VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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Chemical change
SNSでのあしあとリクの品。転載許可もらってきました。
クウ視点。一姫・ストラ・二太郎との、……ほのぼの? 一月組良いですね!
某眼鏡とか某バーテンダーとかが視界の端をちらちらしてます(笑)
「クウ! クウ~!!」
今日もまた、爆弾を抱えている中の一人の声がする。
それは明らかに自分を呼んでいて。
クウは軽くため息をつき、データを保存して作業を中断した。
半透明モニターも消せば、働いていたことを示すものは何もない。
彼女が来たら仕事なんてできやしないのだ。
バンッと音を響かせ、クウの部屋のドアが開かれる。
そこには瞳を輝かせた一姫と、なぜか手を引かれているストラがいた。
「そんなに呼ばなくても聞こえてるわ」
頬杖をついて、クウは苦笑して答える。
一姫の声は距離を考えていない大きさだった。
きっと自分と同じように苦笑している者が少なからずいるはずだ。
「やったぞクウ!
ストラともお友だちになったのだ!」
一姫はにこやかに語りながら、クウの部屋に入ってくる。
「ちょ……一姫さん!」
ストラが困惑したようなあわてたような声で一姫を呼ぶ。
たぶん問答無用で引っ張ってこられたのだろう。
「なんだまだ照れておるのか?
呼び捨てでかまわぬと言ったであろう」
「だってオレ年下だし……じゃなくて!
なんで触れ回ってんのさ!?」
うっかり一姫のペースに乗せられるところだったストラは、何とか疑問を口にする。
ストラの様子から察するに、クウのところに来るまでに何人かに報告されているようだ。
自身もいる前で『友だちになった』とわざわざ語られるのは、相当恥ずかしかったに違いない。
「嬉しいからに決まっておろう」
当然とばかりに一姫は断言する。
彼女らしい理由すぎて、クウは少し笑ってしまった。
「だからってはしゃぎすぎ!
オレが恥ずかしいんだよっ!」
「ストラは可愛いのう」
いきり立つストラに、一姫はのほほんと対応するだけだ。
もうすでに“お友だちフィルター”越しに見ているらしい。
「だーもう! 一姫さん話聞いてないっしょ?」
「聞こえてなければ返事などできないではないか」
「そーじゃなくって!
……なんかもう疲れた」
ストラはがっくりとうなだれる。
一姫の完全勝利。目に見えていた結果だ。
彼女は冗談のような本音で生きている。
まともに付き合っていたら馬鹿らしくなるほど、まっすぐで。
素直すぎるがゆえに周りを振り回す。
共に過ごした一月ちょっとで、クウは一姫の性格をよく把握していた。
「とりあえず一姫ちゃん。
そっちから報告に来たのに、私を忘れないでほしいわ」
話も一区切りついたようだし、そろそろいいだろうかと声をかける。
目の前で繰り広げられるコントを聞いているのも面白くはあるが、置いてきぼりは少し寂しい。
「忘れてなどおらんぞクウ!
この言葉にできない感動を伝えたいのだ!」
言葉にできないわりにはよくしゃべっていたような気がするが、今の一姫にはつっこんでも無意味だろう。
「一姫さん大げさだから!」
「何を言うか! 祭りが開けそうなほど大事であろうに」
たしかに大げさだ。とクウが聞いていても思う。
いつだったか二太郎が、一姫は暴走するといつもよりさらに口調が硬くなるのだと言っていた。
元から古風なものだから、クウには判別がつかない。
「クウさん聞いてよ!
オレ、別にいいよって答えただけなんだよ?
