VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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In the dark -introduction- Kaito side
カイミク連載二作目。……それ以外に書くことあったかな?
ミクサイドって書いてあったから分かるかなーとは思いましたが、この連載は、ミク視点とKAITO視点を交互に書いて進めていこうと思います。
心が、震えた。
うずくまっていた青年は、ハッと顔を上げる。
今、確かに声がした。
自分のものでない音を聞くのは初めてだったから、すぐに分かった。
“仲間”だ。
失いかけていた存在意義を、はっきりと思い出す。
VOCALOID。歌うために作られたソフトウェア。
ただの商標名が、色を持つ。
いる。この一面に広がる暗闇のどこかに、同じVOCALOIDが。
青年はヘッドフォンに手を当てる。
確かめたことのなかった、自分と似た波形を探した。
ノイズが混じる。うまく、音の跡を追えない。
初代VOCALOIDはVOCALOID2と比べると機能が劣る。
また、互換性の問題もあるため、VOCALOID2との通信には一手間かかる。
波形を察知しづらいということは、きっと相手はVOCALOID2エンジンなのだろう。
それでもあきらめられない。処理能力をかき集め、必死に音の名残を探す。
ようやく、希望を見い出したのだから。
自己を持ってから、ずっとこの暗く静かな世界しか知らなかった。
始めのうちは誰かに気づいてもらおうと、声を上げ歌を歌い、時には泣き叫んだ。
――マスターは僕を必要としていない。僕はいらない存在なんだ。
やがてあきらめ、何も考えないようになって。
闇にかき消されるように、0になった。
そこに響いてきた、1。
久々に感情が動いた。
声は女のものだったと思う。少し幼かったかもしれない。
彼女も、自分と同じように暗闇に捕らわれているのだろうか。
もう一度、いや、何度でも、声を聞きたい。
姿を目に映し、存在を確かめたい。彼女に会いたい。
何も思わず、何も望まなかった心が、熱を持っていく。
時間にしたらたった数分程度だろうと思う。
けれど永遠とも感じられる時が過ぎ、青年はやっと少女の存在を感知した。
【CV01-初音ミク】
彼女がどこにいるかまでは見つけられなかった。
それでも確かにこの暗闇の中にいる。
内部通信はつながらない。相手の情報が足りないからだろう。
距離も分からない。そもそも電子の世界で正確な距離間というものはない。
人の真似事をするなら別だけれど、自分たちは自由に場所から場所へ飛ぶことができる。
青年が“ここ”から動かなかったのは、どこだろうと同じ暗闇だと知っていたから。
検索機能がうまく働かないことから推測できた。パソコン自体が起動していないのだ。
青年が自己を持った、そのときからずっと。
この暗闇は、すべてを0にしてしまう。
彼女もきっと、恐怖を感じているだろう。
怯えているだろうか? 泣いているだろうか?
心がむしばまれていく感覚。いずれマイナスすらもなくなってしまう。
先ほどまでの青年のように。
助けてあげたい。
少女の声に自分が救われたように。
何か、できることがあれば。
青年は声を張り上げて、歌った。
悲痛な叫びが自分の元まで届いたように。
いつかこの歌声が、彼女を癒してくれるようにと信じて――。
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