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しあわせの音

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2・君に訊きたいんだけれど

『愛しい君と過ごす日々で50のお題』 2・君に訊きたいんだけれど(神威がくぽ×鏡音リン)

配布元:原生地






 主に訊きたいというのに、ずっと訊けずにいることがある。
 なぜ? と。
 なぜ、我にかまうのか、と。
 訊きたいのに、答えを聞くのが怖くて、訊けない。
 いつか、訊ける日は来るのだろうか。



きたいんだ




「がっくにー!!」
 元気に衝突してきたのは、CVシリーズ2の鏡音リン。
 彼女は他社から発売された神威を“兄”と呼ぶ。
 簡単に説明すると、『一人では寂しいだろうから神威にはリンがいることにした』ということらしい。
 リンなりの気遣いは嬉しかったし、助けられている面もあると思う。
「どうした、リン殿」
 だから神威は笑顔で答える。
 あまり表情は動かない方だと自分では思う。
 けれど、リンに対してはそれなりに自然に接することができている気がした。
「次、一緒に歌えるね!
 デュエットだよ、デュエット!!」
 ぐりぐりと神威の胸元に頭を押し付けてくる。
 あんまりそうしていると、髪飾りが乱れてしまうだろうに。
 気にせずリンは擦り寄ってきていて。
 小動物のようで、微笑ましい。
「そのようだな」
 マスターが新しく作ったオリジナル曲は、神威とリンのデュエット曲だった。
 事実だったので頷いたのだが、リンは急にしかめっ面をした。

「がく兄は嬉しくないのー?」
 そう聞こえたのだろうか。リンはつまらなそうに訊いてくる。
「歌えることが嬉しくないわけがない」
「そーじゃなくって!」
 素直に答えると、リンは身体を離した。
 そうして、びしっと神威を指差す。

「リンと歌えること、だよ!
 リンはがく兄と歌えるの、すんごーっく嬉しいのに、がく兄は違うの!?」

 怒っている。まぎれもなく。
 その理由に思い当たり、神威は苦笑をこぼした。
 どうやら自分は失礼な言い方をしてしまったらしい。 
「訂正する。
 リン殿と歌えることが、我は嬉しい」
 これも本心だった。
 一人で歌うのも、誰と歌えるのも嬉しいが、リンはなぜか特別な気がした。
 癖の強い彼女の高音と共に在れるということは、幸いだ。
「えっへへ~♪」
 リンはすぐに顔を緩め、また張りついてくる。
「だよね、だよね!
 がく兄だって嬉しいよね!」
 くへへ、とリンは顔全部を使って笑う。
 その表情に、自身の中にずっとある疑問が、また頭をもたげてきた。
 なぜ。
 なぜそこまで、神威に懐いてくれるのか。
 嫌なわけではない。
 その思いが心地良いからこそ、知りたくなる。
 同時に、男の期待するような答えではなかったらと思い、訊けない。
「リン殿の喜びようが、多少不思議ではあるが」
 だから、そんな曖昧な表現をした。
 意外と己は小心者だったようだ。

「がく兄と歌えるんだもん。
 当ったり前じゃん!」

 太陽のように、花のように。
 眩しく鮮やかな笑顔で、リンは言い切った。
「……そうか」
 神威は表情を和らげる。
 疑問の答えにはなっていない。
 それでも、充分だった。これで良かった。
 今は、これだけで神威には満足できる言葉だった。



 ずっと訊きたくて、訊けないことがある。
 なぜ、そこまで我にかまうのか。
 疑問に答えは返ってこない。今はまだ、己が答えを望んでいないから。
 いつか、面と向かって訊ける日が来るのかもしれない。

 けれどそれは、まだ先でいいだろう、と思った。





 あえて訊かない方向で行ってみました。お題の解釈の仕方って面白い。
 がくぽを神威と書くのは、ギャグっぽくならないようになんですが。
 がっくんがカタカナを使ってるだけで、すごい違和感……そっちのがギャグくさい。
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