忍者ブログ

しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

9・君を忘れるわけがない

『愛しい君と過ごす日々で50のお題』 9・君を忘れるわけがない(マスター×MEIKO)

配布元:原生地






 お前を忘れるなんて、そんなことあるはずがない。
 趣味だと、言ってしまえばそれだけだが、俺にとってお前は人と同じ存在だ。
 どんなに忙しくても、何があったって。
 決して、お前を忘れたりするはずがないだろう。



わけがない




 帰宅して、まず初めにパソコンの電源をつける。
 学生のときからの癖のようなものだった。
 それから男は少し考えてから、あるソフトウェアを立ち上げる。
 ウィンドウが開き、すぐにダイアログが出る。YESをクリックする。
 後ろに、人の気配。振り返らなくても誰がいるのかは分かっていた。
 懐かしい感覚に、自然と頬がゆるんだ。
「久しぶりだな」
 椅子を回して向き直る。
 立っていたのは赤を基調とした服をまとった女性。
「MEIKO?」
 返事がないのをいぶかしく思い、名を呼ぶ。

「忘れられたかと思ったわ」
 うつむいたまま、MEIKOは呟く。
 座っている男からは表情が確認できてしまう。
 泣き出しそうな、泣くのを我慢しているような顔だった。
「何を言っているんだ」
「歌なんて、VOCALOIDなんてもうどうでも良くなったかと思った。
 元々ただの趣味の一つで、いつだってやめられるものだもの」
 MEIKOはたまっていたものを吐き出すように、一気に言った。
 初めは何をと思ったが、募らせた思いが伝わってくる。
「そんなはずがないだろう」
 彼が学生の頃に買った、VOCALOID。
 値段は張ったけれど、それ以上の価値があった。
 いや、価値だなんて物扱いできないくらいに、男は彼女に情が移っていた。
 MEIKOも、そのことは知っていると思っていたのだけれど。

「……こういうことが言いたいわけじゃないのに」
 ごめんなさい、とポツリとこぼすのが耳に届いた。
 謝罪が聞きたいわけではない。MEIKOの心が知りたい。
 泣きそうなほどつらかったのが本当なら、男はそれを受け止めたかった。
「放っておいて、悪かった。
 仕事が忙しかったんだ」
 だからこちらも正直に謝る。
 新しい生活に慣れるために、男は必死だった。
 学生のころには利いた自由が、今では許されない。
 気づいたときには数ヶ月もMEIKOを起動していなかった。
 寂しがらせてしまったのは、自分のせいなのだろう。
「知ってるわ。見てたもの」
 顔は上げないけれど、表情は幾分かやわらかいものになっていた。
 今日呼んだことで、気持ちをぶつけたことで、少しは気が晴れたのだろうか。
「ああ、パソコンさえ起動しておけば分かるんだったな」
 どういう仕組みなのかは知らないが、そういうことらしい。
 デスクトップから覗き込んでいるMEIKOを想像して、つい可愛いと思ってしまった。

「忙しそうだったけど、楽しそうでもあったから」
「それで、お前のことを忘れたと思った、か。
 俺もずいぶん信用がないんだな」
 ふっ、と口元だけで嗤う。
 信じていてほしかった。だから冷たい言葉が出てきてしまった。
「……そういうわけじゃ」
 MEIKOがまた泣き出しそうな顔をしたのを見て、男は後悔した。
「すまない。意地の悪い言い方をした。
 そうじゃなくて、だな」
 どう言えばいいのか、短い前髪をくしゃりと掴む。
 疲れがたまっていたから、当たってしまったのかもしれない。
 素顔をさらけ出せる相手と話す時間を、これからはもっと取ることにしようか。
 彼はMEIKOをただのアプリケーションソフトだなんて思ってはいない。
 いや、人のように接していて、思うことなんてできるはずがなかった。

「俺はどんなことがあっても、MEIKOを忘れたりはしない。
 それを忘れないでほしい」

 息を一つついてから、伝えたかったことを口にした。
 少しすっきりする。やはり取り繕わなくていいのは、楽でいい。
「その言葉が聞きたかったのよ」
 MEIKOが安堵したような表情を見せる。
「勝手に実体化したって良いんだからな」
 初期設定で好きなときに実体化できるようにしたはずだった。
 だから男も数ヶ月会っていなくても、平気なのだと思っていたのだ。
「どうしても寂しくなったら、そうするわ」
 MEIKOはそう、嬉しそうに笑ったけれど。
 まだ控えめなところのある彼女を全面的には信用できないから。
 今日のように用事がなくても呼んでみよう、と男は思った。



 お前を忘れるなんて、そんなことあるはずがない。
 趣味だと、言ってしまえばそれだけだが、俺にとってお前は人と同じ存在だ。
 どんなに忙しくても、何があったって。
 決して、お前を忘れたりなんでできるはずがないんだ。
 もし、不安になったら、いつでもお前の方から会いに来てほしい。

 俺もお前との時間が……必要なんだからな。





 この話、すごーく難産でした……。マスター視点ムズカシイヨ。
 まだKAITOたちを買ってないころの二人。ぎこちなさが残ってます。
 MEIKOが本当に打ち解けられるようになったのは、KAITOやミクを買った後でもマスターが歌わせてくれるって分かってからじゃないかな。
 そして新設定。MEIKOを買ったときはマスター学生でした。大学生ですが(それか専門学校)
 実はMEIKOは一人でいた時間が年単位だったりするのです。
PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

trackback

この記事にトラックバックする:

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]