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≪ UTAUTAI -Ⅶ | | HOME | | 2・君に訊きたいんだけれど ≫ |
Insensitive 3
まだ続きます。ちょっと変わった関係のカイミク第三話。前よりはほんの少し長くなった、けど短い。
MEIKO三人称視点。一人称で統一は無理だった。
姉さんが嫌な女に思えたとしたら、樹神の技量不足でございます……。
ミクが走り去ってゆくのを見送ってから、MEIKOは立ち尽くしている弟に寄っていく。
彼女は聞いていた。二人の会話を。KAITOの、いつもとは違う、声を。
「何のこと?」
微笑を浮かべ、とぼける青年に眉をつり上げる。
「あたしに隠し事ができると思ってるの?」
できないわけでは、ない。
KAITOは表情を作るのも感情を隠すのも得意な方だ。
けれど、同じエンジンであるMEIKOには多少の違和感を察知できてしまう。
しかも今回の場合は、ミクを突っついて様子を見ていたのだから、すべて筒抜けだった。
青年がいつもと同じ言葉に込めた、いつもは隠していた感情のことも。
「……ミクに何か言ったの、姉さんだろう?」
諦めたように一つため息をついてから、KAITOは責めるように言った。
「ええ、そうよ。アンタたちがはっきりさせないから、手を貸してあげたんじゃない」
「ミクはずっとはっきりしていたよ」
悪びれることなく肯定すると、すぐに訂正された。
はっきり「好き」と言葉にしていたことを指しているのか。
それとも恋などしていないとはっきりしていたという意味なのか。
きっと、KAITOからしたら後者なのだろう。
MEIKOは顔をしかめて、睨むような強い眼差しを青年に向けた。
「アタシから見たら中途半端だったわよ。
じゃなきゃ今みたいになるわけないでしょ」
現状を引き合いに出して、暗に『自信を持ちなさい』と伝える。
KAITOはどうしたって悪い方へと考えがちなのだ。
最悪の事態を想定しておけば、それ以上つらいことは起きないとでも言うように。
慎重と言えば聞こえはいいけれど、いつまでも湿っぽくされるのは気分がいいものではない。
できればさっさとケリをつけてもらいたい。
二人にとってもその方が良いと、MEIKOは考えていた。
「そうならいいけど」
青年の気の抜けた受け答えに何か釈然としないものを感じる。
動く気がないのか、それともお節介を焼く姉を鬱陶しく思っているのか。
どちらでもないような、空虚な響きのある声だった。
「でもこれで一歩前進じゃないかしら?」
KAITOの思考を読むために、さらに言葉をかける。
このままで困るのは当人やMEIKOだけではないのだ。大切な大切なマスターが、困る。
前から二人のことを気にかけていたのに、今の状況では大きな悩みの種になってしまうだろう。
自分を含めた全員のために、彼らをこのままにはしておけないのだ。
「避けられるくらいなら、前のままで良かったかも」
ぽつりと、抑揚のない声で青年は呟いた。
それでこんなに気落ちしていたのか、とMEIKOは呆れる。
弟がどれほどミクを好きか、ミクに依存しているかは分かっていたが、ここまで来ると二の句も告げない。
確かにあの様子だと、しばらくは避けられるかもしれないけれど。
無邪気に傷つけられるよりはマシ、とはどうやら彼は思えないらしい。
「さすがにもう面倒は見られないわよ。
アンタがしっかりなさい」
ミクだって、きっとKAITOのことが好きなのだ。
まだ、“恋”と呼べるほどまで育っていないとしても。
いつかは綺麗な花を咲かせる蕾を不安そうに、けれど大事に温めている。
MEIKOはそれの後押しをほんの少ししただけ。
後は、当事者たちの問題だ。
「……ん」
小さな小さな返事は、感情というものが抜け落ちたような声で。
重症ね、とMEIKOは深くため息をついた。
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