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しあわせの音

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In the dark  -conclusion-

 お久しぶりです。ボカロの更新はもっとお久しぶりです(汗)
 完結待ってるって言ってくださった方、すみませんでした&ありがとうでした!

 カイミク連載七作目。結。これで完結、のはず!






 声に、声が重なった。



In the dark  - conclusion -




 歌い続けてどれくらい経ったのだろう。
 彼に届くようにと歌っていた少女は、合わさる声に笑みをこぼさずにはいられなかった。
 たしかに、つながっている証。
 独りではないということ。
 声と声が互いを求め合うように響いて。
 導かれる。
 欠けたもう一方と、引き合うように。
 元あった姿に戻る、自然の摂理のように。

 彼の歌声が近い。
 もう少し。あと少し。ほんの少しで。
 会うことができる。
 期待や願望などではなく、確信。
 彼と会う。絶対に、会える。
 この永遠に続いているかのような闇の向こう、近くに、彼がいる。

 少女は歌う。それより他に求め方なんて思いつかなかったから。
 足は彼の声に吸い寄せられるように歩み続ける。
 分かるはずがない。正確な位置なんて。
 それでもこの先に彼がいると、知っている。
 不思議な感覚だった。
 全身で彼を感じ取っている。
 手を伸ばした。そうすれば届く気がして。
 指先が闇に解ける。ひやり、と痛みにも似た凍えそうな刺激。
 けれど、怖くはない。
 低く伸びやかな声は途切れることなく、少女を支えてくれている。
 大丈夫。自分は独りではないから。
 彼に会えるなら、暗闇になんて怯えていられない。
 少女も歌を紡ぐ。歩を進める。
 不安は、かけらもなかった。



 声が、ひときわ大きく耳に木霊して。
 空気が、何かをささやきかけてくるように動いて。

 青が、闇を切り裂くように、少女の瞳に映し出された。


「あ……」
 声をもらしたのはどちらだっただろう。
 斉唱は終わり、あたりを包むは静寂。
 今までの冷たい、すべてを排除した静けさではない。
 優しく、穏やかな沈黙だ。

 やっと“会えた”。

 闇の中、確かに彼がそこにいる。
 何も見えなかった、何も目に映らなかった、暗闇に。
 呆然とした、けれどとても満ち足りた表情の青年がいる。
 パッケージ通りの、白を基調としたコートと水色のマフラー。
 闇に溶け込みやすいはずの青い髪は逆に強く鮮やかで、淡く光をまとっているようにも見えた。
 深く、穏やかな色をした紺の瞳は、まっすぐと少女を見据えていて。
 少女は息が止まるかと思った。
 言葉にできない激情があふれ返る。
 何か、言いたいのに。触れて、確かめたいのに。
 体が動いてくれなかった。
 困ってしまった。少女には分からないから。
 ずっと一人でいたから、どんな反応を、どんな顔をすればいいか、分からない。
 会えて嬉しいと、伝えるにはどうすればいいのだろう?
 何もかもが初めてのことで。
 もどかしくて、焦って。
 途惑っている自分が、不思議で、新鮮で。とても心地良い。

「あい、たかっ……た」
 先に口を開いたのは、青年の方だった。
 眩しいものを見るように瞳を細め、無調教の音を並べる。
 感極まったように、声は震えていた。
 彼も同じ気持ちでいてくれている。
 それが、声から、表情から、まなざしから、伝わってきた。
 共鳴するように心に熱が広がっていく。
「わたし、も」
 意味を読み取り、答える。
 ずっとずっとずっと会いたかった彼が、今、目の前にいる。
 何もかもをあきらめかけていたとき、希望を与えてくれた彼が。
 求めて、けれど怖くて、進めなかった彼女を後押ししてくれた彼が。
 あの、優しく温かい歌声を持つ彼が、
 こういう思いを、なんと言うのだろう。
 喜び。楽しい。感動。幸せ。
 どんな言葉でも足りない、どれもがない混ぜになったような感激。
 嬉しすぎて、涙がこぼれてきそうだった。
 それでも青年が笑っていたから、少女も笑みを浮かべた。

「は……はじめ、まして?」
 何度も一緒に歌っていたから、今さらな気もしたけれど、初対面の挨拶を声に乗せる。
 定型句として初めから登録されている挨拶は、使おうとは思わなかった。
 聞き取りづらくても、自分の言葉で伝えたかったから。
「よろ、しく」
 彼は言いながら、手を伸ばしてきた。
 そっと、壊れ物を扱うように、少女の頬に触れる。
 少女はその手に自らの手を重ねた。
 一人では決して感じることのできなかった、ぬくもりだ。

「よろしく、初音ミク」

 名前を呼ばれた瞬間、少女を形成するデータすべてが歓喜に揺れた。
 自分は【初音ミク】なのだと、彼に認めてもらえて。
 ミクは、やっと個として存在を許されたのだと、そう思えた。

「よろしく、KAITO」

 だからミクも、彼の名を呼んだ。
 KAITOは目を見開き、それから本当に嬉しそうに笑った。
 優しくて、温かい、綺麗な笑顔だった。



 深くて、暗いその場所で。
 互いを見つけた。希望を、見つけた。
 もう、闇も怖くはない。泣く必要もない。
 共に歌い、語り合い、触れ合い、笑い合うことが、できるから。







 一話一話は短くても連載の形を取ってたので、ちょっと長く語りたくなっちゃいます。


 まずは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
 お待たせしてしまって本当にすみませんでした!
 一作目を見返してビックリしました。一年以上前だと……!?
 実はこのお話、連載スタートした時には一応最後まで書き終わってたんですよね。
 でも、何度も推敲したり加筆したりで、のろのろペースに。
(この結なんて、たぶん最初に書いたのの二倍くらいになってます。これでも)
 しかも最初に言った通り、意味不明のまま終わってすみません!

 はっぴーえんど!! と言い張ります。ハッピーですよ、ええ。
 二人ともどん底からのスタートだったので、とっても難しかったです。
 シリアスとかダーク系(?)は苦手なのです。だから挑戦したってのもあります。
 経験にはなったような気がします。向いてないのが分かりました(笑)

 状況説明が欠落してるので、すっきりしない終わり方だとは思ってます。
 余談というか、蛇足というか、そういうものも考えてはいるんですが。
 書きたかったのが、設定とかより、二人の心の動きといいますか。交流といいますか。
 いつも心理描写の多い文章ではあるんですが、そこに集中させたことはないなぁと。
 の割りに、大切な場面で感情描写をさらっとすませてしまったり。すでに加筆修正したい……!
 結果的には、語彙の少なさ、表現。この課題を次に活かしたいです。

 『In the dark』、最後までお付き合いくださりありがとうございました!
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comment

うぅ・・・

  • いいよね! 
  • 2011/06/24(金) 23:22
  • edit

涙止まらないです・・・。
KAITOもミクも互いにフルネームで呼び合ってたとこは違和感ありましたけど・・・それでもハッピーエンドはうれしいです!最近感動がなかった自分なのでまさにこのお話の通りですよ!
本当に面白かったです!ありがとうございました!

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