VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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First in the world
ただの小ネタだったつもりが、一本の話になっちゃったというもの。
こちらもお久しぶりの、設定2のカイミク。甘いというよりはほのぼのだと思う。
設定1以外のカイミクももっと増やしていきたいです。
『俺の大切な人たち KAITO
俺のマスターは良いマスターだと思う。
いっぱい歌を歌わせてくれるし、喋らせてももらえる。
マスターの親戚のKAITO仲間には、「お前それネタキャラとして使われてんじゃん」と言われたけど、俺は別に気にしてない。
オリジナルの曲だって、たくさん作っちゃうマスターは、すごいマスターだ。
皆にも評価されてて、たまに嫉まれて、それでもマスターは歌が好きで。
そんなマスターが、俺は大好き!
世界一だと、本気で思ってる。
それと、俺の大切な妹、ミク。
一緒に歌ってて楽しいし、怒ってる顔だってやっぱり可愛い。
マスターの友だちのKAITO仲間には、「いわゆるツンデレってやつじゃないかな」とか言われたけど、意味はよく分かってない。
歌がとっても上手で、マスターの期待に応えてるミクは、すごい子だ。
たまにうまく歌えなくて、落ち込む時もあるけど、それでもミクは歌が好きで。
そんなミクが、俺は大好き!
世界一だと、本気で思っ――』
そこまで書いて、KAITOは「あれ?」と首をかしげた。
どちらも世界一? それはおかしくないだろうか。
ん~、と青色ボールペンを手で器用に回して、考えてみる。
マスターはすごい。それは絶対だ。
ミクが大切だ。それも絶対。断言できる。
二人とも、KAITOにとっては世界で一番だと思う。
やっぱり分からない。
おかしいことのはずなのに、筋が通ってしまっている。
ん~ん~、と悩みながら、KAITOは机に突っ伏した。
「何やってるの? お兄ちゃん」
可愛い妹が呼んでいる。
そう認識すると、悩みもなんのその、KAITOは瞬時に顔を上げた。
ミクはKAITOの部屋の扉を開けて、入ってくるところだった。
「あ、ミク。もう書けた?」
へら、と笑って問う。
今日はマスターから急に『お前ら作文書け。何かネタになるかもしれん』と告げられ、作文用紙のデータをもらった。
マスターから頼みごとをされるのは好きだ。
自分が必要とされている。そんな気がするから。
だからKAITOはニコニコ笑いながらその作文用紙を受け取ったのだ。
逆に、ミクは渋るような顔をして、「何を書けばいいの?」とマスターに訊いていた。
返ってきたのは『好きにしろ』の言葉だけ。
実にマスターらしい大らかな回答だった。
「とっくの昔に。
何そんなにてこずってるの?」
嫌がっていたように見えたのに、やるからにはしっかりやるらしい。
まだ渡されてから一時間も経っていないのに、ミクの手には四枚の作文用紙にびっしりと文字がしきつめられていた。
すごい。自分なんてやっと二枚目に行ったところなのに。
「や、うまくかけないって言うか、つまっちゃって」
KAITOは持っていたボールペンを机に置く。
書けないのに手にしていても、むなしいだけ。
考え事には邪魔になる。
「読んでもいい?」
ん、と短く返事をして、作文用紙をミクに渡す。
初めはうんうんと頷きながら読んでいたミクだったが、途中から顔が赤くなっていった。
心なしか手もふるふると震えているようだ。どうしたんだろう。
KAITOが心配になって尋ねようとしたのと、ミクが作文用紙を机に叩きつけたのは、同時だった。
「な、なな、何恥ずかしいこと書いてるの!?
だだだ、大す……とか、簡単に書いちゃダメなんだから!
それに私はツンデレじゃない!!」
顔を真っ赤にしながら、ミクは怒鳴る。
ああ、また怒らせてしまった。
元々沸点の低いミクに、KAITOはさらに気の障るようなことを言ってしまうらしい。
「思ったまんまを書いただけなんだけどなぁ」
不満げに、KAITOは呟く。
簡単になんかでは、絶対ない。
ちゃんと、心からそう思っているから、書いたまでだ。
「っ!!? も、もういい!!」
目をまん丸にさせてから、ミクはぷいっと顔を背けてしまった。
微妙な沈黙が二人の間に落ちる。
「……で?」
先にそれを破ったのは、以外にもミクだった。
「ん?」
で、とは何だろうか。何か訊かれているんだろうか。
KAITOにはその“何か”が分からない。
「つまってるんでしょ? どこで?」
顔は背けたまま、仏頂面のまま。
それでも相談には乗ってくれるらしい。
素直じゃない優しさが、嬉しくて、可愛い。
「なんて言うかさ、俺にとっては、マスターもミクも世界一なんだ。
世界で一番すごくて、世界で一番大好き。
それって、何だかおかしくないかな、って」
読んだなら分かるだろうと、前提を省略して話した。
KAITOには、どうにも納得できない。
“世界一”が“二人”いる現実が。それでいいのかと疑問に思う。
「なんだ、そんなこと」
だからミクの呆れたような声が、正直意外だった。
「ミクにとっては普通なの?」
KAITOは不思議になって問いかける。
一番は、並ぶものがないということだ。
物事の最初で、最も優れていて。
そういうものだと思っていた。
「普通っていうか」
どう説明したらいいか迷っているように、ミクは眉をひそめる。
KAITOの作文用紙にもう一度目を落とし、頬を染め、
「……私が世界一ってゆーのは、とりあえず置いといて」
小さな声で、そう呟く。
照れているんだろうな、とその様子からすぐに分かった。
「そんなことがあってもいいんじゃないかな?
だって、マスターが特別なのは当たり前だもん。別格なの。
他にも特別な存在があったら、世界一でもおかしくないでしょ」
恥ずかしそうに、けれどしっかりと。
ミクは言い切った。
盲点だった。マスターは別格。それは確かに。
甘いものが別腹なのと同じ原理だろうか。
「そっか~」
目の前の問題が解決して、KAITOは表情を和ませる。
嬉しい。
二人が世界一でもいいんだ。自分は間違っていなかった。
ミク自身が教えてくれたのが、何より嬉しい。
「俺、ミクのこと好きでいていいんだね?」
顔いっぱいに笑みを浮かべ、KAITOは言った。
嬉しくて嬉しすぎて、アイスみたいに溶けてしまいそうだった。
「だっ、だからどうしてお兄ちゃんはそーゆー恥ずかしいこと言うの!?」
ミクはやっぱり顔を真っ赤にして叫ぶ。
「もう知らないっ!」と言って、駆けて行ってしまう。
「また、怒らせちゃったなぁ」
一人残されたKAITOは、全然反省しないて笑顔で呟いた。
怒っていても、ミクは可愛い。
怒られたって、ミクが大好きだ。
「うん、うん。俺はマスターもミクも世界一だと思ってる」
しまらない顔でかみしめるように、確かめるように、言葉を紡ぐ。
今の自分は世界一幸せだ。そんなことを思いながら。
机に向き直って、ボールペンを手に握る。
『てる。』と書き足して、終わりの文を考える。
二つ三つ、案を挙げていたら、ふいにぴったりな文章をひらめいた。
くふ、と笑って、KAITOはそれを文字にした。
『世界一な二人は、今日も俺を喜ばせてくれる。
そのたんび、俺は二人がもっともっと好きになっていくんだ!』
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