友だちになってくれないかって言われたから」
ストラは一姫に言っても通じないと気づいたらしい。クウに助けを求めるような瞳を向けてくる。
「一姫ちゃんはこういう子だもの。
あまり気にしない方が楽よ」
クウは苦笑してそう言うしかない。
ようは慣れの問題だ。と思う。
一姫の調子に合わせていたらこちらが疲れてしまうのだ。
適当なところで流せる心の広さが必要になる。
「何やら悪しざまに言われたような気がしたぞ」
鈍感な一姫でも引っかかるものがあったらしい。むっと眉をひそめた。
「一姫ちゃんらしくていいってことよ」
クウはにっこりと笑ってごまかす。
嘘ではないから、後ろめたさもない。
「そうか。ならばよい」
ころりと表情を一転させ、一姫は笑みを浮かべる。
素直さが可愛らしくて、クウは苦笑した。
「さすがクウさん、一姫さんの扱いうまいな~」
ストラが間違った感心の仕方をする。
どう返そうかと考えていると、
「――そりゃ、クウは姫の友だち第一号だもんな」
今までいなかった者の声がして、驚いて振り返る。
「二太!!」
「二太郎さん」
一姫とストラが彼の名を呼ぶ。
ドアの近くに背を預けて、人好きの良い笑顔でこちらを見ていた二太郎は、軽く手を挙げ応えた。
「二太郎君、何度言ったらいいのかしら?」
クウはため息をついて、無駄だと知りつつもそう言った。
「同日のよしみってことで」
部屋の中まで歩いてきながら、二太郎はへらりと笑う。
「親しき仲にも礼儀あり、よ」
それをクウはにべもなく切り捨てた。
「姫は許してるのに、俺にはこれだもんなぁ。
ストラ、これが男女差別ってもんだぞ」
一姫に呼び捨てでいいと言ったのは“クウ殿”と呼ばれるのに違和感があったからだ。
別に男女差別でもいじめでも何でもない。
「でも、二太郎さん他の年上の人たちにはちゃんと“さん”付けじゃん」
そう。一姫のように古風な言葉遣いをするわけでもない二太郎には呼び捨てを許す理由がなかった。
「だから同日の縁ってヤツだって」
「その偶然は確かに喜ぶべきことでしょうけど。
目上の人には敬意を払うものよ?」
クウだって配布日が同じだということは親近感がわくし、素直に嬉しい。
実際、同日という縁もあって、音源主同士も仲が良いのだから。
「クウそれ自分でおばさんって言ってるようなもんじゃね?」
二太郎がさらっと地雷を踏む。
「何か言ったかしら?」
ニッコリ、効果音がつきそうなほどの笑みを口元に浮かべる。
目は笑っていないと、よほど鈍くない限りは気づくだろう。
体感温度を二度か三度は下げることができた気がする。
視界の端でストラが思いきり後ずさった。
「スミマセン、ナンデモナイデス」
二太郎も目を泳がせ、冷や汗を流しながら謝った。
「何も聞かなかったことにするわ」
ふふふ、と今度は普通に笑って流した。
たとえ設定上のものとはいえ、女の年齢に触れてはいけない。
ましてや『おばさん』なんて言語道断だ。
「そーだ、ストラ。
姫が暴走して迷惑かけたな」
気を取り直したらしい二太郎が、ストラに声をかける。
「や、迷惑ってほどでもない……と、思うんだけど」
「どーだろーなぁ?」
ストラの語尾がだんだん頼りなくなっていくのを面白がってか、二太郎は意地悪く不安をあおる。
原因の一姫は二人が何を話しているのか分からないようで、きょとんとしていた。
「あ~、LOKEさんにはがんばれとか言われたしさぁ。
モンさんなんかすんげー楽しそうに笑ってたし、後でからかわれそ~……」
ストラが癖のある髪をかき回す。
最近ダウンロードされたLOKEにストラはすごく懐いているし、モンとはいつの間にか親しくなっていたようだ。
「モン君ならやりかねないわね」
食えない男を思い出しながら、クウは笑みをこぼす。
いじめっ子なわけではないが、人の反応を楽しむところがあるから。
ストラなんかはきっとからかいがいがあるだろう。
「クウ、モンと仲良くなったよな~」
頭の後ろで手を組んで、二太郎はしみじみと言った。
「そ、そんなことは……」
「あるって。だって前は明らかに避けてたろ」
否定しようとしたクウを二太郎はさえぎった。
的を得た言葉に、思わず声を詰まらせる。
たしかに、その通りだった。
