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みくちゃんのゆめ
お久しぶりなちびミクと青年KAITO。
ミクの外見・精神年齢は8、9歳くらい?
てとてとと、ツインテールを揺らしてミクが駆けてくる。
両手で抱えるようにして持っているのは、子供向けの絵本のようだ。
「おにーちゃん、ご本読んで!」
予想していた言葉にKAITOは思わず苦笑してしまう。
「はいはい、今日は何かな?」
膝に座るよう促し、何冊も手にしている本に目をやる。
アンデルセンやグリム童話から、日本の昔話まで揃っていた。
ミクは本を隣に置き、その中から一冊だけ取り出す。
「白雪姫!!」
黒髪が綺麗な女の子と小人の表紙。
何度か読んだ記憶のある本に、青年は笑みをこぼした。
「ミクはそのご本がお気に入りなんだね」
興味が移り変わりやすいミクが何度も選ぶ本は、それだけ好きだということ。
少女の分かりやすい好き嫌いを、KAITOはたくさん覚えていた。
ちょっとでも機嫌を損ねることがないよう。いつも笑顔でいられるよう。
やりすぎと言ってもいいくらい気を配っているのだ。
「これだけじゃないもん!
シンデレラも、眠り姫も、美女と野獣も、それから……」
短い指を折って、お気に入りを挙げていく。
多少の違いはあれど、王子様やお姫様が出てくる話が好みのようだ。
「たくさん好きなご本があるんだね」
「うん!! 大好き♪」
宝物を見せびらかすように楽しそうに言う。
どうでもいいことで喜び、小さな幸せを見つけては花のように笑う。
天真爛漫なミクを見ていると、自分も同じような綺麗な心を持っているように思えてくる。
無垢で、無邪気で、わがままで、気まぐれで。
振り回され、心身共に疲れを感じながらも、どこか幸せだと思っている。
幼さゆえの澄んだ瞳に映る自分はいつも優しい表情をしていた。
「みくね、みくね、おっきな夢があるの」
じーっと、長い間KAITOを見上げていたミクが、ふいに話し出した。
大きさを表したいのか、腕で大きな円を描く。
その様子が可愛らしくて、青年は笑みを深くする。
「どんな夢?」
優しく問い返すと、少女は破顔した。
「おにーちゃんのお姫さま!」
予想外の言葉に、数秒固まってしまう。
絵本を読もうとしていたことを考えれば、唐突ではないのだろうけれど。
確かにミクの好きな本は王子や姫が出てくるものばかりだったけれど。
「……僕、の?」
やっと出た声は少し間抜けなものだった。
「うん! いつかみくがステキなレディになったら、お兄ちゃんのお姫さまにしてもらうの♪」
両手を頬にあてて、夢見がちに語る。
冗談を言っているようには見えないし、そもそもミクは嘘がつけない性格だ。
幼い子どもが持つ夢ではありがちなもの。
と、ようやく理解してKAITOは次の言葉を考える。
「お姫さま、か」
ミクが望むなら、お姫様にでも何でもしてあげたい。
そう思うのは兄として当然のことだ。
可愛い妹の願いを叶える方法は、今回に限ればとても簡単なことだった。
「じゃあ、エスコートの仕方を覚えないといけないね、僕の小さなお姫さま」
本を持っていない方の、小さく柔らかな手を取る。
そっと手の甲にキスをすれば、ミクの歓声が上がった。
「おにーちゃん、王子さまみたい!!」
キャッキャとご機嫌の少女に、青年も穏やかな笑みを浮かべた。
少女が喜んでくれるのならいつだって、王子役でも何だってできる。
可愛い願望を叶えることが、彼の願いなのだから。
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