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UTAUTAI -Ⅵ
一月二十二日はカレーの日だそうで。穂歌姉弟の日といっても過言ではないですよね。
というわけでアナザーに続けて連作アップします。
カレーは出てきませんよ(笑) というかうちのソラサラはカレーの存在を忘れてるのだろうか。
いや、出した瞬間コメディーに転換してしまうので、書いてないだけです。ちゃんと好きだよ、きっと。
質問に答えられるだけの確証は、何もなかった。
ただ、二人はそこにいるだけだ。
それ以上でもそれ以下でもなく、事実は事実でしかなかったのだから。
「ソラさんとサラさんって、姉弟? 双子?」
部屋の形式を取った、ソラのフォルダ。
ソラと、遊びに来ていたサラに、興味津々といった様子でミクが訊いてきた。
答えを持たない二人は目を合わせ、同時に首をかしげた。
「作られた順から言うと兄と妹ですが……」
「いちおー姉と弟ってことになってるよね~。
だからって双子じゃないとも限らないけどさぁ」
ソラが口ごもると、サラが続ける。
なるほど、これだけ似ていて呼吸も合っているとなると、双子説も捨てきれないのかもしれない。
改めて考えたことがなかったから、気づかなかった。
“姉”は“姉”だと。何気なく納得していたのだ。
「分からないなんて、不思議だね!」
答えは期待していなかったのかもしれない。ミクが面白そうに笑う。
ミクへの恋情は姉の登場でいつの間にか引いていたけれど、好意的なのは変わらない。
笑顔の似合う彼女が可愛らしいと思うのは当然のこと。
ソラが表情を緩めると、サラが袖を引っ張った。
「姉さん?」
「何でもな~い」
訝しげに尋ねてみてもサラはどこ吹く風だ。
姉の意味不明な行動には慣れていたので、ソラもあえて追求しなかった。
「二人は気にならないの?」
きょとんとした大きな緑の瞳が向けられる。
それほど二人の関係が気になるらしい。
「別にどっちでもいーかなぁ」
まずサラが先に答え、
「そうですね」
ソラもそれに頷く。
知らない内に相性が良くなっていたようだ。
UTAUでは一人だけだったときには想像もしなかったが、今では当たり前のことだった。
「ふ~ん。やっぱり不思議!」
未知に遭遇した研究家のように、ミクの両の目は輝いていた。
さらに質問しようと口を開きかけて、そのまま止まる。
こちらに向かってくる足音がしたからだろう。
「ミク姉いたいた!
お二人さん、ちょっとミク姉借りてくね!」
ガチャ、と扉が開き、リンが顔を覗かせる。
無遠慮に中に入ってきて、ミクの手を引いた。
まだ訊きたいことがあるらしいミクは渋ってはいるが、嫌そうではない。
歌に関することだと分かっているからだろう。
「やっほーリンリン♪」
「こんにちは」
楽しげにサラが手を振り、ソラも会釈をする。
「サラ姉ソラ兄、こんちは!」
ニカッと気持ちのいい笑顔でリンも挨拶してくる。
サラには手も振り替えしていた。
それから、ほら、とミクの背中を押して出ていこうとする。
「途中で残念だけど、また話を聞かせてね」
残念そうに、ミクが振り返って言う。
後ろ髪を引かれる思いなのかもしれない。
そこまで気になる何かが、二人の間にはあるようだ。
「りょーかい!」
「……分かりました」
サラは元気に、ソラは普通に返事をした。
考え事をしていたので、反応が一瞬、遅れてしまった。
「じゃね~、お二人さん!」
すっかり複数化が定着したな。と他人事のように思った。
自分のことだけれど、やはり変化についていけてないのかもしれない。
リンとミクが行ってしまうと、急に静かになった。
「いやぁ、リンリンはいつも元気だね~」
サラが明るく話し出す。
まったく別のことを考えていたソラは、曖昧に頷いただけだった。
「姉さんは、どう思いますか?」
一人で悩んいてもきりがなかったので、思いきって尋ねてみる。
「あたし? あたしはさっき言った通り、どっちでもいーよ」
サラはのほほんと笑っている。
言葉に嘘はなさそうだ。
「僕もそうなんですが、何だか……」
「引っかかる?」
「はい」
言葉にならなかった思いを正確に表される。
どっちでもいい。というのには変わりはない。
けれど、ミクに言われた言葉が少し引っかかる。
『分からないなんて、不思議』
『気にならないの?』
分からないし、気にならない。
考えてみれば不思議なことかもしれない。
プログラムに植え付けられたデータそのままに、姉と弟という関係に疑問を抱かなかったのだ。
「ソラは生真面目さんだからねぇ」
大らかなサラはしみじみと言った。
『生真面目さん』と。融通の利かない少年を彼女はよくそう評する。
「考えるのは自由だと思うよ~。
好きなだけ、考えなさい」
どうしようもない子どもをあやすときのような、穏やかなまなざし。
母のようでもあるそれに、ソラは苦笑する。
「やっぱり、そういうところは姉さんなんですよね」
どんなに考えても、事実は変わらない。
初めはいなかった姉が、今では傍にいるのが当然で、自然で。
不思議と言われても仕方がないのだ。
ソラ自身、疑問を感じ始めたのだから。
「あたしたちは姉弟だけど姉弟じゃなくって、姉弟じゃないけど姉弟なんだよね」
言い得て妙だと、思った。
おかしいかもしれないが正しいのだ。
順番が逆でも、人のように血のつながりがなくても、姉弟だった。
「どっちでもいいって言うのは、どっちでも気にしないってことでしょ~?
あたしとソラは、ただここにいるだけ。
それでいいんじゃないかなぁ」
琥珀の瞳がソラを優しく包み込む。
初めから弟がいた姉には、分かっていたのかもしれない。
二人の関係が曖昧なものであることに。
絆と言えば聞こえはいい。
けれどそれだけで説明のつかない、何か。
作られた絆に、植え付けられた思いに、意味はあるのかと。
疑問と、猜疑心。
「そう、思うことにします」
努めて平静を装って、彼は答えた。
二人は、そこにいる。
それが事実で、変わらない真実で。
他の理由なんて考えたことがなかったから、気づかなかった。
前提からして、疑問に思うべきだったのだと。
不思議は、目の前に迫ってきていた。
→次作
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