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In the dark -development- Kaito side
カイミク連載続き。
……本編がシリアスなので、雰囲気を壊さないようコメントに困ります(笑)
青年は今日もまた歌を歌う。
時からも置き去りにされた永遠の闇の中では、一日という観念すらもなかったけれど。
意識がある間はほとんど歌って過ごしていた。
いつからか、少女の声が混じるようになってからは、特に。
歌声が届いた。それが泣きたいくらい嬉しかった。
いくら歌っても、無駄かもしれないと思ったこともあった。
彼女に届いているかどうか分からずに、不安で仕方がなくて。
それでもあきらめたら最後だと、青年は歌い続けた。
始めは気のせいかと思うほど遠く、かすかな音。
次第にそれが彼女の歌声なのだと確信していった。
声が合わさるひとときが、二人をつなぐ絆のような気がした。
どこにいるか、どんな気持ちでいるか。
何一つ知ることはできない。
けれど時折重なる声だけで、自分は希望を忘れずにいられる。
独りではないと、思うことができた。
また、青年のものよりも高く澄んだ声が、同じ音階をなぞる。
声はやはり遠くて、耳を澄ませても途切れ途切れにしか聞こえてこない。
もっと、しっかり声を合わせて歌いたい。
会って、二人で何を歌うか話して決めたり、一緒に笑ったり、触れ合ったりしたい。
願いは彼女の声が聞こえるたびに募っていく。
会いたい。話したい。姿を見たい。声を聞きたい。共に歌いたい。
激しいまでの感情。
彼女も同じように思ってくれているだろうか?
そうだったら、いい。そうであってほしい。
あきらめと絶望だけに占領されていた心の中に、彼女の存在が希望をもたらした。
0とマイナスしかなかった自分には抱えきれないほどの思い。
熱に浮かされるように、少女のことだけを考えた。
だんだん声が聞こえる間隔が開いていく。
それは、この不安定な斉唱の終わりを意味する。
やがて完全に澄んだ音は消えてなくなった。
青年も歌をやめると、辺りは無音と暗闇の世界に元通りとなる。
満たされた時間はあっという間だ。
こんなとき、一緒にいれば、好きなだけ歌えるのに。
好きなだけ話して、好きなだけ触れて。
泣きたくなる。
今、彼女は目の前にいないから。
会いたい会いたい。会いたい!
「さが、そう」
声に出して言ってみると、急に現実味を帯びてくる。
“ここ”から動くというのは、とても勇気のいることだけれど。
探そう。どれほど無謀なことだとしても。
彼女が青年の希望で、闇を照らす光で、心を彩る音だ。
会いたいと、一目見たいと、願うだけでは始まらないから。
青年は捉えた少女の波形を追って、暗闇の中、一歩を踏み出した。
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