながら想像したのか、あわあわと分かりやすいほどあわて出す。
村八分とは、今は江戸の世か。
突っ込みどころが満載すぎて、二太郎は苦笑する。
「姫、姫。暴走しすぎ」
さすがにこれは止めに入らなければと思い、はっきりと指摘する。
「何を言う! 私は二太のこともおもんばかってだな――」
「姉上」
声を低くしてそう呼べば、一姫はピクリと反応を示す。
二太郎が“姉上”と言うときは、注意を促すときだ。
一姫は姉なのだからと。たとえ付属設定上だったとしても。
硬直している彼女に、青年は手を伸ばす。
「はい、よ~しよし」
頭を何度も、優しくなでてやる。
呼吸に合わせて。拍子を取るように。
「ちっとは落ち着いたか?」
うつむいていた一姫の顔を覗き込んで、朗らかに笑う。
「かたじけない、二太。
私、また突っ走ってしまった」
しょんぼりと一姫は沈んだ声をもらす。
一姫はたがが外れると、いつもにまして時代錯誤な言葉遣いになる。
普段もそれなりに古風なものだから、まだ二太郎くらいにしか区別はつかない。
「気づけたんならいーの」
ニィっと二太郎は口端を上げる。
少しきっかけを与えれば、一姫はこうやって自分で間違いを正すことができるのだ。
「少しずつ、親しんでけばいいと俺は思うぜ。
ここってかなり大所帯だし、音源増えんのだってきっと珍しくないんだろ」
二太郎は多少楽観的かもしれない見解を述べた。
現在このパソコンにダウンロードされている音源は三十を越している。
二太郎たちが来た後にも、もう二人ほど人数が増えた。
「そうかもしれぬな」
一姫は真剣な表情で頷きを返す。
「当の本人がそんなあわててても、どーしようもないっちゅーの」
「その通りかもしれない。
忠告、痛み入る」
素直に肯定し、彼女の顔に笑みが戻る。
声も明るく、完全に余裕を取り戻したらしい。
「姉上の面倒見るのなんて、慣れてるさ」
自分で言った言葉に、軽い違和感。
“慣れる”ほど、二人は時を過ごしてはいない。
ダウンロードされて半月も経ってはいないのだから。
ずっと、一緒にいたかのような感覚。
付属設定の“姉弟”という枠が、それをもたらすのだろうか。
作られたばかりの音源は、皆こんな違和感を抱えるものなのか。
考えたところで答えは出ない。
「落ち着いたところで、気を取り直して今度は轟兄弟に挨拶しに行くぞ!
二太もついてこい!!」
一姫は元気に駆け出す。
「……さっきと変わってねーし」
二太郎はがっくりとうなだれ、ため息をつく。
けれど、もしかしたら。
これが彼女なりのなじみ方なのかもしれない。と後を追いながら思った。
そうして、挨拶回りと称して皆に突撃をかます一姫と。
それを遠巻きに眺めながら、時に諌める二太郎とが、いつしか日常的な光景となり。
知らぬ内に親しみを向けられるようになるのは、近い未来の話。
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