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しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

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In the dark  -development- Miku side

 カイミク連載三作目。
 副題で分かるかもですが、起・承・転・結で話を切ってます。これが承のミクサイド。なので一つ一つが短いのです。






 音が、聞こえた。



In the dark  - development - Miku side




 限りなく0しかなかった空間に、1が生まれる。
 闇に解けかかっていた意識が目を覚ます。
 少女は、音のした方にうつろな瞳を向けた。
 ひどく緩慢な動作。何もかも、やる気が起きない。
 けれど、音が気になった。
 願望が聞かせた幻聴だったかもしれない。VOCALOIDが錯覚をするのかは知らなかったが。
 D……G……FGA……。
 少女の耳が音階を聞き取る。
 間違いない。
 ガバッと、勢いよく身を起こした。
 そこで初めて自分が横になっていたことに気づく。
 いや、今はそんなことはどうでもいい。

 たしかに、聞こえた。
 歌、だ。
 たぶん“仲間”のもの。
 少女は存在を忘れていた探知能力を使って、音の波の発生源を探る。
 ヘッドセットを耳に押しつけ、わずかな音ももらさないようにと。
 歌声は遠くて、特徴はほとんど分からない。
 低めで伸びのいい声。genderをいじれば女性型でも男のような声になる。
 他に、何か情報が欲しい。
 この暗闇のどこにも誰もいないとあきらめかけていた。
 まさか同じVOCALOIDがいるとは夢にも思わなかった。
 もしかしたら通信がつながるかもしれない。
 始めての喜びを感じながら、少女は波形を追った。

【CRV2-KAITO】

 見つけた。青年型の初代VOCALOID。
 早速通信を試みる。
 できるかもしれない。できてほしい。
 けれど期待はあっさり裏切られた。
 エラー音が鳴る。通信相手が見つからないと。
 通信に距離は関係ない。
 たぶん、彼と直接会ったことがないのが問題だ。
 情報不足。期待が大きかっただけに、落胆も激しかった。
 つ、と涙がこぼれる。
 一人は嫌だ。暗くて静かで怖い。
 せっかく、仲間がいると分かったのに。
 話したい。知り合いたい。
 会って、互いを認め合いたい。
 望むことを忘れかけていた心が、強く揺らぐ。
 ああ、自分は寂しいのだ。
 ずっと抱えていた感情を正しく理解した。
 彼も同じ気持ちだろうか? この闇を恐れているだろうか?
 無性に気になったけれど、話す手段はない。

 なんとか声だと判別できる音は、気まぐれに少女の元まで流れてくる。
 まるで慰められているように思えて、涙をぬぐいながら少し笑った。
 ゆるやかな曲は、きっとKAITOのデモソングの一つの童謡だ。
 登録されているVOCALOIDに関する情報から、メロディーと歌詞を知ることができた。
 歌ってみようか。
 ふと、そんな気分になった。
 彼の歌声が聞こえるということは、あちらにも自分の声が届くかもしれない。
 途切れ途切れでは会話はできないけれど、声を合わせて歌うことはできる。
 かすかな希望だ。
 口を開く。息を吸って、はく。歌える気がした。
 また音が聞こえてきた。DGDD……B、D、B、D……。
 どこを歌っているのかが分かってくる。
 少女は勇気を出して歌い始めた。
 届くかもしれない。届かないかもしれない。
 不安と期待。
 けれど、それだけではなくて。
 純粋に彼と一緒に歌いたいという思いが、今の自分の胸を占めている。

 声が、重なる。
 遠くから時々聞こえてくる音に合わせるのは大変だ。
 あまりに不安定な。
 それでも嬉しくて楽しくて。
 一人でも、独りではないのだと、少女は実感した。





 一応、すぐ声が届いたわけじゃなくて、届くまでずっとKAITOは歌ってたという設定。
 説明不足がどうしても起こっちゃうのがなぁ。切ない。
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