VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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みくちゃんのこいあい
リンレンどころかカイミクすらもUTAUに脅かされてきてますね(笑)
でもカイミクが好きだから負けないぞ! という気持ちを込めて、更新更新。
幼児ミクと青年KAITOの最終話(って言っても四話しかないじゃん)
あとはアナザーがあるくらいです、きっと。
ミクの外見・精神年齢は10歳くらい。
ミクはいつでも、疑問を胸の内にとどめておくことはしなかった。
正確には、できなかったのだろう。
一度疑問を持つと、そればかり気になってしまって。
だから早々に、KAITOやMEIKOに質問をする。
その大抵が他愛もないもので、可愛らしい問いだった。
――そらのあおってどんな色?
――お花ってたくさん種類があるの?
いつものように裾を引かれ、振り返る。
「質問をどうぞ、お姫さま」
何かを訊きたそうな様子を見て、先回りする。
最近お気に入りの“お姫さまごっこ”だ。
今までが害のないものばかりだったので、完全に油断していた。
「おにーちゃん、ミクはおにーちゃんに“コイ”してる?」
欲を知らない無垢な瞳が恋を問う。
聞き間違いかと、一瞬思った。
けれどミクは確かにKAITOを見上げて質問したのだ。
VOCALOIDが聞き間違えるわけもなく、メモリーにもきちんと記録されている。
「……いきなり、どうしたの?」
どうしてそんなことを訊いてきたのか分からずに、尋ね返す。
自分でも少し混乱しているのは分かっていた。
まさかミクの口からあんな単語が飛び出すとは思ってもみなかったのだ。
「“コイ”ってイセイを好きになることなのでしょ?
ミクはおにーちゃんのことだーい好きだもん」
異性として認識していたのか。と違うところに感心してしまう。
嬉しい言葉ではあっても、誤解は解かなくてはいけない。
少なくともミクは、KAITOに恋をしていないのだから。
「好きにも種類があるんだよ。
ミクの好きは、たぶん親愛かな」
膝を折って向き合い、大きな瞳を覗き込んで言った。
「しんあい?」
首をかしげて、それから頭に手をやる。
検索の仕方を覚えたミクは、最近は使いどころも分かるようになってきたらしい。
いい進歩だ。妹の成長に微笑みをこぼした。
「親しい人、親や兄弟に向ける愛情のこと。
お友達の場合は友愛って分けることが多いね」
それでも一応、自分なりの解釈を教える。
感情のない文章で調べただけよりも、実際に誰かから聞いた方が理解も早い。
検索も無事に終わったのか、ミクが一つ頷いた。
「……おにーちゃんは?」
「え?」
脈絡のない質問に、何についてか分からず困ってしまう。
いつの間にかミクはKAITOのマフラーを握っていた。
「おにーちゃんはミクのこと、どんな好き?」
そういう意味か。
好きに種類があると分かったから、また別の疑問が出てきたのだ。
少女が好きだと言うたび、「僕もミクが好き」と返していた。
その好きは、どんな好きなのかと。
「たくさんの好き、かな」
一つに絞れなかったKAITOは、卑怯な答えを出す。
けれど偽りのない真実だ。
「?」
わけが分からないと、ミクは首をかしげる。
可愛い妹の、可愛いしぐさ、可愛い言葉、一つ一つが愛おしい。
深い笑みを浮かべ、優しく頭をなでてあげる。
「妹としても家族としても仲間としても友だちとしても、一人の女の子としても好きだよ」
理解が追いつくように、ゆっくりと言葉を並べる。
色んな意味のこもった『好き』を口にしていたのだと、自分でも改めて気づいた。
大切な妹で、大好きな少女。
何よりも守りたい、特別な存在だ。
「いっぱいだね」
ふふ、とミクも笑みをこぼす。
最近は笑い方も少し大人しくなってきたように思える。
幼い妹は、確実に成長しているのだろう。
「うん、いっぱい好きだから」
本心をそのまま告げる。
聞きようによっては愛の告白のような言葉だ。
それが日常的になってしまうほど、KAITOとミクは近かった。
きっと少女がどれだけ成長しようとも、この関係は変わらない気がした。
「……むずかしいのね」
今度は眉根を下げて、困ったような顔になる。
気まぐれな少女は感情の移り変わりも早かった。
「うん、難しいけど、いつか分かるよ」
穏やかな声で諭すように言う。
「ほんと? ミク、いい子にしてても分からないことばかりなの。
むずかしくて、頭の中ぐちゃぐちゃになっちゃうことばかりなの」
混乱しているのか、口が一人歩きしているようだった。
むうっと頬をふくらませて、一見すると怒っているようにも取れる。
泣くのを我慢しているときの表情だ。
「少しずつ、理解していけばいいんだよ」
落ち着かせるようにと、小さな身体をそっと抱き寄せた。
ぽんぽんと、規則的に背中を軽く叩く。
初めは硬かった身体が徐々にほぐれていくのを感じる。
「でも、でもね」
甘えるような声でなおも言い募ろうとする。
その前にと、KAITOは先手を打つ。
「僕も一緒に考えて、覚えられるように手伝うから」
一緒、と言う言葉が好きだと知っていて、効果的に使う。
「おにーちゃんも?」
どこか不安げな問いかけに、身体を離す。
額と額を合わせ、今にも泣きそうな翡翠の瞳を覗き込んだ。
「ミクが困ってる時は助けたいし、つらいときは一緒にいてあげたいよ。
だから、一人で抱え込まないで何でも相談して」
瞳が、揺れる。
期待と不安がない交ぜになったような色で。
大人になりかけの、少女の顔だった。
「僕みたいな王子さまじゃ頼りないかな?」
何も言わないミクに、さすがにこれ以上の言葉は思いつかなくて、苦笑する。
「そんなことないよ!
おにーちゃんはみくのステキな王子さまだもん!!」
ミクのお気に入りの“お姫さまごっこ”では、青年は王子役だ。
きちんと望み通りに演じられていたようで、安心した。
王子だろうと何だろうと、ミクを守れる立場でありたい。
それがKAITOの義務で、望みだった。
「なら、これは誓いの口づけ」
いつかの時のように手の甲ではなく、ミクの髪の一房に口づける。
「ちかい?」
聞き返しはしてきても、今度は検索はしなかった。
大体の意味は分かっているのだろう。
ただ、口づけとの関連性が分からないようだ。
「そうだよ。特別な約束。
お姫さまは王子さまの口づけで目覚めるものだろう?」
格好つけて片目を閉じて告げれば、ミクは満面の笑みを見せる。
どうやら王子役はうまくいったらしい。
「トクベツ、なんだね!」
嬉しそうな少女に、青年は頷く。
「一番の特別だよ」
何よりも大切な妹に贈る、特別な誓い。
たくさんの好きがこもった、彼の想いそのものだった。
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