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11・君もいつかは知るだろう
『愛しい君と過ごす日々で50のお題』 11・君もいつかは知るだろう(重音テッド×重音テト)
配布元:原生地
先ほどから、ずっと。
あからさまな視線を感じる。
テッドはあきらめて、読んでいた本を閉じた。
「テト。話があるなら聞いてやるから、そうじっと見るな」
振り向けば、血のようなくりっとした瞳がテッドを凝視している。
「恋とはどんなものだ?」
告げられた言葉は問いの形をしていて。
一瞬、意味を取りかねる。
「……いきなり何だ?」
テッドは思わず眉をひそめた。
「恋の歌はやはり多いだろう。
ボクは知らないが、テッドなら知っているんじゃないかと思ってな」
テッドを見る瞳には、疑問に答えてほしいという欲求しか映っていない。
駆け引きも、下心も何もなく。ただ純粋に、気になっているのだろう。
歌が苦手なくせに、歌に縛られる。
UTAUシンガーらしい興味の持ち方に、テッドはため息をついた。
「興味本位で人に訊くことじゃないぞ」
「訊かれたら素直に答えるものだぞ」
どちらも一歩も引かない。
感情的なテトと論理的なテッド。まったく違う二人だけれど、強情なところは似ているようだ。
「答える義理はないな」
頬杖をついて、テッドは本を机に投げ置いた。
バサッと小さくはない音がする。それすらも彼女の機嫌を損ねる要因になったようで、テトは頬をむくれさせる。
「君は本当にバカだなぁ。
黙秘が許されると思っているのか?」
「許す権利すらお前にはない」
テッドが嘲笑を浮かべると、テトは腹が立ったのか思いきり顔をしかめる。
「ボクの言うことを聞かないのか!?」
テトは癇癪を起こす。
自分の思うようにならないことなんてないとでも思っているかのような、言葉。
あまりにも幼い。あまりにも、世界を知らない。
許されるわがままは、子どもの些細なものだけだ。設定年齢が高いテトには、子どもの特権は使えない。
「何でも思い通りになると思うな」
テッドは、甘やかさない。
それがテトのためだと分かっているから。
冷たい言葉に聞こえるだろう。実際、突き放しているのだから。
けれどテッドなりの優しさでもあった。
「……テッドは意地悪だ」
テトはうつむいて、ポツリとこぼす。
納得が行かないのだろう。悔しそうな顔をしている。
「自覚済みだ」
優しい言い方ができないのは、テッドには向いていないからだ。
そんなものは、モモや栄一にでも任せておけばいい。
今さら直す気なんてまったくない。これが自分なのだと納得している。
「教えてくれてもいいじゃないか。
減るものでもないだろう」
恨みがましそうにテトはテッドを睨む。
テトは何も分かっていない。
そんな簡単な問題ではないのだ。恋というのは、厄介なものなのだ。
想いを消したいと望んでしまうほど、つらく苦しいものなのだ。
「お前もいつか、分かる日が来る」
そう言葉にしたのは、なぜだったのか。
あるいは願いだったのかもしれない。
少女に気づいてもらいたくて。けれど言葉にはできなくて。
胸に覚える熱い痛み。
秘めている想いが、うずく。
熱が体中を駆け巡るような感覚。眩暈さえ覚える。
「それはいつだ?」
テトは首をかしげる。
「いつか、だ」
テッドはくり返す。
知らないままの方が楽だろう。
けれど、知ってほしいと思う気持ちは止められない。
甘い痛みを。苦しい熱を。
知ってしまったら、後戻りはできない。
どれだけつらいものなのか、充分思い知らされていても。
少女にもそれを望んでしまう。
「ボクは今すぐ知りたいんだ」
純粋な興味だけしか映っていない瞳から、目をそらして。
「そんな、良いものでもないさ」
熱い吐息と共にそう言うことしか、テッドにはできなかった。
口は達者なくせに、気位ばかり高くて、甘え方はド下手くそで。
お前の方こそ馬鹿だと思わず言いたくなるが。
いつかは、知ることになるんだろう。
俺の悩みの種である、厄介で捨てることのできない感情を。
お前もいつか、誰かに、抱えることになるんだろう。
それが俺だったらいい。なんて、思うことくらいは、許してくれ。
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