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6・君にもきっと分からない
『愛しい君と過ごす日々で50のお題』 6・君にもきっと分からない(KAITO×初音ミク 設定3)
配布元:原生地
リラクゼーション区域の、四季の区の近く。
区と区をつなぐ何もない回路を、僕は歩いていた。
ミクがこの辺りにいるらしいから。
いつでも、僕は彼女の姿を探してしまう。
揺れる緑の髪を。華奢な身体を。僕を見ると嫌そうにしかめられる顔を。
一分一秒でも長く、見ていたくて。
そう思っていることを、ミクは知らないだろうけどね。
「……知っても、信じないかな?」
僕は口元に嘲笑を浮かべる。
いつだって僕はミクをからかうことしかしないから。
反応が楽しくて、つい揶揄するような言葉ばかりを口にしてしまう。
不快そうな表情。冷たい瞳。動揺したときの眉の動き。
僕にだけ見せる顔が嬉しかった。
気づけば“苦手な人”認定されてた。
「それでも、やめられないんだよなぁ」
ため息を一つついて、呟く。
きっと、うちのミクがクールなのが変わらないように、僕が意地悪だからなんだろうね。
ふと、目の前が青に染まる。空の色だ。
どこかのファイルに入ったらしい。考え事をしてたせいで、現在位置すら認識してなかった。
ミクの波状を追いながら進んでたから、少なくともミクには近づいたはず。
そう思いながら僕はここがどの区なのかを確認する。
四季の区、小川の地。
同じ名前の地が水の区にもあった。そっちは常緑だったけど。
四季の区は、名前そのままで、リアルと季節がリンクしている。
今は秋のはずだから、どこも紅葉してるんだろう。
「って、ことは」
赤の中に緑は目立つから、探しやすい。
風情とかそういうのの前に、僕はそう思った。
VOCALOIDらしく歌でも歌ってれば、一発で分かるんだけど。
ミクは一筋縄じゃいかないところがあるから、どうだろうね。
水の流れる音と、木の葉と木の葉がすれる音だけが響く、川の前。
ひときわ大きな岩に腰を下ろして、瞳を閉じているミクを見つけた。
緑の髪が風になびいて、真っ赤な世界に芽吹く。
それはまるで一枚の絵画のように、自然で、完璧で。
僕は言葉を失った。
「何の用ですか、KAITOさん」
声をかけられたのも一瞬気づかなかったほどで、僕はハッとする。
ミクはもう目を開いていて、冷ややかな双眸と出会う。
それはいつもと変わりないものだったのに、僕はなぜか残念に思った。
「僕がここに来たらいけない理由でもあるの?」
何とか浮かべた笑みは、余裕満々なものじゃなかったかもしれない。
それでもミクは気づかなかったみたいだから、僕は安堵した。
ミクの前で格好悪い姿は見られたくないしね。
意地悪な姿はいいのかっていうと、それは例外だとしか答えられない。
「静かな空間を邪魔されるのは、好きではありません」
ミクは可愛らしい顔をしかめる。
そう言うだろうとは、大体予想してた。ミクは静かな場所を好むから。
リビングにいる時間も、他所のミクと比べると、きっと短いだろう。
無音が好きだっていうわけじゃない。VOCALOIDでそんなのはいないはずだ。
かすかな音。隠された音。
洗練された音が好きなんだと、僕は勝手に結論づけていた。
「なら、静かにしていればいいのかな」
僕は余裕を取り戻して、提案してみる。
「……KAITOさんがですか?」
思いきり眉をひそめ、ミクは訊いてきた。
そこまで露骨な顔をしなくたっていいと思うんだけど。
「僕にだって、景色を楽しみたいときくらいあるよ」
不服そうな表情を作って、僕は答える。
実際はミクの反応なんて予測済みだから、別に怒ってなんてない。
景色を楽しみたいとき。
うまいこと言ったなぁ、と自分で感心する。
確かに今はそんな気分だ。といっても紅葉した木々や落ち葉、川辺を見ていたいわけじゃない。
そこにミクがいないと意味がなかった。
他のものはすべて添え物になる。
ミクがいて、初めて一幅の絵画は完成するんだ。
「にわかには信じられません」
疑いのまなざしでミクは僕を見る。
本当に分かりやすい。感情の起伏は少ないのに、顔にはすぐ出る。
「だったらどう言えばいいのさ。
僕は嘘はついてないよ」
ふふ、と僕は笑みをこぼした。
ミクが考え込むように少しうつむく。言葉の真意を探ってるんだろう。
どんなに考えたってミクには分からないのに、ね。
「それは本当のことも言ってはいないということに聞こえるんですが」
重箱の隅をつつくような、ミクの理屈。
うん。図星だよ。
動揺なんてしないけどね。
「好きなように取ればいいんじゃない?」
笑みを深くして、僕は言った。
実際のところ、僕自身よく分かっていないんだ。
ミクを見てあんなに感動した理由。
好きなことは自覚してる。けど、恋愛感情だけでこんな気持ちになるのかな。
他にも色々なものがない交ぜになったような、不思議な想い。
捉えどころがなくて、困惑してしまう。
「何を考えているんですか?」
いぶかしげなミクの問いに、
「さあね」
僕はごまかすようにもう一度笑った。
君にも、きっと分からないと思うよ。
僕でさえ掴みかねてて、困るときだってあるんだから。
一方向からしか物事を捉えられない君には、きっともっと解きづらい問題。
あるかどうかも不確かな、あったとしてどんな形をしているのかも分からない。
僕の“心”のことなんて。
きっと一生かかっても、分からないと思うよ。
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