「そうであったのか!?」
一姫は初めて知ったようで、クウと二太郎を驚きの表情で見た。
「姫は鈍すぎ。
まあ、クウが気づかれないようにしてたのもあっけど」
二太郎の鋭さに、クウは降参するしかないと悟った。
彼はたまにこういう面を見せる。
自分をさらけ出すのが苦手なクウは、どうしたらいいか分からなくなってしまう。
モンと距離を置いていた理由も、すべてを見通すような瞳から逃れたかったからだ。
臆病で小心者の自分が、今もまた警鐘を鳴らしている。
「モンさんがクウさんを気にかけてたのは知ってたよ。
だから最近のモンさんは、前より生き生きしてる感じするし」
直接的な接点のなかったストラも、違う視点からの見解を述べる。
「ストラ君からもそんな風に見られてたのね……」
クウは深くため息をついた。
もう、弱い自分から目を背けるつもりはない。
どんな一面も受け止めてくれると、分かったから。
「別に、誤解が解けただけよ。
私の方が勝手に苦手視していたの」
クウは自嘲混じりの笑みをこぼす。
格好悪くてもいい。モンには何も非はなかったのだと伝えたかった。
素のままでいいのだと、教えてくれたのはモンだ。
まだ勇気のいることだけれど、親しくしてくれる彼らに嘘だけはつきたくなかった。
「クウが正直に答えるなんて、珍しいな」
「……二太郎君は私のことを何だと思っているのかしら?」
二太郎が本当に意外そうに目を丸くするものだから、クウは肩をすくめるしかない。
今まで自分がどう見られていたかが垣間見えるというものだ。
「素直になれない乙女心、とか?」
茶化すように二太郎は片目をつぶってみせる。
クウのキャッチコピーを揶揄しているのだろう。
設定年齢的に、恥ずかしいものがある。
「似合いだな!」
一姫も知ってか知らずか朗らかに笑う。
「二人とも……」
クウは握りこぶしを作り、静かな怒りを声に込めた。
からかわれてまで黙っているつもりはない。
「えっと、オレLOKEさんの店手伝ってこよっかな~」
空気を読んで、ストラがこの場を去るために早口に話す。
巻き込まれたら大変だと思っているのかもしれない。
もちろんストラは失礼なことなんて言っていないから、怒る理由もないのだが。
「ストラは偉いのう」
一姫は口実だと気づかなかったようで、ニコニコと笑う。
そういえば、この二人が友だちになったと報告に来たところから話が始まったのだった。
「や、好きでやってることだし」
ストラは褒められて照れたらしく、そっぽを向いて短い髪をかく。
店、とはLOKEの音源主がつけた付属設定を活かすためにと居住区に作られた、Cafe & Bar『UTA-Location』だ。
設定通りにLOKEはそこの店主をしていて、ストラはよく手伝いに行っている。
共有ルーム以外での、UTAUシンガーのたまり場だ。
「LOKE殿の助けになっていることには変わりないであろう?」
「そう、なのかな。なら嬉しいけど」
一姫の言葉にストラは短い髪をいじりながら微笑む。
真っ正面から向けられる好意が、気恥ずかしいのだろう。
「私が言うのだ。
これほど確かなこともあるまいて」
腰に手を当てて一姫は自信満々に言うが、
「姫にお墨付きもらってもなぁ」
二太郎が混ぜっ返すと、クウもストラも噴き出してしまった。
「あのさ、一姫……ちゃん」
敬称が変わったことに驚いて、クウはストラをまじまじと見つめてしまう。
呼び捨てとさん付けの間。ストラなりの歩み寄りだろう。
「なんじゃ?」
一姫はとても嬉しそうに返事をする。
「お客さんとして、店、来る?」
「よいのか!?」
ストラの提案に一姫は目を丸くして大声を出した。
「LOKEさんは誰でも大歓迎だよ。
気難しいコトダマさんだって常連なくらいだし」
ストラはあくまで控えめに誘う。
魔族という設定のあるコトダマは一癖も二癖もある性格をしているが、LOKEとはなぜか仲が良かった。
店の常連客の一人として名を連ねているのも、LOKEの懐の深さゆえかもしれない。
「行ってくればいいじゃない、一姫ちゃん」
「後で感想聞かせてな~」
クウと二太郎は一姫が行きたがっていると分かるから、後押しをする。
