なぜかネタが降ってわいたので、置き逃げしていきます。SSSです。
キノイト と モモイト
モモイトが、隣にずっと座っていた。
ちょこんとアヒル座りで。
キノイトが移動しても、その後をテトテトとついてきて、また隣に座る。
頭三つ分は小さいモモイトは、なぜか自分に懐いていた。
「キノ、どこいく?」
特に用事があるわけではないけれど、隣にいられても気になるからと歩き出す。
するとやはり、モモイトが後をついてくる。
「着いてこないでほしいのですー」
ぷいっと、モモイトの方を見ないように先に進む。
マスターは最近忙しくて、あまり歌わせてくれていない。
それでも自分で歌を歌うだけで楽しいし、新たな発見もある。
一人で練習室に向かおうと決めた。
……といっても、どうせモモイトはついてくるのだろうけれど。
「ふんふんふーん♪」
一曲歌い終わった後、音の外れた鼻歌が耳に入ってきた。
見ると、アイスを食べるでもなく、掘っている。
意味が分からない。
「何やってるのですかー?」
どうしても気になって、訊いてみる。
するとモモイトは声をかけられたのが嬉しいのか、ぱあっと満面の笑顔になる。
「ももふやすの!」
そういえば、自分たちはアイスやらに植えられて生まれたという設定があったのだった。
実際にはKAITO種が変質したものなので、種などはないのだけれど。
モモイトはそう信じているのか、熱心にアイスに何かを植えようとしていた。
チョコアイスだから、生まれるとしたらチョコイトだろうか。
そんなことを何の気なしに思った。
「ここでやることなのですかー?」
わざわざ、自分の隣で。
どうして懐かれているのか分からない。
可愛がってくれる存在は他にもたくさんいるのに。
マスターを筆頭に、MEIKOやらミクやら。遊び友だちならリンやレンもいる。
「キノのとなりだとげんきなこになるの」
嬉しそうな、ほんわりとした表情で、モモイトは言った。
答えになっていない答えだ。
モモイトの中ではそれで筋が通っているらしい。
つくづく不思議っ子だ、と思う。
「意味分からないですよー」
そう言いながらも、キノイトは笑みをこぼしていた。
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