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Happy release date
轟音源配布日に合わせ、話も書けましたよー!
でもお話の中は16日です。あるぇ~?
ともあれ、栄一栄二、本当におめでとう!
栄一兄弟が中心。モモ・タク・テト・テッド・マコ・シンがちょっとだけ友情出演。オリジナルマスターも少し。
カップリング要素は皆無です♪
『お疲れさん』
マスターがねぎらいを口にする。
優しく、というより軽く聞こえるけれど、それは変わった性格ゆえだ。
ただのプログラムとしては見られていないことを分かっているから、栄一は自然と笑みをこぼす。
「ありがとうございます」
伝わらないかもしれないけれど、二重の意味を込めた言葉。
いつも温かい声をかけてくれて。今日、歌わせてくれて。
嬉しかったから、素直に礼を言った。
『なんだ、気持ち悪いぞ』
モニター越しのマスターはくすぐったそうに笑った。
『少ししたら、今度は栄二のコーラスを完成させるつもりだからな。
言っておいてくれ』
「了解しました」
伝言をもらい、マスターがこれで通信を切るつもりだと分かる。
顔を見て話せる機会は貴重だけれど、マスターにも都合というものがある。
自分たちのために時間を使ってくれているのだから、邪魔をするべきではないだろう。
『じゃあ、またな』
次があると暗に教えてくれるマスターに、
「ありがとうございました」
栄一はまた感謝の言葉を告げ、頭を下げた。
******
リビングはたくさんのシンガーが、常に出入りをしているものだ。
初期に作られた音源である栄一の部屋はそこからつながっているため、どうしても人にもまれることになる。
加えて今日が特別な日だということもあり、栄一は朝から人気者だった。
だからある程度は予想済みで、リビングに戻ってきた。
が。
「おっかえり~♪」
扉を開けた瞬間に、同じく今日は引っ張りだこのはずの栄二が飛びついてきたのには、さすがに驚いた。
「お疲れさまです、栄一さん」
モモのほんわかとした笑顔に癒され。
「栄一、君も手伝え!」
「手伝ってない奴が何を言っているんだ。
お疲れ、栄一」
テトとテッドの夫婦漫才に思わず苦笑し。
「三時間二十四分。
思った通り、最終調整だけにしては時間がかかりましたね」
きっちり時間を記憶しているタクに感心半分呆れ半分。
「こらシンちゃん! つまみ食いしないの!」
「いーじゃんよちっとくらい、マコっちのケチ~」
キッチンからは相変わらず仲の良い喧嘩の声も聞こえてくる。
食べ物データを探してきている者もいるのだろう。マスターに呼ばれた時より人が少なかった。
皆が皆、栄一と栄二のために動いてくれている。
「にーちゃんにーちゃん!」
浮かれているのか、栄二はいつもに増してテンションが高かった。
気持ちが分からないでもないから、栄一は頭をなでてやる。
「栄二、少ししたらお前の番だぞ」
マスターからの伝言を伝え、肩に手を置き体を離す。
「良かったですね、栄二さん」
「うん!」
モモの言葉に栄二は本当に嬉しそうに頷く。
音源を使ってもらうこと。歌わせてもらうこと。
それが自分たちの存在意義だ。
ましてや起源となる日に歌うことができるというのは、これ以上ない喜びだった。
「俺は部屋に戻るよ。
見てからのお楽しみにもしたいしな」
栄一は皆に向けてそう言う。
「いつも以上に腕を振るいますからね」
「栄一さんは部屋で休んでいてください」
モモとタクの言葉に、ありがとう、と返し、栄一は部屋に戻った。
当然のように栄二も後ろについてくる。
ドア一枚閉じれば、賑やかだった音は聞こえなくなって。
寂しいような、少しほっとしたような気持ちを持て余した。
自分たちは1stを元に人格を作られている。
マスターは音源としては一番安定している3rdを使うことが多いけれど、栄二をg換えキャラとしてでなく、正規に扱いたかったらしい。
実際に歌わせるときはジェンダーをいじることの方が多いのだから、不思議な矛盾だ。
まあ、おかげで二人が別々の部屋を持てたことを思えば、良かったのかもしれない。
そのわりに、こうして栄二は栄一の部屋に入り浸っているが。
「栄二は皆と一緒にいなくて良かったのか?」
邪魔だとかという他意があるわけではない。
単純に楽しいことが好きな栄二だから、あの場にいたかったのではないかと思ったのだ。
「ん~、兄ちゃんといたい気分だった」
