VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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I love you
ネタの流用どんどん行きます。
ユズコト。たぶん、甘め……なんだと思います。
向かう場所なんて決めていない。ヤツさえいなければどこでもいい。
部屋に閉じこもるという手もあったことを、共有スペースからだいぶ離れてから気づいた。
手当たり次第にフォルダを開いて、隠れられる場所を探す。
誰かが探しにくる可能性もあったから。
内部回線でつながっているUTAU同士だと、大体の位置情報は分かってしまう。
開けた空間の多いリラクゼーション区域は隠れるのに適さない。
乱雑に音声データを含む、様々なファイルが入り乱れているフォルダがあれば、見つかる確率はぐっと減る。
音の波が気配をかき消してくれるから。
綺麗に整頓されているフォルダから出ようとしたところで、何かに腕をぐいっと引かれた。
「見つけた」
振り向いた先にいたのは、コトが今一番顔を合わせたくなかった、星歌ユズだった。
コトは目を丸くする。
どうしてここに、彼がいるのか。
「ぼく、設定上全力疾走とか似合わないと思うんですよね」
烏のように黒い髪をかき上げ、ユズは言う。
似合わない全力疾走をさせたコトを、責めるように。
息は乱れていない。疲れの観念がない、仮想世界だから。
「なら追ってこなければよかったでしょ!」
冗談じゃない。なぜ自分が文句を言われなければならないのか。
放っておけばよかったのだ。
コトがわがままを言って。やれやれと呆れながらも、皆はそれを許してくれる。
よくあるパターンになるはずだったのに。
他人に興味を示すことの少ないユズだから、気にもしないと思っていたのに。
「そんなこと言ったって、罰ゲームは罰ゲームですから」
ユズはニッコリと笑って、さすがにお開きになりましたよ、とつけ加えた。
その勝ち誇ったような笑顔が、コトの神経を逆なでする。
「こんなの不当だよ! 人権の侵害っ!!」
苛立ちをそのままに怒鳴り散らすが、
「罰ゲームに正当性を求めるのは間違ってますし、人じゃないから人権も何もありません」
返ってきたのは冷静すぎる回答。
ムカつくくらい正論だ。
「……っくぅ!」
コトは何も言い返せずに、唇をかみしめた。
ユズがどれだけ意地悪なのか、コトは身を持って知っている。
追ってきたのだって、きっといじめの一貫だ。
放置しておくと罰ゲームなんてなかったことになってしまうから。
それが癪だったのだ。
「嫌なら負けなければよかったんですよ」
ユズの責め苦は続く。
まるで負けたことが悪のような言い方にカチンと来た。
「しょーがないでしょ!
偶然、あたしのとこにババが残っちゃったんだから!」
コトだって負けたくて負けたわけではない。
勝つときもあれば、負けるときもある。
それがババ抜きのような、運任せのゲームというものだ。
「本当に偶然だと思ってます?」
人を小バカにしたような笑みでユズは訊いてきた。
「なに、そのムカつく笑顔。
他に何があるのさ」
コトは眉をつり上げる。
自分がジョーカーを引いたのも、それからずっと手元に残ったのも、偶然。
それ以外の何物でもないはずだ。
「コトはすぐ顔に出るんですよ。
次がツバメさんとかならわざとババを引いてくれたかもしれませんが、サユさんでしたし」
聞き捨てならない内容に、コトは目を瞬かせる。
「え!? それってどれがババだか分かっちゃってたってこと?」
完全に意味を理解したコトは、大声を上げた。
名前の順で組を決めたから、コトはアンズ・一姫・ウタ・栄一・栄二・カエデ・クウ・サユ・サラ・シンとだった。
サユが抜けてからはシンが次で、最後にはカエデとの一騎打ち。
ユズの言っていることが本当なら、三人ともコトの表情を見て判断していたことになる。
「そうですね。
ババを取ろうとするとコトは嬉しそうな顔になってましたから」
「ありえない!! 皆それを黙って見てたなんてっ!」
道理で、一度ジョーカーに触れた手がすぐに違うトランプを引いていたわけだ。
コトは悔しさに地団太を踏む。
今すぐ怒鳴り込みに行きたい気分だ。
「そりゃあ誰だって負けたくはないですからね」
ユズはコトの怒りようも何のそので、皆をかばう。
そういえば一姫が何かを言いたそうにしていた気がする。
アンズがそわそわしていたのも、栄一がすまなそうな表情をしていたのも、サユが意味深な笑顔を浮かべていたのも。
全部、そんな理由があったのか。
「で、言わないんですか?」
ユズは獲物を見つけた鷹のように瞳を細めて、訊いてくる。
反対にコトはむっつりと口を引き結ぶ。
誰が、言ってやるものか。
「さっさと済ませてしまった方が楽だと思うんですけど」
人の気も知らずに、少年は簡単に言ってのける。
「嫌ったら嫌!!」
しつこさが嫌になって、コトは声を荒げた。
あんな、あんなの……。
罰ゲームを決めた栄二が憎くなってくる。
「コトは決められたこともこなせないくらい、無能なんですか?」
「……っ!」
刃物のように鋭い問いに、少女は言葉をなくす。
確かに、ユズの言う通りだ。
負けず嫌い気質がムクリと頭をもたげてくる。
それが相手の思惑だと、頭に血が上っているコトは気づかない。
「分かったよ! 言えばいいんでしょ言えば!!」
ついにコトは覚悟を決めた。
恥ずかしくてどうしてもうつむいてしまうけれど。
「ユズが好き!」
半ば叫ぶようにして、コトは口早に言った。
どうして、好きでもないヤツに『愛の告白』というものをしなくてはならないんだ。
栄二はコトをいじめたかったんだろうか。
無性に泣きたくなりながらも、顔を上げると。
「……なんて顔してんのよ」
耳まで真っ赤にしたユズが、そこにいた。
伝染したように、自分まで頬がほてってくる。
「いや、結構来るものだなぁと」
ユズは手で口元を覆って、視線をあさっての方向に逸らす。
ただの、罰ゲームだ。
二人ともそれを分かっているはずなのに、この熱は何だろう?
全身がしびれるような、知らない感覚。
「――じゃあね!!」
理解する前に。理解してしまう前に。
逃げるようにコトはその場から駆け出した。
何で、ヤツが追ってきたのかだとか。
何で、あんなに心も体も熱くなったのかだとか。
そもそも何で、あんな罰ゲームを言い渡されたのかだとか。
ちゃんと考えれば、きっと意外と簡単に答えは出たんだろうけれど。
まだ、知りたくなくて。
知ってしまったら、もう後戻りできなくなってしまうような気がして。
彼女は必死に目を背けるのだった。
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甘い話なのに相変わらずブラックな家の息子。
ついにコトに自覚症状が出てきましたね~。可愛いな~(笑)
この先の進展がどうなるのか、wktkしながら妄想してようと思いますw
ユズ君はブラックこそが本領かと(笑) や、でも今回はちょっと可愛い部分も……ちょっとはありますよ(遠い目)
まさかコトに自覚症状が出るとは思いませんでした。想定外です(笑)
可愛いと思ってもらえたなら良かったですv
この先ですか! うわぁ考えてなかった……ちょっと乃駆さんの妄想が気になるじゃないですか~!!