VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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My name, Your smile
相変わらずカップリング未満な気のするリンレン。
でもいつもより糖度は高いかも。
カイミクで以前やったネタの、再利用。が、全然違う話になりました。
「んだよ?」
七度目の問いを、振り返らずに口にする。
「呼んだだけ♪」
そして七度目の答えを、また返された。
さっきからずっと、リンは意味もなく名前を呼ぶのだ。
「……用もないのに呼ぶな」
不機嫌を隠しもしない声で言った。
「はぁい」
気のない返事。レンは思わずため息をついた。
言っても聞かないのがリンだった。
そう知ってはいても、繰り返される無意味な会話に困ってしまう。
嫌、というのとは違う。
どうしていいのか、何を望んでいるのか、読めないから。
流れ込んでくる感情はまどろみのときのような穏やかな心地だけで。
分からない。と頭を抱えたくなる。
目を通している楽譜も一向に頭に入ってこなかった。
「ねえ、レン」
三分後、またリンの声が名を紡ぐ。
少年は聞こえていないと自己暗示をかけ、無視を決め込んだ。
「レーンレンレンレン」
「オレは犬じゃねぇ!!」
返事がないのをいいことにエスカレートする悪戯に、つい声を荒げてしまう。
背中を離して振り返ると、リンは変わらず笑顔だった。
「きゃー、レンが怒った~☆」
コワ~イ♪ と全然怖くはなさそうにはしゃぐ。
「……遊ぶなよ。オレで」
疲れた。疲労を感じないVOCALOIDでも気疲れはする。
はあ、とさっきよりも思いため息をつく。
「レンで遊んでなんかないよ?
レンと遊びたいんだもん!」
ほんの少しの言葉の違い。けれど意味はだいぶ異なる。
少女はそのつもりでも、少年は遊ばれているようにしか思えなかった。
ニコニコ笑っているリンの顔と、仏頂面のレン。
その対照的な表情のせいだ。
「リンは、レンって呼ぶの好き!」
嬉しそうな、笑顔。明るく朗らかな声。
好きだと。全身で表しているようだった。
レン自身が好きだと言われたわけでもないのに、顔に熱が集まっていく。
「んでだよ」
視線をそらして尋ねる。
恥ずかしげもなく大っぴらなリンを見ていると、恥ずかしがっているこちらが馬鹿みたいに思えた。
「だって、そこにレンがいるってことだもん。
レンがどこにもいなかったら、『レン』って呼んでも意味ないでしょ?」
言いたいことが伝わって、レンは納得した。
孤独を知る少女の、対処法なのだろう。
どんなに呼んでも姿を現さない奴を呼び続けていても、寂しくなるだけだ。
少年が傍にいることを知っているから、名を呼べる。
絶対に答えてくれる、自分とよく似た声があることを分かっているから。
「……オレも」
「ほへ?」
目を合わせて話し出すレンに、リンが間抜けな声を漏らした。
「オレも、リンって呼ぶの……嫌いじゃない」
ぼそっと、VOCALOIDでなければ聞き取れないような小さな声で告げる。
今度呼ばれたら、何度目だろうと返事をしよう。
レンはそう、心に決めた。
リンに呼ばれるのもリンを呼ぶのも、言葉にはできないけれど確かに好きだから。
ちゃんと近くにいるのだと、認識できるように。
寂しがり屋な少女を独りぼっちにさせないために。
いつだって、そうだ。
こちらは調子を狂わされっぱなしで。
少女は変わらず快活で、大胆で、自分勝手で。
それでもリンのためなら苦労も苦労と感じないし、迷惑はかけてほしい。
自分がいる理由も、価値も、意義も。
すべてリンのためにあればいいと思う。
たとえば『レン』という名前が、リンに呼ばれるためにあるように。
「良かった!」
リンは花のような朗らかな笑みをこぼした。
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