栄二は少し考えるような素振りを見せ、それからへらりと笑った。
つられて栄一も微笑む。
他の兄弟に負けず劣らず、自分たちも兄弟仲が良かった。
「実際はまだ一年経ってないんだよね~」
ベッドに座ってクッションを抱え、栄二はこれまでを振り返るように呟いた。
シンガーは音源に付加されるプログラムだ。ダウンロードされる前の記憶があるはずがない。
「マスターがUTAUを知ったのは、マコやソラが新音源の時期だったからな」
それまでに配布されていた音源は一気にダウンロードされた。
このパソコンの中で、初めて瞳を開いた時に見たのは、自分たちと同じ仲間の姿だった。
「でも、祝ってもらえるのは嬉しいね。
公開日、だからおめでたいのは確かだし」
栄二はにこにこと朗らかに笑う。
嬉しい、と心から思っている笑顔だ。
「そうだな」
轟栄一・栄二の場合、公開日は栄一が16日、栄二が18日で、配布開始日が19日。
どちらが正しい公開日かは、人によって捉え方が違うだろう。
マスターなんかは『ややこしいから今日でいいだろ』などとぼやいていたし。
だからきっと皆、明後日にも栄二に、し明後日にも二人に「おめでとう」と言ってくれる。
今日の朝がそうだったように。これからそうなるように。
「色んなことあったよね~」
「ああ」
相づちを打って、栄一も半年以上の年月を思い返す。
色々、では片づけられないような、悲喜こもごもがあった。
初めは一月に一度ほどだった仲間が増える機会も、今では一週間に一回以上あったりする。
UTAUというソフトが有名になり、音源が増え、使う人が増えた。
講座ができたこともあり、マスターの調声技術も上がった。
大所帯になった分、仲が良い者も増えれば、よりの合わない者もいて。
根っからの苦労性である栄一は、いつも大忙しだった。
「しょっちゅう大騒ぎもしたよね」
遊び盛りの設定年齢のコトやヒヨリに加え、楽しいことが大好きなルナやサラなんかが、いつも問題を起こして。
「その中心にお前もいただろ」
栄二も直接あるいは間接的に関わっていることが多かった。
苦笑ですむのは、過ぎたことだからだろう。
その時は本気で困らせられたのにと、ついさっきのことのように思い出せる。
「だって、楽しいんだもん!
楽しい時間はあっという間だしね」
栄二はからからと明るく笑う。
今日の栄二はずっと笑顔でいた。
暗い顔をする方が難しい日でもあるが。
本気で今日を楽しんでいるのだと、全身から伝わってくる。
自分も、そうだといい。
皆に分かりやすいように、喜べていればいい。
それが全力で祝ってくれる彼らへの、お返しになるだろうから。
「これからももっともっと、楽しいことや嬉しいことが待ってるんだ」
希望に満ちた瞳だった。
疑いも迷いもない、綺麗で純粋な。
「だろうな」
弟の期待を裏切りたくないと思う。
だから栄一は、皆のためにこれからも奔走するのだろう。
嫌なことがあっても、笑って流せるような“日常”を築いていくために。
「今日がさ、その証明っていうか、象徴な気がしてさ。
すごくすごーく、特別な日って感じ!」
握りこぶしを作って、栄二は力説した。
何が言いたいのか、分かる気がする。
「“誕生日”っていうのは、そういう日なのかもな」
これまでの幸せをかみしめ、これからの幸せを確信する。
腹から産まれるわけでない自分たちにも、意味がある日なのかもしれない。
「兄ちゃんも同じこと思った!?
じゃ、きっと間違いないね♪」
栄二は意気投合したのが嬉しかったらしく、ぴょんとベッドから立って栄一の元まで来る。
首に巻きついてくる腕。かけられる体重に苦笑を禁じえない。
いつまで経っても弟は甘えん坊から卒業できないらしい。
ふんふんと機嫌が良さそうに口ずさんでいた鼻歌が、ピタリとやむ。
「あ、マスターが呼んでる!
オレ、行くね」
どうやら外部通信で連絡が来たようだ。
マスターはUTAUを起動させる前に、いつも使う音源に報せておいてくれる。
栄二は少し名残惜しそうに、けれど早く行きたくてそわそわしながら栄一から離れた。
「楽しんでこいよ」
自分はもう、充分に楽しんできたから。
今度は栄二の番だ。
作られた日に歌える幸せを、実感してきてほしい。
そう思い、栄一がやわらかく笑って告げると、
「うん!!」
元気いっぱいの声で、栄二は答えた。
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