二太郎も一姫も洋風が似合わないからか、行ったことがないようだけれど、クウはあそこがとても良い店だと知っている。
いつでも温かく迎えてくれる、休憩所。
コーヒーも紅茶も軽食もおいしいし、何よりそこで培われる関係もある。
ストラと仲良くなるためだけでなく、これを期に行動範囲が広がれば、他の人との交流も持てるだろう。
「どう、かな?」
不安げなストラの問い。
「是が非でも行くぞ!!」
一姫はかみつかんばかりの勢いで即答した。
「良かった」
「そうと決まれば善は急げだな!」
ほっと安堵の息をついたストラの腕を、一姫はガシッとつかんだ。
そのままLOKEの店まで行くつもりのようで、
「ちょっ、引っ張んないでって、一姫ちゃん!」
途惑いの声を上げるストラを、かまわず一姫は引きずっていく。
「LOKE殿の店に緑茶はあるか?」
「たしか、あったと――」
クウの部屋から出ていってからも、楽しげな会話が聞こえてくる。
一姫がどれだけ浮かれているかが声の調子で分かって、クウはふふっと笑みをもらした。
「クウも二人が仲良くなって嬉しそうだな」
二太郎はその笑い声を聞き逃さなかったらしい。
「そういうあなたこそ」
クウが指摘すると、二太郎は降参とばかりに両手を上げた。
それから二人は声を上げて笑った。
「あの二人、結構いいコンビになると思わない?」
クウは椅子に座って、仕事を再開する準備にかかる。
一姫もいなくなったのだし、二太郎も程なくして部屋を去るはずだ。
話しかけたのは、あるいは単純作業の暇をつぶすためだったのかもしれない。
「でこぼこ感たっぷりで?」
からかいを含んだ声音。真剣に考える気がないのだろうか。
「茶化さないの。
一姫ちゃんはお友だちができて嬉しいでしょうし、ストラ君は同性のお友だちが少なかったし、ね」
一姫は挨拶回りという名の突撃を繰り返すくらい、親しい人を欲しがっていた。
ストラは少年のような声と姿をしているが、区分としては女声音源だ。
二人は互いに良い影響を与えるだろう。
「まあ、姫が女らしいかは別としてな」
二太郎の失礼な言に、クウは小さく笑う。
「あなたたちは本当に仲が良いんだから」
羨ましいような、微笑ましいような。
この姉弟の仲の良さは折り紙つきだった。
「そー見えるかぁ?」
「信頼し合ってるからこその悪態でしょう」
二太郎は納得しきれないような顔をするが、クウは男に顔を向けにっこりと笑んだ。
「ま、クウが言うんだったらそーなんだろーな」
二太郎はくすぐったそうに眉をひそめて、顔を背けた。
照れ隠しなのだろうと簡単に分かる。
「素直になればいいのに」
普段は見れない不器用さに、クスクスと声をもらしてしまう。
本当に、彼ら姉弟と一緒にいると楽しくて仕方がない。
一姫の単純明快さも、二太郎の遠回しな気遣いや感情表現も。
クウに心地良さをくれる。
モンといるときの、変な緊張感とは違っていて、なぜなのかと不思議に思う。
考えても、答えは出ないのかもしれないけれど。
「俺が素直だったらクウが困るぜ?」
意味深に二太郎は言った。
「どうして?」
本気で意味が分からなくて、クウは首をかしげる。
素直な方が誰だっていいだろう。
たしかに素直じゃない素直さというのもあったりはするが。
「たとえば……モンと仲良くなったのは嬉しいけど、これ以上はダメだ。とか」
唐突に出てきた名前と、内容に目を丸くする。
「これ以上?」
「分かんないならいいさ」
聞き返しても、二太郎はそれ以上何も言わない。
ただ、どこか切なげなまなざしでクウを見てきて……。
答えを欲しがっているような。答えを拒絶しているような。
「二太郎君?」
名前を呼んだところで、どうなるわけでもない。
困った。本当に困ってしまった。
途惑うことしかできないことに、困り果ててしまう。
言葉通りになってしまったことが、なぜか申し訳なくて悔しい。
「そのままで、いてよ」
何を、とか。どういうことか、とか。
訊くことはいくらでもできただろうに。
それを拒むように、二太郎は微笑みを残して部屋を出ていってしまって。
準備完了。記入を開始してくださいと、黄がクウを追い立てるように明滅した。
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