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Takes a nap
ヒビルナ。定期的に書かないといけない病にかかっているような気がします。
ほのぼのの皮をかぶった何かです。……本当に何なんだろう?
「ヒビキは、お掃除好きだよね~」
ルナがそんなことを言い出す。
たわいのない会話の延長だ。
ヒビキは竹ぼうきの上で腕を組み、景色を見回す。
小じんまりとした神社と、ざわめく木々。どこまでも続いているように思える石畳を。
「掃除が好きって言うより、ここの空気が好きなんだよ。
だから意味がなくても掃除するんだ。
モモと似たようなもんだね」
いつもリビングなど共有スペースを掃除しているモモ。
共有スペース内も、リラクゼーション区域と同じで定期的に自動修復される。
汚しても、数日放っておけば元通りだ。
掃除をするのは、その場所が好きだから。少しの間だけでも荒れているのが嫌だから。
神霊の地はヒビキのお気に入りの場所だった。
初めてここに来た時、自分に欠けていたものを見つけたような、そんな感覚がした。
暇さえあれば通っている。固執している、と言ってもいいほど。
「アタシには分かんないな。面倒くさいし」
ルナはどこか寂しげに、息をつく。
まるで理解できないことが悪いことのように。
そうした何気ない態度が嬉しくて、ヒビキは笑みをこぼす。
「ルナは体動かすの嫌いだって設定だもんな」
しかもユーザーが気軽に作れる付属設定ではなく、基本設定で。
今も社の縁側に座り込み、壁にもたれかかっている。
運動は苦手なのによくはしゃぎ回っているのは、おかしなものだけれど。
「そーだよ。だからお昼寝とか大好き!」
知っていてもらえたのが嬉しかったのか、単に好きな話題に変わったからか、ルナが笑顔になる。
素直に可愛いと思う気持ちと、複雑な気持ちとが青年の中に生まれた。
「風邪引く心配はないから、どこで寝てても文句は言えないけどさ。
あんまり無防備すぎるのも困りもんだな」
ただのデータでしかない自分たちが病気にかかることはない。心配しているのはそんなことではなく。
どこまでも無邪気で無知なのがルナらしいところで、長所で短所で。
ヒビキは振り回される。良い意味でも悪い意味でも。
「どういうこと?」
ルナは不思議そうに首をかしげる。
「それくらいは自分で考えなさい」
くしゃりとルナの頭をなで、答えた。
分からないことをすぐ人に訊くのは、彼女の悪い癖だ。
少しは自分で考えるということを覚えるべきだろう。
「ヒビキのケチ~!」
拗ねたような声を背に受け、ヒビキは掃除を再開する。
秋色に染まった枯れ葉はとどまることなくひらひらと無数に落ちる。
数分放っておくだけで、さっきはいたところにまた落ち葉がつのっていく。
意味がないことだと、言われずとも分かっている。
それでもやめられない。やめようという気が起きない。
「あ~でも、ここの空気が好きってのは分かるかも」
ルナが嬉しそうにまた話し始める。
この明るい声を聞きながらの掃除が一番好きだと、気づいたのはいつだったか。
知らないうちに温かな想いは大きくなっていた。
「日差しが気持ち良くって、お昼寝に最適……」
ルナの声がだんだん小さく、ゆっくりになっていく。
「まさかここで寝たり……するよね、ルナなら」
あわてて振り返ったときには、もう遅かった。
すやすやと心地良さそうに寝ていたルナに、ヒビキはがっくりとうなだれる。
なんともマイペースな少女らしい。
「ルナ。ルーナー」
試しに名前を呼んでみるが、反応はない。
完全に寝入ってしまったらしい。
「まったく、おれも一応男性型なんだけどな」
人間のように生殖本能はなくても、性欲のようなものはある。
たとえ人の真似事にすぎない行為だろうと、興味がまったくない男性型は少ないとヒビキは判断している。
投げ出された綺麗な足。寝息を立てるやわらかそうな唇。
こんな風に、魅力的な女性の姿を前にして。
揺らがない者がいようか。
「これだから無防備だって言うんだよ。
本人に自覚がないからどうしようもないな」
ヒビキは邪念を払うように首を振り、ため息をつく。
狩衣を脱いで、そっと少女の肩からかけてやる。
掃除を続ける気も失せてしまい、ルナの隣に腰掛けた。
「おれ以外の男の前では、寝たりするなよ」
囁くように小さな声でそうこぼす。
皆、良い人たちばかりなのは知っているけれど。
万一のことがあったらと思うと、気が気ではない。
「って、今言ってもしょうがないんだけど」
ヒビキは苦笑して、ルナと同じように壁に背を預ける。
いつも少女が見ている目線。いつも少女が見ている景色。
その中で掃除をしている青年は、彼女にはどう映っているのだろうか。
同じことを繰り返し、話し相手として適切ではない自分は。
少女にどれだけ寂しい思いをさせているのだろうか。
思考にふけっていた彼を現実に引き戻したのは、体勢をくずしたルナだった。
「……っとと。危ないなぁ」
ヒビキの方に倒れてきたルナを受け止め、そのまま自分の足の上に横たえさせる。
少なくとも壁よりは安定感もあるだろう。
ずれた狩衣もかけ直してやった。
「まあ、昼寝もたまには良いかな」
秋といっても木枯らしは弱く、ルナが言ったように日差しが暖かい。
たまには、こんな日があってもいいかもしれない。
掃除の途中で、二人で昼寝。
怒るような者も邪魔をするような者もいない。
ヒビキはそっと目を閉じる。
まぶたの裏で、ルナがしてやったりと笑っているような、そんな気がした。
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