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In the dark -introduction- Miku side
カイミク連載スタートです。っていっても一話一話はすごく短いのですが。カイミクって言わなきゃ分かんないくらい名前出てきませんが。
思いついたネタを書きたいがために、三つのマスター家とも違う話です。
ちょっと暗めな話。あくまでちょっとだと言い張る。
音も光もない、一面の闇の中。
少女は起きているのか眠っているのか分からない、曖昧な時間を過ごす。
上も下もない世界で、たゆたうかのように。
時々、思い出したように涙がこぼれる。
もうずいぶん慣れたと思っていたのに、恐怖はいまだ少女をむしばみ続けていた。
ぽたりぽたりと、音がする。
無音の世界の中で、少女だけが音を出すことができる。
泣くだけではない。
まだ、他にもあった。
「あ……あ……」
登録されている定型句を使わずに、ただ短く声を発する。
“声が枯れる”という観念が、自分にはない。
VOCALOID、だから。
歌うためのソフトウェア、だから。
少女は何度も反芻する。
自分の存在意義。
言い聞かせていないと忘れてしまいそうなほど、もろい価値。
怖くなると、いつも思い出す。
ここにいる理由、を。
けれど少女はいつまで経っても歌わせてもらえない。
気がついたときには暗闇の中に自分はいて。
恐怖だけが感情プログラムを動かした。
――マスターは歌わせるために私を買ったんじゃないの?
幾度となくくり返す問い。
答えてくれる人など、どこにもいない。
闇だけが、ただ少女を包み隠し、孤立させていた。
怖い。こわい。コワイコワイコワイ。
このまま自分も闇の中に消えてしまいそうで。
嫌だいやだイヤだイヤダイヤダイヤダ。
歌うためにあるのに、いつまでこうして過ごしていなければならないのか。
助けてたすけてタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ!
苦しい。悲しい。負の感情に押しつぶされそうになる。
涙が止まらない。泣きやむ方法が、分からない。
「っああぁぁぁーーー!!」
力の限り叫んだ。
誰か。どこにいるか知らないけれど、誰かに届くように。
この暗く音のない場所から、助け出してくれるように。
いつか、何も感じなくなってしまうかもしれないことが一番怖かった。
すべてをあきらめて、音を発することさえもしなくなる。
闇と同化するように完全に0になってしまうことが、怖い。
だから、誰でもいいから助けてほしかった。
マスター。早く自分を起動して。
他の誰かでもいい。ここから連れ出して。
悲痛な叫びが暗闇に散っていく。
声は反響することもなく、むなしく消えていった。
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