VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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Don't know anything
一週間前の前祝いだー! と思ったけど、これ祝ってない……。
そんな感じの、ユズコト。甘さのかけらもない。珍しくコト視点です。
他のフォルダからリビングへと戻る途中、ユズに偶然会った。
帰る方向が同じだからと、こうして隣を歩いているわけだけれど。
正直、落ち着かなかった。
いつからかいを含んだ声がかかるか。いついじめられるか。
そのことでコトは頭がいっぱいだった。
「コトはツンデレなんですか?」
だからそう訊かれた時、すぐに反応することができなかった。
からかっている風ではなく、ユズの声は真剣そのものだったから。
「はぁ!?」
コトは意味が分からず顔をしかめる。
いや、ユズが意味不明なのは今に始まったことではないが。
言葉の意味が、取れなかった。
自然と、歩みを進めていた足が止まる。
「ああ、でもデレがないですよね。
じゃあツンツン?」
思いついた端から口にしているらしいユズは、また尋ねてくる。
ツンデレ。その意味は分かる。けれど。
「あんた、今度は何が言いたいわけ?」
そう、どうしてそんなことを訊くのか。何が言いたいのか、が分からない。
これもいじめの一種なのか。それともまた別の理由があるのか。
ただからかっているだけなら、無視するに限る。
たとえ、ユズが簡単にあきらめる性質でなくとも。たとえ、コトに堪え性がなくとも。
けれどいじめでないなら、話を聞くくらいはしてもいい。
それくらいの懐の深さはあるつもりだった。
「コトとツンデレの関連性について」
「そんなのない!」
即答する。これはやはりからかっているのだろうか。
何を考えているのか、掴めない。
コトにとってユズは未知の存在だった。
「断定するのはよくありませんよ。議論の余地は残しておくべきです。
反証可能性って知ってます?」
「難しい単語を持ち出して自分のペースに巻き込もうとしてるのは、とりあえず分かる」
意味の分からない言葉に、コトはそれだけを答える。
もうすでにほとんどユズのペースだけれど。
「コトも賢くなりましたね」
ユズは目を丸くしてから、笑う。
「あんたに言われても褒められてる気がしないから」
「疑心暗鬼ですか?」
「誰のせい!?」
我慢できなくなって、コトは怒鳴りつける。
せっかく、人が真面目に話を聞いてやろうとしていたというのに。
これはもう、いつもと同じだと判断してもいいだろう。
結局ユズは他人をいじめることを楽しんでいるのだ。
「もしかして、ぼくのせいだって言いたいんですか。
何でも人のせいにするのはいけませんよ」
人を小バカにしたような笑み。
これがいけない。腹が立つ原因だ。
「あ~、もぉムカつく!!」
イライラして、地団太を踏みたくなる。
子どもみたいだから実行はしないが、ユズを蹴ったり叩いたり踏みつけたり、頭の中では何度もシミュレートしていた。
暴力は悪いことだけれど、こっちだって言葉の暴力を受けている。
いっそのこと一発ぶん殴って黙らせようか。
コトがそんな不穏なことを考えていたら。
「でも、ソラさんや栄一さんなんかには、懐いてますよね。
他の皆にも喧嘩を売るようなことはしませんし」
う~んと考え込むように腕を組んで、ユズは言い出す。
「何、話続いてたの?
そりゃ、あんたみたいにいじめてこないからね」
コトはユズに視線を戻して、ぶっきらぼうに。
殴るのはひとまず先送りにした。
ソラはどんな話でも聞いてくれるし、栄一は温厚で頼りにもなる。
会うたびからかってくるユズと比べる方がおかしい。
「いじめてなんていませんよ。
ただコトで遊んでいるだけです」
ニコニコと、害のなさそうな笑顔でひどいことを言う。
「それを普通はいじめてるってゆーの!」
相手をするのも疲れてきて、投げやりにコトは返して、止まっていた足を先に進める。
人で遊ぶものではない。普通は人と遊ぶものだ。
共有スペースで、ふざけ合ったり、ゲームをしてみたり。
リビングに戻ったらモモにお茶を入れてもらおう。
そうすればこの逆立った思いも落ち着くはずだ。
「ツンデレの正しい定義が、周りにはツンツンしてるけど好きな人の前ではデレる。ということなら」
ユズが言葉を区切った。
間が、妙に居心地を悪くする。二人の間にある、距離も。
いつもは気にもしない、ちょっとした違和感。
ふっとユズが一つ息をつく。
「コトにとってぼくはその他大勢ってことになりますねぇ」
その笑みがどこか寂しそうに見えて。
その笑みがいつもとは異なるものに見えて。
そんなことない。違う。はっきりと否定できるほどコトは素直にはなれずに。
「……あたしはツンデレってことを肯定したつもりはないんだけど」
結局、遠回しにしか伝えられない。
嫌いなわけじゃない。と言葉にすることは難しいから。
会えば喧嘩ばかりしている。それが当然で。
腹は立つけど、憎んでいたり嫌悪しているわけではなくて。
曖昧な感情に名前は付けられない。
「たとえ話です。
それともコトはデレツンなんですか?」
「何それ?」
知らない単語に、ヘッドセッドに手を当て検索をかけてみるけれど、ヒットしない。
ツンデレから派生した言葉だろうか。
コトが意味を推測する前に、ユズはニッコリと笑って、
「皆にはデレデレしてるけど、好きな人の前ではツンツン」
簡潔に説明をしてくれた。
「……なっ!!」
数秒思考停止したのち、コトは顔を真っ赤に染める。
それではユズが好きだということになってしまうではないか。
ありえない。そんなこと。どうしてそうなるのかも分からない。混乱した頭は処理能力を低下させる。
「んなわけないでしょ、バカーー!!!」
とりあえず言いたいことだけを言って、コトは全速力で共用スペースまで走っていった。
だからユズがその時どんな表情をしていたのか。
「デレツンだったら、良かったんだけどなぁ」
そんな一言をこぼしていたことも、知らなかった。
あいつはいつでも突然だ。
あたしはそれを知ってるから、気をつけてはいるんだけど。
今日もあたしはあいつの被害者になる。
あいつがどんな思いであたしをからかっているのかも、よく考えもしないで。
今日もあたしはあいつの被害者になってしまうんだ。
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