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しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

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Mysterious

 新年一本目が亜種って言うのもどうなんだろう。しかもすごくマイナー……。
 ということで、がくリンでも。ちょっと自覚編、みたいな。






Mysterious




 不思議なことは、数え切れないほどあった。
 数え切れない、という単位があること自体が、不思議だ。
 つまりは計算で出ない数、ということなのだから。

 マスターも、不思議の一つだ。
 VOCALOIDにまるで人のように接する。
 それを当然のように受け入れている他のVOCALOIDも、やはり不思議で。
 最たる不思議は――今、自分の膝を占領している、CV2-鏡音リンだった。



 いきなり、彼女はやってきた。
 膝を貸して! と、そう開口一番に。
 断れば良かったのだろうけれど、なぜか神威はこの少女の“お願い”に弱かった。
 髪の毛いじらせて、その服着させて、肩車して、など様々だ。
 どれ一つとして、断れたためしがなかった。
 硝子玉のような明々と輝く瞳に、否と言えるはずがなかった。

「リン殿はなぜ我を“兄”と呼ぶ?」
 己の膝に座り、髪の一房をもてあそんでいる少女に、不思議の一つを問う。
 自身は他社のVOCALOID。
 彼らが仮想家族であるのであれば、良くて親戚だ。
「ん~、嫌?」
 三つ編みがうまくいかなかったのか、一度解いてまたやり直す。
 やめる気はなさそうだと思い、ため息をついた。
「そうではないが、やはり製造元が違うのでは、兄ではないのではと」
「だって」
 言い募る神威をリンの癖の強い高音がさえぎる。
「だってさ、メイ姉にはマスターいるじゃん?
 ミク姉にもカイ兄がいるの。
 で、リンにはレンがいるんだよ」
 いきなり何の話を、とは思ったが、男は口を挟まない。
 確かに、彼らは共に支え合い、補い合っている。
 特にリンとレンは同じソフトであるのも手伝って、まるで半身のように。

「がく兄は?」
 急に尋ねられ、眉をひそめる。
 支え合う相手はいるのかと、そう訊いているのだろう。
 いる、と答えられるはずがなかった。
 単体で販売され、買われた己に、そんな存在など。
「がく兄には、誰かいた? 誰かいる? だぁれもいないジャン」
 現実を突きつけられたようだった。
 揺らぎはしない。当然のことだったから。
 一人を寂しいと思えるほど、感情プログラムは育っていなかった。
「我は、別にそれで寂しくなどは……」
「リンがヤなの!
 一人は嫌なこと、ダメなこと。
 がく兄は一人でいちゃダメなの」
 また神威の言葉の途中で、声が重なる。
 リンは人の話を聞かない。
 いや、聞きたくないことを聞かないように、無意識に言葉を発しているのだろう。
 意思とは関係なく懐かれていた彼は、少女の性格を大体は把握していた。

「がく兄にはリンがいるって、そういうことにしたの」
 自己満足だ。そう言えば、リンは怒るだろう。
 彼女なりの気遣いだと、分かっていた。
 分かったから、神威は微笑みを浮かべた。
 素直に嬉しいと思ったから。まっすぐで、純真な優しさが。
「それで、兄と呼んでくれているのだな」
「家族じゃなくても、家族みたいにはできるでしょ。
 リンたちだって血がつながってるわけじゃないんだもん。だから一緒」
 何の根拠もなしに少女はきっぱりと言い切る。
 思いきりのいい彼女らしい言葉に、さすがに驚いてしまう。
 会社が違う。人で言えば、親が違う。
 それを、同じ人間だから一緒だと言ったようなものだ。

「がく兄も、一緒だよ。一人は誰もいないの」

 当たり前のことのように、好き勝手に決めてしまう。
 皆が“一緒”でなければ、駄目なのだろう。
 誰も欠けていてはいけないのだろう。
 彼女のわがままは、どこか温かく心地好かった。
「リン殿がいてくれたおかげであろうな。
 ありがたく思っている」
 この少女が、一番に皆の中に迎え入れてくれた。
 途惑う神威の手を取って、無理やりに、力いっぱい、仲間にしてくれた。
 ここまで彼らと打ち解けることができたのは、リンのおかげだろう。
「リンは何にもしてないよ?」
 ほえ? と、何も分かってない少女は首をかしげる。
 可愛らしいしぐさに自然と笑みがこぼれた。
「そこがリン殿の良いところなのであろう」
「がく兄はたまにムズイこと言うよねぇ」
 むう、と頬をふくらませる。
 まるで分かっていないようでリンは考え込むが、無意識的なものを理解などできないだろう。
 意図することなく、それを成してしまうところが彼女の美点なのだから。
「分からなくても良いのだ。我が分かってさえおれば」
 はは、と笑って頭をなでてやれば、納得していない声が聞こえる。
「むぅ~。それはちょっとムカチンだよっ!」
「リン殿は元気だな」
「そーやってごまかすしぃ!」
 何気ない、本当に他愛のないやり取りが、どうしようもなく愛しいと感じる。
 これも、不思議の一つだった。



 いつか分かる日が来るだろうか。
 少女との日常を、得がたいものだと感じるこの思いの理由を。
 不思議は、感情プログラムが育つのに合わせ、だんだんと増えてゆく。
 それがまた不思議で、けれど大切なことのような気がして。
 男はまた一つ、不思議を抱える。

 言葉にできない、温かな感情と共に。





リンががっくんを兄と呼ぶ理由。人称を決めたときから書こうと思ってたネタです。
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