VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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3・君とたくさん話したい
『愛しい君と過ごす日々で50のお題』 3・君とたくさん話したい(時音タク×唄音ウタ)
配布元:原生地
「ウタさん、この歌なんですが」
僕は今日もウタさんに話しかける。
何かと理由を見つけては、こうやって彼女の部屋に来る。
「囁くような途中の語りが特徴的ですよね。
そのことで、ウタさんの意見を聞きたいんです」
意見を聞く。一見それらしい言葉に聞こえるけれど、下心はあります。
「何でしょう」
ウタさんは話しかけるたび、返事をしてくれる。
それがどれだけ嬉しいことなのか、この人は分かっているのかな?
思わず口元には笑みが浮かぶ。
「UTAUはVOCALOIDのように、Brightnessがありません。
この場合、単純に音量を下げるしかないと思うんですが、ウタさんはどうですか?」
ウタさんがこういった論題を好きだと知っていて、問いかける。
自身がUTAUだからといって、UTAUを知り尽くしているわけじゃない。
あくまで“歌わせてもらう”ソフト。しかも自分たちは音源データに付加されたプログラムでしかない。
もっと上手に歌うための議論は、日常のようにしている。
「間違ってはいないと思います。
あとは、エンベローブの最初を低めにするという方法もありますが。
元々がウィスパー系の音源であれば、それだけで囁き声に聞こえるのではないでしょうか」
「一理ありますね。
他の手として、UTAUからは離れてしまいますが、音声を加工することもできますね」
「その前に原音設定があります」
いつもより音節を長くつなげて話すウタさんを、僕はじっと見つめる。
自慢の処理能力を発揮している姿は、輝いて見えた。
「ああ、あとプロパティでBRE値とH/h値がありましたね。
それらを組み合わたらどうなるのか、気になってきました」
思い出したように、玄人向けの数値を口にする。
僕たちのマスターは一度も使ったことがないものだ。
「音源次第でだいぶ勝手は変わるでしょうが、できなくはないと思います」
はっきりと、ウタさんは言った。
ウタさんが可能性の話をするとは珍しい。
それだけ議論が楽しいんだろうな。
「確かに。UTAUでもこういう声は不可能ではないかもしれません」
「そうですね」
僕の肯定にウタさんも頷いて、沈黙が落ちる。
この話題はもう終わりになりそうだと寂しく思った。
また何か見つけてこないと。
そんな、思惑をウタさんは知らないだろう。
「――タクは、どんなことでも私にまず聞きますね」
珍しくウタさんの方から発言する。
尋ねているというよりは、確認。
ウタさんもそれくらいは分かっていたらしい。
過去の僕の行動パターンから分析したのかな?
“情報”が何より好きなウタさんだから。
「そうでしょうね。自覚はあります」
本当のことだったから、正直に認めた。
ウタさんが眉をひそめる。
あ、訳が分からないって顔だ。
無表情のようで分かりやすいウタさん。大抵の感情なら読み取れる。
「どうしてなのか、気になりますか?」
僕は意地悪な質問をする。
ウタさんは“知らないこと”があるのが嫌いだ。
どんな情報でも、記憶して記録しておきたいらしい。
だから返ってくる答えは必ず『是』。
その通りで、ウタさんは迷うことなくこくんと頷いた。
「ウタさんと、話していたいからです。
ウタさんの声が聴きたい。ウタさんの言葉で聴きたい。
ウタさんの声が好きだから。ウタさんのことが好きだから。ですよ」
これ以上ないくらいの笑顔で、言ってあげる。
我ながらよくこんなすらすら言葉が出てくるなと思うけれど。
全部、本心だ。
はっきり言葉にしないと、ウタさんには伝わらない。
だから僕は、何度だって言います。
あなたのことが好きです、ウタさん。
「……そう、ですか」
ウタさんは困ったような表情をした後、うつむいた。
その頬が赤く染まっているように見えたのは、僕の気のせいですか?
「照れました?」
くすっと笑みをこぼして、訊く。
ユズ君の、好きな子をいじめたくなる気持ちが、少しだけ分かってしまう。
ウタさんのこんな顔が見れるのは、僕だけだろうから。
「少しだけ」
素直なウタさんはそう答えて。
僕は嬉しくて笑った。
あなたとたくさん、どんなことでも話したい。
僕はいつもそう思っている。
必要なこと意外、言葉にしようとしないあなただから。
それでも話しかけると、きちんと答えてくれるから。
だから、ねえ。もっともっと、ウタさんの声を聞かせてください。
ウタさんの音で、ウタさんの言葉で、僕に応えてください。
やっぱり僕は、あなたと話す時が好きなんです。
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